第6章【心の逆転を】
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この世界を作り出したのは自分自身。
入り込んだのも自分自身。
ならば出ることも自分自身でできるはず。
私は、出る。
だからアーロン、力を貸して。
どちらへ向かえばいいのか方向を指し示して!
ふと、何かの気配を感じた気がした。
ゆっくりと振り返る。
振り向いたその瞬間、淡い光の輪郭が形作る何かに体を包み込まれた。
「!!」
真っ暗な世界で見えたあの時の少年を思い出させた。
『………』
名を、呼ばれたような気がした。
暗い世界にいた私には、そこの淡い光でさえも眩しく感じた。
ゆっくりと持ち上げた瞼の隙間から差し込んだ景色は、先程まで自分がいた黒い岩の浮かぶ暗い世界。
途端に体中に走る凄まじい痛みと皮膚の突っ張る感覚。
そして、私の体を強く抱き締めている暖かい体温。
「…ラフテル…」
耳元で囁く低い声に、全身が反応して体の中を何かが走り抜けるような気分になる。
「…ア、アーロン…」
「!!ラフテル!」
私の小さな呼び掛けに応えるように、一旦力を緩めた両手で私の顔を包み込んだ。
ここで漸く私も相手の顔を見ることができた。
いかにも怒りを顕にしているかのような深い眉間の皺と、見ている者を睨み殺してしまいそうなほどの鋭い眼光。
そして、もう二度と開くことのない右目に走る大きな傷痕。
よく見知った見慣れた、会いたいと願った顔がそこにあった。
微かに浮かべた笑みのせいで、殴られた頬の皮膚がひきつる。
自分でどうなっているのか確かめることができないが、私の顔は今酷いことになっているのだろう。
こんな顔を曝すことに僅かに恥が浮かんだが、もう、今更だ。
様相の崩れた私の顔を胸に押し付けるようにして、私は再び力強い腕の中に抱き締められた。
この温かい体温に包まれて、途端に押し寄せてきた安堵感で私はすっかり気を緩めてしまっていたようだ。
体中に走る痛みが、私の理性を保ってくれる。
まだ、終わってはいないはず。
動かすたびにぎしぎしと軋むように痛む腕を2人の間に割り込ませる。
「ア、アーロン、どうしてここに…。どうなったんだ…?」
「祈り子から話は聞いた。…ちょっと探し物をしていてな」
「探し物?」
「詳しい話は後だ。…驚くなよ」
「…?」
「ラフテル」
アーロンのものとは別の声が背後から掛けられた。
同時にアーロンが腕の力を緩める。
声のしたほうを振り向くと、そこにいたのはフードを被った少年。
「戻ってきたんだね、ラフテル」
「…バハムート」
振り返った少年の背後に、いた。
はっとして体を強張らせる。
私をボロボロにした張本人と、2体の大きな魔物。
禍々しい気を湯気のように立ち上らせながらこちらに歩み寄ってくる。
私があの暗い世界にいたのは、時間にしてそう長い事ではなかったようだ。
その姿を見て、私はまた少々パニックになる。
戦わなければならない。逃げなければならない。
なぜここにアーロンがいる。なぜここに祈り子がいる?
彼らは何をしていた。なぜあいつは若いアーロンの姿をしている?
ジェクトを助けなければ……
突然頭いっぱいに様々なことが浮かぶ。
やらなければならない。
知りたいことが山ほどある。
でも体は動いてくれない。
額に掌に背中に汗が浮かぶ。
まもともに呼吸が出来なくなって、短い息を小刻みに漏らす。
「ラフテル、落ち着いて、大丈夫だから」
「…だっ、…で、でも…あ、あれ…、っ!」
言葉を纏めることも出来ない私の目に、フワリと幻光虫が映った。
「!?」
『あら、見せ付けてるの?』
『元気な証拠!』
『でも、もっと元気にしてあげる!』
→
14,Feb,2012
この世界を作り出したのは自分自身。
入り込んだのも自分自身。
ならば出ることも自分自身でできるはず。
私は、出る。
だからアーロン、力を貸して。
どちらへ向かえばいいのか方向を指し示して!
ふと、何かの気配を感じた気がした。
ゆっくりと振り返る。
振り向いたその瞬間、淡い光の輪郭が形作る何かに体を包み込まれた。
「!!」
真っ暗な世界で見えたあの時の少年を思い出させた。
『………』
名を、呼ばれたような気がした。
暗い世界にいた私には、そこの淡い光でさえも眩しく感じた。
ゆっくりと持ち上げた瞼の隙間から差し込んだ景色は、先程まで自分がいた黒い岩の浮かぶ暗い世界。
途端に体中に走る凄まじい痛みと皮膚の突っ張る感覚。
そして、私の体を強く抱き締めている暖かい体温。
「…ラフテル…」
耳元で囁く低い声に、全身が反応して体の中を何かが走り抜けるような気分になる。
「…ア、アーロン…」
「!!ラフテル!」
私の小さな呼び掛けに応えるように、一旦力を緩めた両手で私の顔を包み込んだ。
ここで漸く私も相手の顔を見ることができた。
いかにも怒りを顕にしているかのような深い眉間の皺と、見ている者を睨み殺してしまいそうなほどの鋭い眼光。
そして、もう二度と開くことのない右目に走る大きな傷痕。
よく見知った見慣れた、会いたいと願った顔がそこにあった。
微かに浮かべた笑みのせいで、殴られた頬の皮膚がひきつる。
自分でどうなっているのか確かめることができないが、私の顔は今酷いことになっているのだろう。
こんな顔を曝すことに僅かに恥が浮かんだが、もう、今更だ。
様相の崩れた私の顔を胸に押し付けるようにして、私は再び力強い腕の中に抱き締められた。
この温かい体温に包まれて、途端に押し寄せてきた安堵感で私はすっかり気を緩めてしまっていたようだ。
体中に走る痛みが、私の理性を保ってくれる。
まだ、終わってはいないはず。
動かすたびにぎしぎしと軋むように痛む腕を2人の間に割り込ませる。
「ア、アーロン、どうしてここに…。どうなったんだ…?」
「祈り子から話は聞いた。…ちょっと探し物をしていてな」
「探し物?」
「詳しい話は後だ。…驚くなよ」
「…?」
「ラフテル」
アーロンのものとは別の声が背後から掛けられた。
同時にアーロンが腕の力を緩める。
声のしたほうを振り向くと、そこにいたのはフードを被った少年。
「戻ってきたんだね、ラフテル」
「…バハムート」
振り返った少年の背後に、いた。
はっとして体を強張らせる。
私をボロボロにした張本人と、2体の大きな魔物。
禍々しい気を湯気のように立ち上らせながらこちらに歩み寄ってくる。
私があの暗い世界にいたのは、時間にしてそう長い事ではなかったようだ。
その姿を見て、私はまた少々パニックになる。
戦わなければならない。逃げなければならない。
なぜここにアーロンがいる。なぜここに祈り子がいる?
彼らは何をしていた。なぜあいつは若いアーロンの姿をしている?
ジェクトを助けなければ……
突然頭いっぱいに様々なことが浮かぶ。
やらなければならない。
知りたいことが山ほどある。
でも体は動いてくれない。
額に掌に背中に汗が浮かぶ。
まもともに呼吸が出来なくなって、短い息を小刻みに漏らす。
「ラフテル、落ち着いて、大丈夫だから」
「…だっ、…で、でも…あ、あれ…、っ!」
言葉を纏めることも出来ない私の目に、フワリと幻光虫が映った。
「!?」
『あら、見せ付けてるの?』
『元気な証拠!』
『でも、もっと元気にしてあげる!』
→
14,Feb,2012