第8章【全ての黒幕】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
=55=
「ラフテル、私も行くよ」
肩をポンと軽く叩かれて振り返ると、いつもの笑顔を浮かべたブラスカがそこにいた。
「ジェクトが決断したなら、私が見届けなければ、ね。 …ラフテルも行くんだろう?」
「…え、…あ、…私は」
「勿論だ」
「!!」
答えに逡巡していた私の言葉を遮る様に低い声が重なった。
「ブラスカが行くというのなら、俺たちも行かねばなるまい。それに……、禄でもないことを考える奴の顔を拝んでやりたくないか?」
この世界を滅ぼそうとした人物、祈り子や私の力を利用しようとした奴、アーロンの記憶を奪って我が物のように振舞った男、全ての元凶。
そいつが、そこにいる。
「……行く」
これだけ苦しめられて、混乱させられて、辛い思いを味わって、ここまで来て有耶無耶にしてしまうわけにはいかない。
隣に立つアーロンに視線を送る。
僅かに持ち上げた口角の端を目に止めて、何か違和感を覚えた。
見慣れたはずの顔なのに、サングラスの奥に隠された大きな傷もそこにあるのに、何かがどこか違うように感じた。
だがそれは一瞬のことで、アーロンのたくましい腕が腰に回されたかと思うと、体がふわりと浮き上がった。
「…っ!」
突然体を走った奇妙な感覚に囚われる。
それは物凄く自然な流れの動作であったのだが、もう、これまでも何度もそうされてきたのだが…
なんだろう、この感覚。
背筋にゾワリと走る何か。だが、決して嫌なものではない。
むしろ、そうされることが嬉しくて、くすぐったくて、こそばゆい。
「……?」
私が僅かに身動ぎしたのに気づいたのだろう。
一瞬私の顔色を伺うようにこちらに目を向ける。
先ほど感じた違和感を、また感じる。
互いの体が密着しているということをこの時になって初めて思い出した。
何も言葉を発しないまま、おかしなぎこちない動きをする私に不審を抱いたかのように見つめる。
私たちの姿は、他の者には幻光虫となって見えているはず。
それなのに、私には彼の姿がはっきりと見える。
腰に回された手に力が込められる。
密着している体の熱を感じる。
赤い服を握り締めている手に、私も負けじと力が込められた。
胸の奥が何かに締め付けられるような、変な感覚。
絞りすぎて口から溢れてきそうに思えてくる。
私の嫌いな浮遊感がそうさせるのかとも思ったが、この体になってから生前よく感じていた浮遊感への嫌悪はなくなっていたはず。
顔が、顔だけが熱を持ったように火照る。
思わず彼の服に顔を擦り付けるようにして俯いてしまった。
暗い世界なのは相変わらずだが、いくつかの幻光虫が集まっているのが見えた。
近づくたびにそれは人の姿へと変わっていく。
先に行ったはずのジェクトや祈り子たちだ。
なぜそんなところにいるのかと聞く前に、目の前に広がる光景に息を飲む。
おぞましい姿をしたものが、そこにいた。
→
2,May,2012
「ラフテル、私も行くよ」
肩をポンと軽く叩かれて振り返ると、いつもの笑顔を浮かべたブラスカがそこにいた。
「ジェクトが決断したなら、私が見届けなければ、ね。 …ラフテルも行くんだろう?」
「…え、…あ、…私は」
「勿論だ」
「!!」
答えに逡巡していた私の言葉を遮る様に低い声が重なった。
「ブラスカが行くというのなら、俺たちも行かねばなるまい。それに……、禄でもないことを考える奴の顔を拝んでやりたくないか?」
この世界を滅ぼそうとした人物、祈り子や私の力を利用しようとした奴、アーロンの記憶を奪って我が物のように振舞った男、全ての元凶。
そいつが、そこにいる。
「……行く」
これだけ苦しめられて、混乱させられて、辛い思いを味わって、ここまで来て有耶無耶にしてしまうわけにはいかない。
隣に立つアーロンに視線を送る。
僅かに持ち上げた口角の端を目に止めて、何か違和感を覚えた。
見慣れたはずの顔なのに、サングラスの奥に隠された大きな傷もそこにあるのに、何かがどこか違うように感じた。
だがそれは一瞬のことで、アーロンのたくましい腕が腰に回されたかと思うと、体がふわりと浮き上がった。
「…っ!」
突然体を走った奇妙な感覚に囚われる。
それは物凄く自然な流れの動作であったのだが、もう、これまでも何度もそうされてきたのだが…
なんだろう、この感覚。
背筋にゾワリと走る何か。だが、決して嫌なものではない。
むしろ、そうされることが嬉しくて、くすぐったくて、こそばゆい。
「……?」
私が僅かに身動ぎしたのに気づいたのだろう。
一瞬私の顔色を伺うようにこちらに目を向ける。
先ほど感じた違和感を、また感じる。
互いの体が密着しているということをこの時になって初めて思い出した。
何も言葉を発しないまま、おかしなぎこちない動きをする私に不審を抱いたかのように見つめる。
私たちの姿は、他の者には幻光虫となって見えているはず。
それなのに、私には彼の姿がはっきりと見える。
腰に回された手に力が込められる。
密着している体の熱を感じる。
赤い服を握り締めている手に、私も負けじと力が込められた。
胸の奥が何かに締め付けられるような、変な感覚。
絞りすぎて口から溢れてきそうに思えてくる。
私の嫌いな浮遊感がそうさせるのかとも思ったが、この体になってから生前よく感じていた浮遊感への嫌悪はなくなっていたはず。
顔が、顔だけが熱を持ったように火照る。
思わず彼の服に顔を擦り付けるようにして俯いてしまった。
暗い世界なのは相変わらずだが、いくつかの幻光虫が集まっているのが見えた。
近づくたびにそれは人の姿へと変わっていく。
先に行ったはずのジェクトや祈り子たちだ。
なぜそんなところにいるのかと聞く前に、目の前に広がる光景に息を飲む。
おぞましい姿をしたものが、そこにいた。
→
2,May,2012