第2章【過去の記憶】
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=9=
「ラフテル!」
ジェクトの声に振り返る。
すぐ背後に迫っていた魔物の存在に、思わず身を竦めた。
だがそれは一瞬でにじ色を放つ幻光虫となって舞い上がる。
「大丈夫か」
ジェクトのたくましい肉体が見えた。
「うん、ありがと」
「こっちは俺が引き受ける。…ちいっとな、あっちを魔法でサポートしてくれや」
一人で何体もの魔物に取り囲まれているアーロンを確かめた。
確かにあれは魔法で一気に焼き払ってしまったほうがいいだろう。
「わかった」
異界送りを続けるブラスカの様子を見てから、私はその場をジェクトに任せてアーロンのところまで走り寄った。
「アーロン!」
「ラフテル、ブラスカ様はご無事か」
本当に、いつでもブラスカが一番のアーロンに少々幻滅するが、ガードとすれば当然のことなのかもしれない。
しかし、この魔物の数には気が滅入る。
小さな魔法で1体1体対応していたのでは切りがない。
「アーロン、ちょっとでかいやつ使うから体勢低くして!」
「な、何をするつもりなんだ!?」
指先に魔力を集中させて、目の前の魔物を指差す。
そのまま、私はその場でくるりと360度回転して、再び正面を向く。
目の前の魔物が隙ありとばかりに飛び掛ってくるが、その攻撃は私たちに届くことはなかった。
「『ファイア』」
唱えた小さな魔法攻撃の呪文は、私の指先から突然炎の壁が生まれる。
私と、アーロンを囲むように、高い炎の壁が私達の周りを取り囲んでいた夥しい数の魔物をも一気に飲み込んだ。
耳障りな魔物の断末魔の叫び声が当たり一面に響き渡る。
この魔法攻撃で一体何体の魔物を幻光虫に変えることができただろうか。
天まで届くような炎が治まり、炎で溶かされた氷が水蒸気となって辺りを包み込む。
ゆっくりとそれが風が流されていくと、一瞬、魔物の気配はない空間が現れた。
だが、それは本当に一瞬であっという間に再び魔物の群れが私たちに襲い掛かってきた。
「…ダメか」
「いや、今のでかなり数は減った。…ラフテル、やるな」
だが、私はまだ若かった。
経験が圧倒的に足りなかったのだ。
これだけ多くの魔物に囲まれたことなどなかった。
魔物との実践訓練も、この旅での戦闘も、たくさんの仲間達がいて、魔物の数もそう多くはなかった。
身を切るような寒さの中、足場も悪く、突然現れた夥しい数の魔物たち。
私は軽くパニックを起こしていたのだろう。
先のことを考える余裕もなくて、ただ目の前に現れる魔物を倒すことだけしか考えられなかった。
この後のペース配分なんて頭の片隅に追いやられて、一番大事なことをすっかり忘れてしまっていた。
「!!」
魔力が、底を付いた。
いい気になって大きな魔法を立て続けに使いすぎた。
目の前に迫る魔物に翳した掌は何の反応も示さない。
同時に体に力が入らなくなる。
魔力を使いすぎたせいで、休養を要求しているのだ。
だが、今はまだ休んでいる場合ではない。
魔物はまだいるのだ。
咄嗟に自分の背後に手を回す。
後ろ腰には2本の小太刀。
普段は魔法を使うことが多いので、武器を使って戦うことはほとんどない。
剣を使うジェクトと太刀を振るうアーロンのサポートに回ることがほとんどだ。
だが今は、魔力のない自分には魔法での攻撃もサポートもできはしない。
これでも一応は訓練を受けた身だ。
魔法だけではなく、武器を使っての戦闘もこなせるようにはしてきたつもりだ。
ただ、想定外だったのはこの寒さだ。
気温が低いせいで、手が悴む。
体が思うように動かない。
魔力がなくなったせいで動きが鈍っているのも、要因の1つだ。
私はなんとか相手をしてたと、思っていた。
なんとかこなしていけると思っていた。
私は、1対1の試合をしているわけではなかったというのに。
1体の敵の攻撃を小太刀でかわした瞬間だった。
すぐ隣にいたもう1体が飛び掛ってきた。
「!!」
はっとして思わず身を捻って地面を転がった。
避けたつもりだったが、魔物の腕のほうが僅かに長かったようだ。
体にキズはつかなかったが、アイテムを入れていた袋を破り取られてしまった。
それでもそんなものを気にしている場合ではない。
すかさず身を起こして次の一撃を受け止めた。
→
17,jul,2011
「ラフテル!」
ジェクトの声に振り返る。
すぐ背後に迫っていた魔物の存在に、思わず身を竦めた。
だがそれは一瞬でにじ色を放つ幻光虫となって舞い上がる。
「大丈夫か」
ジェクトのたくましい肉体が見えた。
「うん、ありがと」
「こっちは俺が引き受ける。…ちいっとな、あっちを魔法でサポートしてくれや」
一人で何体もの魔物に取り囲まれているアーロンを確かめた。
確かにあれは魔法で一気に焼き払ってしまったほうがいいだろう。
「わかった」
異界送りを続けるブラスカの様子を見てから、私はその場をジェクトに任せてアーロンのところまで走り寄った。
「アーロン!」
「ラフテル、ブラスカ様はご無事か」
本当に、いつでもブラスカが一番のアーロンに少々幻滅するが、ガードとすれば当然のことなのかもしれない。
しかし、この魔物の数には気が滅入る。
小さな魔法で1体1体対応していたのでは切りがない。
「アーロン、ちょっとでかいやつ使うから体勢低くして!」
「な、何をするつもりなんだ!?」
指先に魔力を集中させて、目の前の魔物を指差す。
そのまま、私はその場でくるりと360度回転して、再び正面を向く。
目の前の魔物が隙ありとばかりに飛び掛ってくるが、その攻撃は私たちに届くことはなかった。
「『ファイア』」
唱えた小さな魔法攻撃の呪文は、私の指先から突然炎の壁が生まれる。
私と、アーロンを囲むように、高い炎の壁が私達の周りを取り囲んでいた夥しい数の魔物をも一気に飲み込んだ。
耳障りな魔物の断末魔の叫び声が当たり一面に響き渡る。
この魔法攻撃で一体何体の魔物を幻光虫に変えることができただろうか。
天まで届くような炎が治まり、炎で溶かされた氷が水蒸気となって辺りを包み込む。
ゆっくりとそれが風が流されていくと、一瞬、魔物の気配はない空間が現れた。
だが、それは本当に一瞬であっという間に再び魔物の群れが私たちに襲い掛かってきた。
「…ダメか」
「いや、今のでかなり数は減った。…ラフテル、やるな」
だが、私はまだ若かった。
経験が圧倒的に足りなかったのだ。
これだけ多くの魔物に囲まれたことなどなかった。
魔物との実践訓練も、この旅での戦闘も、たくさんの仲間達がいて、魔物の数もそう多くはなかった。
身を切るような寒さの中、足場も悪く、突然現れた夥しい数の魔物たち。
私は軽くパニックを起こしていたのだろう。
先のことを考える余裕もなくて、ただ目の前に現れる魔物を倒すことだけしか考えられなかった。
この後のペース配分なんて頭の片隅に追いやられて、一番大事なことをすっかり忘れてしまっていた。
「!!」
魔力が、底を付いた。
いい気になって大きな魔法を立て続けに使いすぎた。
目の前に迫る魔物に翳した掌は何の反応も示さない。
同時に体に力が入らなくなる。
魔力を使いすぎたせいで、休養を要求しているのだ。
だが、今はまだ休んでいる場合ではない。
魔物はまだいるのだ。
咄嗟に自分の背後に手を回す。
後ろ腰には2本の小太刀。
普段は魔法を使うことが多いので、武器を使って戦うことはほとんどない。
剣を使うジェクトと太刀を振るうアーロンのサポートに回ることがほとんどだ。
だが今は、魔力のない自分には魔法での攻撃もサポートもできはしない。
これでも一応は訓練を受けた身だ。
魔法だけではなく、武器を使っての戦闘もこなせるようにはしてきたつもりだ。
ただ、想定外だったのはこの寒さだ。
気温が低いせいで、手が悴む。
体が思うように動かない。
魔力がなくなったせいで動きが鈍っているのも、要因の1つだ。
私はなんとか相手をしてたと、思っていた。
なんとかこなしていけると思っていた。
私は、1対1の試合をしているわけではなかったというのに。
1体の敵の攻撃を小太刀でかわした瞬間だった。
すぐ隣にいたもう1体が飛び掛ってきた。
「!!」
はっとして思わず身を捻って地面を転がった。
避けたつもりだったが、魔物の腕のほうが僅かに長かったようだ。
体にキズはつかなかったが、アイテムを入れていた袋を破り取られてしまった。
それでもそんなものを気にしている場合ではない。
すかさず身を起こして次の一撃を受け止めた。
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17,jul,2011