第10章【結末へ】
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=69=
「…ラフテル」
つい今しがたまで呼ばれていたのとは違う、もっと低い声で私の名を呼ぶ。
返事を返そうと思った瞬間に、視界が塞がれた。
覆いかぶさるように抱きついている、赤。
身動きが全くできなくなるほど、しっかりと強く抱きしめられる。
それが少しばかり緩んだと思ったら、今度は首筋に顔を埋めるようにすがり付いてくる。
「…ア、アーロン、どう、したんだ?」
「………」
言葉も無いまま、首の付け根に唇を這わせた。
「…っ!!」
そしてまた、しっかりと抱きしめてくる。
甘えているようなその仕草に、思わずクスリと小さな笑みが零れた。
ゴホンと誰かの咳払いが聞こえ、緩んだ腕の間から顔を出す。
「お楽しみのところ、邪魔して悪いな、アーロン」
ブラスカとジェクトがいつの間にかすぐ近くまで来ていたようだ。
私達に気を遣ってくれたのか、しばらく様子を見ていたが痺れを切らしたらしい。
名残惜しそうに腕を放したアーロンが、耳元に顔を寄せる。
「…続きは後でな」
「!!」
小さな小さな呟きは、それでも私の耳にはしっかりと届いて、いつまでも慣れない自分が恥ずかしくなってくる。
「そっちは解決したみてえだな」
「ラフテルも大丈夫かい?」
顔が赤いよ、なんて笑顔で言うブラスカは、かつての彼そのもので。
こういうときのブラスカには、嘘もごまかしも効かないのは承知の上。
「んじゃ、…まあ、その、…そろそろ」
まるで遊びに来た友人が自宅にでも帰るかのように簡単にそんな言葉を口にする。
だからこれが最後の別れだとは思えない。
これまでも、ジェクトとこんな別れを迎えた。
だがまたすぐにこうして会うことができていた。
「…なんか、またすぐに会えるような気がするよ」
……嘘だ。
「おう、そうだな!わははははっ!」
「軽すぎだろ」
……もっと真剣に現実を見てくれよ。
「楽しくやれや」
「言われなくても」
……そんな言葉はいらない。
「俺様がいなくなっちまったら、異界カップは…」
「ジェクト!!」
「!!」
二度と、この笑顔を見ることはできない。
大きな背中にしがみつく事もできない。
そう思ったら、体が勝手に動いていた。
「「!!」」
「…おやおや」
逞しい胸に飛び込んだ。
いつもと同じ太陽の匂い。
私ごときの体がぶつかったところで、この男には何の支障も来さない。
「おいラフテル、どうしちまったんだぁ…」
そう言いながらも、しっかりと私を受け止めてくれる逞しい腕。
ジェクトは驚いた様子もなく、私を抱きしめる腕の力を強めた。
アーロンの力強さとはまた違う、ジェクト特有の暖かい腕の中。
ジェクト。
私の、この世界の、父さん。
→
07,Dec,2012
「…ラフテル」
つい今しがたまで呼ばれていたのとは違う、もっと低い声で私の名を呼ぶ。
返事を返そうと思った瞬間に、視界が塞がれた。
覆いかぶさるように抱きついている、赤。
身動きが全くできなくなるほど、しっかりと強く抱きしめられる。
それが少しばかり緩んだと思ったら、今度は首筋に顔を埋めるようにすがり付いてくる。
「…ア、アーロン、どう、したんだ?」
「………」
言葉も無いまま、首の付け根に唇を這わせた。
「…っ!!」
そしてまた、しっかりと抱きしめてくる。
甘えているようなその仕草に、思わずクスリと小さな笑みが零れた。
ゴホンと誰かの咳払いが聞こえ、緩んだ腕の間から顔を出す。
「お楽しみのところ、邪魔して悪いな、アーロン」
ブラスカとジェクトがいつの間にかすぐ近くまで来ていたようだ。
私達に気を遣ってくれたのか、しばらく様子を見ていたが痺れを切らしたらしい。
名残惜しそうに腕を放したアーロンが、耳元に顔を寄せる。
「…続きは後でな」
「!!」
小さな小さな呟きは、それでも私の耳にはしっかりと届いて、いつまでも慣れない自分が恥ずかしくなってくる。
「そっちは解決したみてえだな」
「ラフテルも大丈夫かい?」
顔が赤いよ、なんて笑顔で言うブラスカは、かつての彼そのもので。
こういうときのブラスカには、嘘もごまかしも効かないのは承知の上。
「んじゃ、…まあ、その、…そろそろ」
まるで遊びに来た友人が自宅にでも帰るかのように簡単にそんな言葉を口にする。
だからこれが最後の別れだとは思えない。
これまでも、ジェクトとこんな別れを迎えた。
だがまたすぐにこうして会うことができていた。
「…なんか、またすぐに会えるような気がするよ」
……嘘だ。
「おう、そうだな!わははははっ!」
「軽すぎだろ」
……もっと真剣に現実を見てくれよ。
「楽しくやれや」
「言われなくても」
……そんな言葉はいらない。
「俺様がいなくなっちまったら、異界カップは…」
「ジェクト!!」
「!!」
二度と、この笑顔を見ることはできない。
大きな背中にしがみつく事もできない。
そう思ったら、体が勝手に動いていた。
「「!!」」
「…おやおや」
逞しい胸に飛び込んだ。
いつもと同じ太陽の匂い。
私ごときの体がぶつかったところで、この男には何の支障も来さない。
「おいラフテル、どうしちまったんだぁ…」
そう言いながらも、しっかりと私を受け止めてくれる逞しい腕。
ジェクトは驚いた様子もなく、私を抱きしめる腕の力を強めた。
アーロンの力強さとはまた違う、ジェクト特有の暖かい腕の中。
ジェクト。
私の、この世界の、父さん。
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07,Dec,2012