第7章【難しい戦い】
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「ラフテル」
低い声が私を呼ぶ。
「…ラフテル」
もっと低い同じ声が私を呼ぶ。
若い姿のアーロンが私に見せた笑顔や優しさは、この隻眼のアーロンには無いものだ。
あの黒い障気に包まれた姿も、顔が半分吹き飛んだ男も、知らない。
ザナルカンドにいたという10年間のことも、知らない。
幼い頃のアーロンなんて知らない。
過ぎた、会えなかった月日が10年だけとは思えないほど、歳を重ねたような姿に驚かない訳がない。
この2人のどちらかが本物でどちらかが偽物…?
今の私にその判断を下すことなんて、できない。
どちらの人物も信じられなくなってくる。
どうすればいいのだ。
何を、誰を信じればいいのだ。
「どちらでも構わん。俺はただ、奪われたものを取り戻すのみ」
「不安定な魂の欠片の分際で、何をほざく」
「…!?」
剣先を互いの喉元に突き付け、激しく睨み合うその姿に戦慄が走る。
「…あ、ああ……、ああぁぁ…っ…」
短い呼気と共に漏れる声は声にならない。
思考するということさえも思考できず、真っ白になってしまった頭でただ、目の前の光景を見つめているだけ。
2人の男が戦っている。
同じ武器で、同じ声で、同じ動きで、同じ技を放つ。
2人が出す声と振るった武器から産み出される音がこの戦いの壮絶さを物語っている。
全部見えている。
全部聞こえている。
激しい力任せの剣技も、相手を射殺してしまいそうな眼光も、覇気が舞い上げる鋭いナイフのような空気の流れも、
私にとっては全てがアーロンそのもので、なぜこの2人が戦っているのか、答えを見つけられない。
一人が大きく振りかぶり高く飛び上がって力任せに降り下ろす。
もう一人がそれを下で受け止め、そのまま横薙ぎに払う。
上から降り下ろした剣を立ててそれを受け止めると、すかさず刃を返して斬り上げる。
軌道を止められた位置から素早く身を捻って後方へ避ける……
こんな、一瞬でも気を抜くことのできないまさに死闘が、物凄い早さで繰り広げられている。
相手が飛べばこちらも飛び上がり、こちらが技を仕掛ければ相手も技を返してくる。
その度に生まれる覇気の突風や剣技の衝撃波が周りの者をも巻き込んでしまう。
一際大きな金属の音がして、急に音が止む。
2人の同じ人物が互いに互いの武器を受け止め合っていた。
動きがないのは、動けないから。
鍔迫り合いでは少しの油断も許されない。
ギリギリと金属が擦れる嫌な音だけが響いていた。
「…ほう、歳は食っても、俺は俺というわけか」
「…フン、貴様はケツの青いヒヨッコではないか」
バチッと雷でも落ちたかのような音がして、2人が同時に後方へ飛び、距離をとる。
そこで生まれた衝撃波で、私の髪が風に遊ぶ。
ただ見ていることができなくなって、叫んだ。
「もうやめろ―――っ!! やめてくれ―――っ!!!」
2人はまた剣技を繰り出す。
私の声は届いていないのか、聞くつもりはないのか互いの攻撃は苛烈を極めていく。
もう、止めることはできないのだろうか?
ふいにまた2人の動きが止まる。
若い姿のアーロンが、片腕を高々と持ち上げてみせる。
すると、ジェクトとアニマ、2体の召喚獣が対峙していた魔物たちがその動きをとめる。
→
14,Mar,2012
「ラフテル」
低い声が私を呼ぶ。
「…ラフテル」
もっと低い同じ声が私を呼ぶ。
若い姿のアーロンが私に見せた笑顔や優しさは、この隻眼のアーロンには無いものだ。
あの黒い障気に包まれた姿も、顔が半分吹き飛んだ男も、知らない。
ザナルカンドにいたという10年間のことも、知らない。
幼い頃のアーロンなんて知らない。
過ぎた、会えなかった月日が10年だけとは思えないほど、歳を重ねたような姿に驚かない訳がない。
この2人のどちらかが本物でどちらかが偽物…?
今の私にその判断を下すことなんて、できない。
どちらの人物も信じられなくなってくる。
どうすればいいのだ。
何を、誰を信じればいいのだ。
「どちらでも構わん。俺はただ、奪われたものを取り戻すのみ」
「不安定な魂の欠片の分際で、何をほざく」
「…!?」
剣先を互いの喉元に突き付け、激しく睨み合うその姿に戦慄が走る。
「…あ、ああ……、ああぁぁ…っ…」
短い呼気と共に漏れる声は声にならない。
思考するということさえも思考できず、真っ白になってしまった頭でただ、目の前の光景を見つめているだけ。
2人の男が戦っている。
同じ武器で、同じ声で、同じ動きで、同じ技を放つ。
2人が出す声と振るった武器から産み出される音がこの戦いの壮絶さを物語っている。
全部見えている。
全部聞こえている。
激しい力任せの剣技も、相手を射殺してしまいそうな眼光も、覇気が舞い上げる鋭いナイフのような空気の流れも、
私にとっては全てがアーロンそのもので、なぜこの2人が戦っているのか、答えを見つけられない。
一人が大きく振りかぶり高く飛び上がって力任せに降り下ろす。
もう一人がそれを下で受け止め、そのまま横薙ぎに払う。
上から降り下ろした剣を立ててそれを受け止めると、すかさず刃を返して斬り上げる。
軌道を止められた位置から素早く身を捻って後方へ避ける……
こんな、一瞬でも気を抜くことのできないまさに死闘が、物凄い早さで繰り広げられている。
相手が飛べばこちらも飛び上がり、こちらが技を仕掛ければ相手も技を返してくる。
その度に生まれる覇気の突風や剣技の衝撃波が周りの者をも巻き込んでしまう。
一際大きな金属の音がして、急に音が止む。
2人の同じ人物が互いに互いの武器を受け止め合っていた。
動きがないのは、動けないから。
鍔迫り合いでは少しの油断も許されない。
ギリギリと金属が擦れる嫌な音だけが響いていた。
「…ほう、歳は食っても、俺は俺というわけか」
「…フン、貴様はケツの青いヒヨッコではないか」
バチッと雷でも落ちたかのような音がして、2人が同時に後方へ飛び、距離をとる。
そこで生まれた衝撃波で、私の髪が風に遊ぶ。
ただ見ていることができなくなって、叫んだ。
「もうやめろ―――っ!! やめてくれ―――っ!!!」
2人はまた剣技を繰り出す。
私の声は届いていないのか、聞くつもりはないのか互いの攻撃は苛烈を極めていく。
もう、止めることはできないのだろうか?
ふいにまた2人の動きが止まる。
若い姿のアーロンが、片腕を高々と持ち上げてみせる。
すると、ジェクトとアニマ、2体の召喚獣が対峙していた魔物たちがその動きをとめる。
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14,Mar,2012