第8章【全ての黒幕】
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笑顔で幻光虫となって宙へ還っていく3人を見送り、再び奴へと目を向ける。
すぐ隣に突然現われた人影にビクリと反応してしまう。
いつの間にか側に寄っていたアーロンの気配に気付きもしないほど、ジスカル達を見送ることに気を取られてしまっていたというのか。
「アーロン…」
「さあ、俺から奪ったものを返して貰おうか」
「…?」
肩に太刀を担いだままの姿で、アーロンは奴に向かって走り出す。
よろよろとそれでも辛うじて立ち上がったそいつは、正面から突き刺さる剣先を避ける事もできずにその身に受けた。
「!!!」
衝撃的なその光景に息を呑む。
自分で自分の姿を貫いているのだから。
声にならない呻き声を上げた男の身体から、幾つもの幻光虫が辺りに飛び散った。
さながら男の身体が爆発でもしたかのように、その身体そのものが幻光虫の塊であったかのように、光がはじけて辺りを明るく照らした。
解放された幻光虫たちが戸惑うように漂い、そしてゆっくりと宙へ還っていく。
幻想的なその光景の中で、2人の人物の姿を目に留める。
1人は大きな太刀を地に突き刺し、しっかりと両足で立っている。
1人は地に腰を落とし、力なく俯いている。
「アーロン!」
名を叫んで、走り出す。
アーロンのすぐ側まで辿り着いたとき、その人物が顔を上げた。
「!!」
見覚えのあるその顔。
何度か目にした、覚えのない青年。
「お前は、誰だ」
青年の顔から目を離すことなく、アーロンの低い声に耳を傾ける。
青年は何も言う力もないのか、言う気がないのか、俯いたまま反応を示さない。
ふいに私の身体から幻光虫が飛び出した。
『ボクが答えるよ』
「バハムート……」
少年の姿をした祈り子が再び幻光虫へと姿を変え、そして俯いたままの青年の中に入る。
青年が顔をゆっくりと持ち上げる。
『…あの時、何が起きたのか、自分でも分からない。 気が付いたら、もう、命は無かった』
「あんたは、誰?」
『ボクはあの日、あの最終試験を受けていた。この試験が終わったら、ボクたちはそれぞれ部隊を指揮することになるはずだった。
だけど…』
「…だけど?」
『あの時に見た光景が現実なのか、信じることが出来なくて…』
青年はそれきり言葉を発することもなく再び俯いてしまった。
「何があったんだ?」
低い声が問いかける。
その声のほうへ顔を向けると、いつの間にか側に寄っていたブラスカとジェクトがそこにいた。
青年は何も答えない。
「…おい!」
痺れを切らしたように、ジェクトがたたみ掛ける。
『…もう、行かないと…』
「はあっ!?」
青年は小さく呟くと、空を振り仰いだ。
同時に、その体が幻光虫へと変わっていく。
その中のひとつがこちらへと飛んできて、その姿を少年のものに変えた。
それに引かれるように、私とアーロンの体からも幾つかの光が飛び出し、そして祈り子の姿を形成した。
→
28,Mar,2012
笑顔で幻光虫となって宙へ還っていく3人を見送り、再び奴へと目を向ける。
すぐ隣に突然現われた人影にビクリと反応してしまう。
いつの間にか側に寄っていたアーロンの気配に気付きもしないほど、ジスカル達を見送ることに気を取られてしまっていたというのか。
「アーロン…」
「さあ、俺から奪ったものを返して貰おうか」
「…?」
肩に太刀を担いだままの姿で、アーロンは奴に向かって走り出す。
よろよろとそれでも辛うじて立ち上がったそいつは、正面から突き刺さる剣先を避ける事もできずにその身に受けた。
「!!!」
衝撃的なその光景に息を呑む。
自分で自分の姿を貫いているのだから。
声にならない呻き声を上げた男の身体から、幾つもの幻光虫が辺りに飛び散った。
さながら男の身体が爆発でもしたかのように、その身体そのものが幻光虫の塊であったかのように、光がはじけて辺りを明るく照らした。
解放された幻光虫たちが戸惑うように漂い、そしてゆっくりと宙へ還っていく。
幻想的なその光景の中で、2人の人物の姿を目に留める。
1人は大きな太刀を地に突き刺し、しっかりと両足で立っている。
1人は地に腰を落とし、力なく俯いている。
「アーロン!」
名を叫んで、走り出す。
アーロンのすぐ側まで辿り着いたとき、その人物が顔を上げた。
「!!」
見覚えのあるその顔。
何度か目にした、覚えのない青年。
「お前は、誰だ」
青年の顔から目を離すことなく、アーロンの低い声に耳を傾ける。
青年は何も言う力もないのか、言う気がないのか、俯いたまま反応を示さない。
ふいに私の身体から幻光虫が飛び出した。
『ボクが答えるよ』
「バハムート……」
少年の姿をした祈り子が再び幻光虫へと姿を変え、そして俯いたままの青年の中に入る。
青年が顔をゆっくりと持ち上げる。
『…あの時、何が起きたのか、自分でも分からない。 気が付いたら、もう、命は無かった』
「あんたは、誰?」
『ボクはあの日、あの最終試験を受けていた。この試験が終わったら、ボクたちはそれぞれ部隊を指揮することになるはずだった。
だけど…』
「…だけど?」
『あの時に見た光景が現実なのか、信じることが出来なくて…』
青年はそれきり言葉を発することもなく再び俯いてしまった。
「何があったんだ?」
低い声が問いかける。
その声のほうへ顔を向けると、いつの間にか側に寄っていたブラスカとジェクトがそこにいた。
青年は何も答えない。
「…おい!」
痺れを切らしたように、ジェクトがたたみ掛ける。
『…もう、行かないと…』
「はあっ!?」
青年は小さく呟くと、空を振り仰いだ。
同時に、その体が幻光虫へと変わっていく。
その中のひとつがこちらへと飛んできて、その姿を少年のものに変えた。
それに引かれるように、私とアーロンの体からも幾つかの光が飛び出し、そして祈り子の姿を形成した。
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28,Mar,2012