第7章【難しい戦い】
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「貴様達に感謝せねばならんな」
「!?」
奴が突然走り出した。
その先にいたのは、ブラスカとジェクト、そしてシーモアと彼の母親。
一拍遅れて私達も走る。
嘲笑うかのように顔を半分だけこちらに向けて、奴は口角を持ち上げて見せた。
「……くっ…」
「アーロン、平気か?」
「…俺の事よりもお前のほうこそ平気なのか?」
「そんなに深くはない。中の祈り子たちの力が働いてる。…それよりも」
「こっちには構うな、走れ!」
あれほどの戦闘をした後なのだ。
アーロンほどの者でもかなりのダメージを受けているようだ。
…なのに、奴はそれほどでは無いように見える。 …なぜだ?
そして思い出す。
私が2人の間に割って入る直前、奴は自らが生み出した魔物を再び幻光虫に変えて取り込んでいた。
「(…あれで回復を図ってたのか)」
軽い舌打ちをひとつ零して、魔力を集中させた。
『ケアルガ!』
「!! …すまん」
白魔法は余り得意なほうではない。
それでも、気持ちだけでも助けになればいいと思った。
微かな声が上がり、前方に目を向ける。
後ろから片手を封じられ、口を塞がれたシーモアが見えた。
その周りにいる3人には何が起こったのか理解できないようで、ただ驚きの表情でそれを見つめている。
「てめえ、何しやがる!!」
「シーモア!!」
ジェクトの声が一際大きく上がり、到着した私達を含めた者達をぐるりと見回して、奴は口を開いた。
「まったく、僥倖とでも言える。都合のいいことだ」
「…?」
「何を、言っているんだ…」
都合…? 奴は何をするつもりなのだ?
「ラフテル」
再びあの低い甘い声で私を呼ぶ。
思わずビクリと反応して緊張が走る。
「こいつが、どうしてお前を執拗に欲したのか、お前はその理由を知っているか?」
その言葉に、嫌でも思い出す。
2年前の旅、そして初めて会った時のこと、彼の召喚獣によって私が受けた闇の魔法。
シンの体内で彼の最後のときを迎えたとき、彼の心を救えたと思っていた。
それは、私だけのエゴだったのだろうか?
口と片手を封じられて、魔法を唱えることも出来ないシーモアはどこか様子がおかしい。
「…アーロン、どうしてシーモアがここにいるんだ?」
「他人のせいにするわけではないが、…祈り子たちがな」
「祈り子たちが、自分たちを召喚してくれる能力を持った者を必要としたんだ。私もそれで呼ばれたというわけさ」
「…ブラスカ」
「お前がしているように、各地に散らばったシーモアの記憶の欠片を集めて、彼女の力を借りて、その姿と能力だけを辛うじて具現させているだけの、不完全な存在だがな」
彼女、というのは言われなくても分かる。
シーモアの母親のことだろう。
半狂乱のように泣き叫びながら、我が子の解放を願うその姿は見ていて痛々しい。
→
14,Mar,2012
「貴様達に感謝せねばならんな」
「!?」
奴が突然走り出した。
その先にいたのは、ブラスカとジェクト、そしてシーモアと彼の母親。
一拍遅れて私達も走る。
嘲笑うかのように顔を半分だけこちらに向けて、奴は口角を持ち上げて見せた。
「……くっ…」
「アーロン、平気か?」
「…俺の事よりもお前のほうこそ平気なのか?」
「そんなに深くはない。中の祈り子たちの力が働いてる。…それよりも」
「こっちには構うな、走れ!」
あれほどの戦闘をした後なのだ。
アーロンほどの者でもかなりのダメージを受けているようだ。
…なのに、奴はそれほどでは無いように見える。 …なぜだ?
そして思い出す。
私が2人の間に割って入る直前、奴は自らが生み出した魔物を再び幻光虫に変えて取り込んでいた。
「(…あれで回復を図ってたのか)」
軽い舌打ちをひとつ零して、魔力を集中させた。
『ケアルガ!』
「!! …すまん」
白魔法は余り得意なほうではない。
それでも、気持ちだけでも助けになればいいと思った。
微かな声が上がり、前方に目を向ける。
後ろから片手を封じられ、口を塞がれたシーモアが見えた。
その周りにいる3人には何が起こったのか理解できないようで、ただ驚きの表情でそれを見つめている。
「てめえ、何しやがる!!」
「シーモア!!」
ジェクトの声が一際大きく上がり、到着した私達を含めた者達をぐるりと見回して、奴は口を開いた。
「まったく、僥倖とでも言える。都合のいいことだ」
「…?」
「何を、言っているんだ…」
都合…? 奴は何をするつもりなのだ?
「ラフテル」
再びあの低い甘い声で私を呼ぶ。
思わずビクリと反応して緊張が走る。
「こいつが、どうしてお前を執拗に欲したのか、お前はその理由を知っているか?」
その言葉に、嫌でも思い出す。
2年前の旅、そして初めて会った時のこと、彼の召喚獣によって私が受けた闇の魔法。
シンの体内で彼の最後のときを迎えたとき、彼の心を救えたと思っていた。
それは、私だけのエゴだったのだろうか?
口と片手を封じられて、魔法を唱えることも出来ないシーモアはどこか様子がおかしい。
「…アーロン、どうしてシーモアがここにいるんだ?」
「他人のせいにするわけではないが、…祈り子たちがな」
「祈り子たちが、自分たちを召喚してくれる能力を持った者を必要としたんだ。私もそれで呼ばれたというわけさ」
「…ブラスカ」
「お前がしているように、各地に散らばったシーモアの記憶の欠片を集めて、彼女の力を借りて、その姿と能力だけを辛うじて具現させているだけの、不完全な存在だがな」
彼女、というのは言われなくても分かる。
シーモアの母親のことだろう。
半狂乱のように泣き叫びながら、我が子の解放を願うその姿は見ていて痛々しい。
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14,Mar,2012