第6章【心の逆転を】
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この感覚…、同じ…!?
あの時、ジェクトと戦ったあの時に感じた、おかしな感覚。
自分が自分ではないような不思議な感じ。
だが、先程のものとは明らかに違う、温かみと優しさに溢れている。
同時に、自身の肉体から吹き出るような魔力。
己の持っていた能力以上の大きな力を、この小さな体で留めておくことなどできないようにすら思ってしまう。
私が今感じているものを、アーロンも同じように感じているのだろう。
視線を向けたところにあった彼の表情は複雑そうだ。
突然、頭の中に覚えのない光景が浮かび上がった。
黒い色の靄のようなものに包まれた瞬間、禍々しい光を放つ幻光虫が入り込んできた。
どこからともなく聞こえる邪悪な囁き。
そして大勢の人間の叫び声。
これは私の中に入った3人の、記憶…?
この3人も、私と同じように苦しんだのだ。
そして体を使われた。
それは恐らくジェクトも同じだったのだろう。
だが、アーロンにとっては初めての光景だ。
「……な、なんだ、これは…」
片手で額を抑えるようにして、困惑の表情を浮かべている。
「私とジェクトも、これにやられて…」
「お前、も…? なぜだ?」
「なんでなのかなんて、私が知りたい。…でも、あいつは私を祈り子の1人だと思っているようだった」
「…あいつ?」
アーロンと合わせていた目を向けた。
先程向かっていったブラスカとジェクトのそばで、大きな魔物と戦っている者達を見つめている。
若い時の自分がそこにいたら、どう思うんだろう?
アーロンは、どうなんだろうか?
アーロンがどんな反応をするのかと、また視線をアーロンに向けた。
「アーロン…」
「なんだ?」
「えっ、あ、いや…」
もっと感情的になっているのかと思ったが、そうでもない声が返ってきたので、こちらのほうが言葉に詰まってしまう。
「奴は、何なんだ?」
「私にも、わからない。…でも……」
「? なんだ?」
急に後ろめたさを感じてしまう。
今目の前にいるアーロンと若い姿のアーロン。
2人の同じ人物に接して、触れて、言葉を交わして、時間を過ごした。
若い姿の頃のアーロンと出会って、あの頃には無かった感情や気持ちに支配されたのは事実だ。
ずっと側にいてくれて、私に温もりを分け与えてくれた今のアーロンよりも、一生消えない傷を私の心につけた頃の姿のアーロンに惹かれた。
どちらも、アーロンであることに違いないが、それでも今のアーロンを裏切っているようで、落ち着かない。
「私、話をしたい。彼と…」
「話したところで解決するとは思えんが?」
それは私も思っている。確かにそうだろう。
「それでも、何もわからないまま戦うのは、……嫌だ」
アーロンは、じっと私の顔を見つめた。
何か言いたそうに一旦開いた口を、溜め息と共に閉じてしまう。
一人で勝手に納得したのか、一度ゆっくりと瞑目してまた私を見下ろした。
「どこかの若い召喚士を思い出すな…」
→第7章
14,Mar,2012
この感覚…、同じ…!?
あの時、ジェクトと戦ったあの時に感じた、おかしな感覚。
自分が自分ではないような不思議な感じ。
だが、先程のものとは明らかに違う、温かみと優しさに溢れている。
同時に、自身の肉体から吹き出るような魔力。
己の持っていた能力以上の大きな力を、この小さな体で留めておくことなどできないようにすら思ってしまう。
私が今感じているものを、アーロンも同じように感じているのだろう。
視線を向けたところにあった彼の表情は複雑そうだ。
突然、頭の中に覚えのない光景が浮かび上がった。
黒い色の靄のようなものに包まれた瞬間、禍々しい光を放つ幻光虫が入り込んできた。
どこからともなく聞こえる邪悪な囁き。
そして大勢の人間の叫び声。
これは私の中に入った3人の、記憶…?
この3人も、私と同じように苦しんだのだ。
そして体を使われた。
それは恐らくジェクトも同じだったのだろう。
だが、アーロンにとっては初めての光景だ。
「……な、なんだ、これは…」
片手で額を抑えるようにして、困惑の表情を浮かべている。
「私とジェクトも、これにやられて…」
「お前、も…? なぜだ?」
「なんでなのかなんて、私が知りたい。…でも、あいつは私を祈り子の1人だと思っているようだった」
「…あいつ?」
アーロンと合わせていた目を向けた。
先程向かっていったブラスカとジェクトのそばで、大きな魔物と戦っている者達を見つめている。
若い時の自分がそこにいたら、どう思うんだろう?
アーロンは、どうなんだろうか?
アーロンがどんな反応をするのかと、また視線をアーロンに向けた。
「アーロン…」
「なんだ?」
「えっ、あ、いや…」
もっと感情的になっているのかと思ったが、そうでもない声が返ってきたので、こちらのほうが言葉に詰まってしまう。
「奴は、何なんだ?」
「私にも、わからない。…でも……」
「? なんだ?」
急に後ろめたさを感じてしまう。
今目の前にいるアーロンと若い姿のアーロン。
2人の同じ人物に接して、触れて、言葉を交わして、時間を過ごした。
若い姿の頃のアーロンと出会って、あの頃には無かった感情や気持ちに支配されたのは事実だ。
ずっと側にいてくれて、私に温もりを分け与えてくれた今のアーロンよりも、一生消えない傷を私の心につけた頃の姿のアーロンに惹かれた。
どちらも、アーロンであることに違いないが、それでも今のアーロンを裏切っているようで、落ち着かない。
「私、話をしたい。彼と…」
「話したところで解決するとは思えんが?」
それは私も思っている。確かにそうだろう。
「それでも、何もわからないまま戦うのは、……嫌だ」
アーロンは、じっと私の顔を見つめた。
何か言いたそうに一旦開いた口を、溜め息と共に閉じてしまう。
一人で勝手に納得したのか、一度ゆっくりと瞑目してまた私を見下ろした。
「どこかの若い召喚士を思い出すな…」
→第7章
14,Mar,2012