第10章【結末へ】
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この命というものが存在しない、魂だけの世界で、私は何を知ったのだろう。
何を見てきたのだろう。
何を学んだのだろう。
何のために存在してきたのだろう…?
自分の本当の気持ち、素直に出せない感情、心の奥底に眠る、大切な想い。
声に出して言ったことはあるだろうか?
誰かに伝えたことはあるだろうか?
命を持ち、命の溢れる世界で生きていたときにも出来なかったことが、この世界で出来ているだろうか?
少なくても、とても大切な存在はわかった。
出会いと別れ、そして再会と別離。
自分以外の誰かを知り、触れて、理解する。
そこに時間という概念は必要ではない。
人という形すらも時には必要ではない。
過去の偉人に想いを馳せるのも、まだ見ぬ我が子に愛情を注ぐのも、そこにあるものは同じ。
誰かを想う、心。
私が私として命を持って、スピラという世界で生きていた時、私と関わりを持った全ての人間たちと、私の心は等しく震えていた。
私に好意を持ってくれる者もいるだろう。
私を嫌悪する者もいるだろう。
私を哀れと思う者もいるだろう。
私を賞賛してくれる者もいるだろう。
私に憎悪を抱く者もいるだろう。
全ての想いは、心が震えたから。
命を持っていた時間に、もっとも大きく私の心を震わせた大切な存在を、私は命を失ってから、魂だけの世界に来てから気付いた。
そしてこの感情を何というのかも、あの人に返してもらった想いをこの半分の魂で知ることができた。
…あぁ、なんだ、こんな単純な言葉だったのか。
あの時、私の魂が1つに戻ったときに私の中に浮かんだ、“彼への違和感”の正体。
あの少女が憚ることも無く口にした、懐かしさを覚えた言葉。
見つめられて、側にいて、触れられて。
その度に浮かぶこの不思議な感覚も、この感情があったからなのか。
だから私も、見つめていたいと、側にいたいと、触れて欲しいと思うのか。
まだ私の魂が半分になる前に、僅かに湧き上がっていたこの感情のまま半身を他人と分け合った。
その人に、この感情を知って欲しい、わかって貰いたいと思ったから。
それによって、私は自分のこの感情を失った。
恥ずかしいとか、もういい歳なんだからと、声を大にして口にすることを躊躇ってきたのではない。
・・・・・失っていたから。
“今の私にこそ必要なもの”
そうあの人は言った。
…いいんだろうか。
素直になっていいんだろうか…?
次に目が覚めて、その時彼がまだ側にいてくれたら、私は彼に打ち明けよう。
今の私の気持ちを、この感情の正体を。
どんな顔をするのか、楽しみだ。
~ fin ~
→あとがき
07,Dec,2012
この命というものが存在しない、魂だけの世界で、私は何を知ったのだろう。
何を見てきたのだろう。
何を学んだのだろう。
何のために存在してきたのだろう…?
自分の本当の気持ち、素直に出せない感情、心の奥底に眠る、大切な想い。
声に出して言ったことはあるだろうか?
誰かに伝えたことはあるだろうか?
命を持ち、命の溢れる世界で生きていたときにも出来なかったことが、この世界で出来ているだろうか?
少なくても、とても大切な存在はわかった。
出会いと別れ、そして再会と別離。
自分以外の誰かを知り、触れて、理解する。
そこに時間という概念は必要ではない。
人という形すらも時には必要ではない。
過去の偉人に想いを馳せるのも、まだ見ぬ我が子に愛情を注ぐのも、そこにあるものは同じ。
誰かを想う、心。
私が私として命を持って、スピラという世界で生きていた時、私と関わりを持った全ての人間たちと、私の心は等しく震えていた。
私に好意を持ってくれる者もいるだろう。
私を嫌悪する者もいるだろう。
私を哀れと思う者もいるだろう。
私を賞賛してくれる者もいるだろう。
私に憎悪を抱く者もいるだろう。
全ての想いは、心が震えたから。
命を持っていた時間に、もっとも大きく私の心を震わせた大切な存在を、私は命を失ってから、魂だけの世界に来てから気付いた。
そしてこの感情を何というのかも、あの人に返してもらった想いをこの半分の魂で知ることができた。
…あぁ、なんだ、こんな単純な言葉だったのか。
あの時、私の魂が1つに戻ったときに私の中に浮かんだ、“彼への違和感”の正体。
あの少女が憚ることも無く口にした、懐かしさを覚えた言葉。
見つめられて、側にいて、触れられて。
その度に浮かぶこの不思議な感覚も、この感情があったからなのか。
だから私も、見つめていたいと、側にいたいと、触れて欲しいと思うのか。
まだ私の魂が半分になる前に、僅かに湧き上がっていたこの感情のまま半身を他人と分け合った。
その人に、この感情を知って欲しい、わかって貰いたいと思ったから。
それによって、私は自分のこの感情を失った。
恥ずかしいとか、もういい歳なんだからと、声を大にして口にすることを躊躇ってきたのではない。
・・・・・失っていたから。
“今の私にこそ必要なもの”
そうあの人は言った。
…いいんだろうか。
素直になっていいんだろうか…?
次に目が覚めて、その時彼がまだ側にいてくれたら、私は彼に打ち明けよう。
今の私の気持ちを、この感情の正体を。
どんな顔をするのか、楽しみだ。
~ fin ~
→あとがき
07,Dec,2012