第8章【全ての黒幕】
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青年の姿はゆっくりと空気に溶けるように薄れていき、光へと変わっていく。
淡い美しい光と、黒い禍々しい光とが入り混じった不思議な光景。
ゆっくりと舞い上がる光の中、少年の姿をした祈り子が静かに語り始めた。
『彼は寺院の名の下、討伐隊候補生として訓練を受けていた。
家族や友の仇を討つため討伐隊に入ることを夢見ていた彼には、その為の訓練も命令も、盲目的に受け止めていたみたい。 そしてあの日、表で行われた大きな作戦を隠れ蓑にして、その裏で密かに行われていた最終試験。そこで彼が目にした物は信じられない光景。
不気味に漂う黒い幻光虫の溢れた世界で繰り広げられる、仲間同士の…
…殺し合い…』
「!!」
「なっ!」
「…なんてこと…」
『共に討伐隊への入隊を志していた友も仲間も、もうどんな関係も立場もなく、ただ目の前の存在を殺すだけ。
その場にいた全ての人間の目に映るのは、狂気に走って武器を振り翳す、敵。
彼も、そこで友の死を目の当たりにし、そして仲間の手に掛かって命を落とした…。
彼の無念さと悔しさに満ちた魂は、利用されてしまったんだ』
「…誰に…?」
『…シューイン』
「誰だい?」
「…ん?さっきの野郎がそのシューイン、ってやつか?」
「違うジェクト。 さっきのは、そのシューインという人物に利用されただけ」
よく理解できていないようなジェクトの発言に簡単な説明だけをして、再び少年に目を向けた。
1つ頷いた少年が言葉を続ける。
『彼を利用して、自分の望みを叶えようとしたんだ』
「世界を、滅ぼすこと?」
「なんだぁ、じゃあそいつが大元の元凶かよ。 …ん?んじゃよ、なんで昔の堅物の姿で現われやがったんだ?」
『シューインは、1000年前の機械戦争の時代に生きた存在。ずっとずっとこの世界で眠り続けていたはずなのに、その世界のバランスに異変が起きた』
世界の、バランス…。
ずっと、変わる事を拒んできた世界、スピラ。
死というものに囚われた、死の蔓延する、死が螺旋という形でバランスを保ってきた世界。
シンという災厄がこの世に誕生してからずっと保たれてきた変化のない世界を変えたのは、2年前の旅。
復活を繰り返すシンを打ち滅ぼしたのは、ここにいるジェクトとブラスカの子供たちと、そして、私達。
そのきっかけを作ったのは……。
「…夢の、世界の住人…」
「はぁ!?何言ってんだ、ラフテル」
「目覚めたときに、夢の世界へと飛んだ俺の記憶を利用したのか」
『そういうこと』
「どういうことだよ!訳わかんねーぞ!説明しやがれ!」
「まあまあジェクト、落ち着いて」
いつものように笑顔でブラスカはジェクトを宥めていた。
「ジェクトが、スピラに来たから…」
「俺のせいだってのかよ」
少年が静かに首を横に振る。
『キミのせいじゃ、ないよ。 ボクたちが望んだことなんだ。キミたちのお陰で、ボクたちはやっと夢を見ることから解放されたのだから』
「誰のせいでもない。 …時代が、時が、時間が引き起こした運命の歯車が齎した、歴史という物語の1ページ」
私の言葉に、誰も、何も言わない。
否定も肯定もなく、それだけが事実だと皆が認めたのだ。
→
22,Apr,2012
青年の姿はゆっくりと空気に溶けるように薄れていき、光へと変わっていく。
淡い美しい光と、黒い禍々しい光とが入り混じった不思議な光景。
ゆっくりと舞い上がる光の中、少年の姿をした祈り子が静かに語り始めた。
『彼は寺院の名の下、討伐隊候補生として訓練を受けていた。
家族や友の仇を討つため討伐隊に入ることを夢見ていた彼には、その為の訓練も命令も、盲目的に受け止めていたみたい。 そしてあの日、表で行われた大きな作戦を隠れ蓑にして、その裏で密かに行われていた最終試験。そこで彼が目にした物は信じられない光景。
不気味に漂う黒い幻光虫の溢れた世界で繰り広げられる、仲間同士の…
…殺し合い…』
「!!」
「なっ!」
「…なんてこと…」
『共に討伐隊への入隊を志していた友も仲間も、もうどんな関係も立場もなく、ただ目の前の存在を殺すだけ。
その場にいた全ての人間の目に映るのは、狂気に走って武器を振り翳す、敵。
彼も、そこで友の死を目の当たりにし、そして仲間の手に掛かって命を落とした…。
彼の無念さと悔しさに満ちた魂は、利用されてしまったんだ』
「…誰に…?」
『…シューイン』
「誰だい?」
「…ん?さっきの野郎がそのシューイン、ってやつか?」
「違うジェクト。 さっきのは、そのシューインという人物に利用されただけ」
よく理解できていないようなジェクトの発言に簡単な説明だけをして、再び少年に目を向けた。
1つ頷いた少年が言葉を続ける。
『彼を利用して、自分の望みを叶えようとしたんだ』
「世界を、滅ぼすこと?」
「なんだぁ、じゃあそいつが大元の元凶かよ。 …ん?んじゃよ、なんで昔の堅物の姿で現われやがったんだ?」
『シューインは、1000年前の機械戦争の時代に生きた存在。ずっとずっとこの世界で眠り続けていたはずなのに、その世界のバランスに異変が起きた』
世界の、バランス…。
ずっと、変わる事を拒んできた世界、スピラ。
死というものに囚われた、死の蔓延する、死が螺旋という形でバランスを保ってきた世界。
シンという災厄がこの世に誕生してからずっと保たれてきた変化のない世界を変えたのは、2年前の旅。
復活を繰り返すシンを打ち滅ぼしたのは、ここにいるジェクトとブラスカの子供たちと、そして、私達。
そのきっかけを作ったのは……。
「…夢の、世界の住人…」
「はぁ!?何言ってんだ、ラフテル」
「目覚めたときに、夢の世界へと飛んだ俺の記憶を利用したのか」
『そういうこと』
「どういうことだよ!訳わかんねーぞ!説明しやがれ!」
「まあまあジェクト、落ち着いて」
いつものように笑顔でブラスカはジェクトを宥めていた。
「ジェクトが、スピラに来たから…」
「俺のせいだってのかよ」
少年が静かに首を横に振る。
『キミのせいじゃ、ないよ。 ボクたちが望んだことなんだ。キミたちのお陰で、ボクたちはやっと夢を見ることから解放されたのだから』
「誰のせいでもない。 …時代が、時が、時間が引き起こした運命の歯車が齎した、歴史という物語の1ページ」
私の言葉に、誰も、何も言わない。
否定も肯定もなく、それだけが事実だと皆が認めたのだ。
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22,Apr,2012