第9章【その行動の意味は】
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突然空気が変わった。
全てが開放に向かっていたと思っていたのに、背後から感じられる気配は禍々しく変化していく。
ユウナの焦りの混じった叫びが決定づけた。
「シューイン!!」
その声に、振り向いた。
いや振り向こうとした。
だが、できなかった。
耳を劈くような空気の振るえと思わず瞼を閉じてしまうほどの一瞬の強い光に包まれたかと思った瞬間だった。
「うっ!!」
「ぐわっ!」
「!!」
自分のすぐ側で聞こえた短い悲鳴に、咄嗟に反応することができなかった。
はっと意識を向けたその時に、目に飛び込んできたのは青年の姿。
僅かに俯いた顔に浮かんでいたのは、口角を持上げただけの黒い笑み。
数瞬遅れて、ブワリと風が流れた。
何が起こったのか瞬時に理解できず、あの少年によく似た姿の、しかし少年とは全く似つかない表情を浮かべた青年をただ見つめた。
視界の隅で動くものを捕らえ、目を逡巡させて理解した。
「アーロン!ジェクト!、ブラスカ!!」
叫びと共に、そちらへ向かおうとした体を押さえられる。
そうされることなど予測できなかった私は、自分の体に触れている人物に目を向けた。
幻光虫の淡い光に包まれた、青年。
「!!」
「…やっと力を貸してくれるんだね」
「な、何言って……、放せ!」
何をどうしたのか、何らかの力が働いているのか、私の両腕をがっちりと上から押さえつけている青年の手を振り解くことができない。
顔だけを僅かに逸らして、たった今まで側にいたはずの人物のほうへ視線を向ける。
この一瞬で何が起こったのか、彼ら自身にも理解できないようで、倒された己の体を起こしている。
「アー…」
「最後の祈り子、ラフテル」
「!! …私は、祈り子ではない!」
アーロンの名を呼ぶことさえ遮って、私の名を呼ぶ青年。
「あぁ、そうだったね。キミは祈り子じゃない」
「!?」
「…ラフテル、さん…?」
私の名を呼ぶ少女の声に意識と顔を向けた。
不思議そうな顔をしたユウナと、彼女の仲間たちがそこにいた。
「…私を、どうするつもりだ」
「言っただろ? 力を貸してほしいと。 そしてキミはここに来た。最後にやっと役に立ったね、ラフテル」
「…!?」
「キミが祈り子じゃないってことは、キミの中に入ったときに気づいたよ。キミは本当に面白い存在だ」
「な、何言って……」
「何せ、魂が半分しかない」
「!!」
あの時だ。
ジェクトと戦うことを強制され、自分の体を自分でコントロールできなくなってしまったあの時。
私の体を乗っ取って意識を封じ込めた張本人。
それが、こいつ。
「あれだけ精神的にも肉体的にも痛めつけてやったってのに、それでも俺の力になることを拒んだくせに、今はこうして俺の為にここにいる」
「誰がお前の為になど…!」
「まあいいさ。結局は俺に使われるんだからな」
喉の奥から微かに漏れるような笑みを零しながら、青年は私の腕を掴む力を強くしていく。
私の側から吹き飛ばされたアーロンたちが起き上がり、私のほうへ向かってきたのを目で確認したが、それよりも一瞬早く青年が私を抱きかかえる様子が目に映った。
そして辺りは何も見えなくなる。
→
20,May,2012
突然空気が変わった。
全てが開放に向かっていたと思っていたのに、背後から感じられる気配は禍々しく変化していく。
ユウナの焦りの混じった叫びが決定づけた。
「シューイン!!」
その声に、振り向いた。
いや振り向こうとした。
だが、できなかった。
耳を劈くような空気の振るえと思わず瞼を閉じてしまうほどの一瞬の強い光に包まれたかと思った瞬間だった。
「うっ!!」
「ぐわっ!」
「!!」
自分のすぐ側で聞こえた短い悲鳴に、咄嗟に反応することができなかった。
はっと意識を向けたその時に、目に飛び込んできたのは青年の姿。
僅かに俯いた顔に浮かんでいたのは、口角を持上げただけの黒い笑み。
数瞬遅れて、ブワリと風が流れた。
何が起こったのか瞬時に理解できず、あの少年によく似た姿の、しかし少年とは全く似つかない表情を浮かべた青年をただ見つめた。
視界の隅で動くものを捕らえ、目を逡巡させて理解した。
「アーロン!ジェクト!、ブラスカ!!」
叫びと共に、そちらへ向かおうとした体を押さえられる。
そうされることなど予測できなかった私は、自分の体に触れている人物に目を向けた。
幻光虫の淡い光に包まれた、青年。
「!!」
「…やっと力を貸してくれるんだね」
「な、何言って……、放せ!」
何をどうしたのか、何らかの力が働いているのか、私の両腕をがっちりと上から押さえつけている青年の手を振り解くことができない。
顔だけを僅かに逸らして、たった今まで側にいたはずの人物のほうへ視線を向ける。
この一瞬で何が起こったのか、彼ら自身にも理解できないようで、倒された己の体を起こしている。
「アー…」
「最後の祈り子、ラフテル」
「!! …私は、祈り子ではない!」
アーロンの名を呼ぶことさえ遮って、私の名を呼ぶ青年。
「あぁ、そうだったね。キミは祈り子じゃない」
「!?」
「…ラフテル、さん…?」
私の名を呼ぶ少女の声に意識と顔を向けた。
不思議そうな顔をしたユウナと、彼女の仲間たちがそこにいた。
「…私を、どうするつもりだ」
「言っただろ? 力を貸してほしいと。 そしてキミはここに来た。最後にやっと役に立ったね、ラフテル」
「…!?」
「キミが祈り子じゃないってことは、キミの中に入ったときに気づいたよ。キミは本当に面白い存在だ」
「な、何言って……」
「何せ、魂が半分しかない」
「!!」
あの時だ。
ジェクトと戦うことを強制され、自分の体を自分でコントロールできなくなってしまったあの時。
私の体を乗っ取って意識を封じ込めた張本人。
それが、こいつ。
「あれだけ精神的にも肉体的にも痛めつけてやったってのに、それでも俺の力になることを拒んだくせに、今はこうして俺の為にここにいる」
「誰がお前の為になど…!」
「まあいいさ。結局は俺に使われるんだからな」
喉の奥から微かに漏れるような笑みを零しながら、青年は私の腕を掴む力を強くしていく。
私の側から吹き飛ばされたアーロンたちが起き上がり、私のほうへ向かってきたのを目で確認したが、それよりも一瞬早く青年が私を抱きかかえる様子が目に映った。
そして辺りは何も見えなくなる。
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20,May,2012