第1章【2年後のお話】
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何気ない会話をして、所々に違和感を覚えながらも懐かしさや恋心に、次第に私は溺れて行った。
朝起きてスピラに行って、戻ったらここで若いアーロンと会って、そしてまた家に帰ってアーロンと会う。
よく考えれば凄くおかしな行動をしている。
今のアーロンと、どんな関係なんだろうかと考えずにはいられない。
別に結婚をしているわけではないから、他の異性と会ったことを咎められる筋合いは無い。
尤も、この2人は違うのか同一人物なのか、それすらもよく分からない。
それでも、何日かそうして過ごしていたある日、鋭い隻眼で私をじっと見つめて言った。
「ラフテル、毎日、誰かと会っているのか?」
「!!」
別に疚しいことをしているわけではない。
疑われるようなことをしているつもりは無い。
「…アーロンに、会ってるが?」
正直な答えだ。
「そういうことを聞いているんじゃない」
「別に嘘はついていない」
…確かに嘘ではないが、真相ではない。
私の言葉は、このアーロンにとっては自分のこと。だが私にとっては、もう1人のアーロンのこと……
私の様子が普段と違うことを見抜いていたのだろう。
私自身はそれをうまく隠していたつもりだったが、全てを誤魔化しきれるはずも無い。
ただでさえ勘の鋭い男だ。
何気ない振りの中の私の動揺を捕らえていたのだろう。
正直に話すべきか、それともこのまま黙っているべきか、私はまだ迷っている。
出会った最初の日、2人を引き合わせてみたいと思ったが、それはとても危険なことのように思えて仕方が無いのだ。
なぜ危険なのか、そんなことはわからない。
ただ漠然とやめたほうがいいと、私の心の中の誰かが言っているのだ。
「ラフテル、お前のやっている仕事を俺にも見せてくれないか?」
突然、アーロンがそう言った。
私は仕事を終えたばかりで、やっとスピラから戻ったところで、またこの甘い時間を味わえることに安堵していた矢先だった。
まさかこんなことを言われるなんて思ってもいなかったので、何かおかしな曖昧な言葉だけを返したらしい。
私の返答に、堪えきれずに吹き出したとでもいうような笑いを声を出して笑顔を私に向けてくる。
それからまた、私達は花畑に座り込んで他愛もない話をして笑いあった。
家に戻ると、片目の男が私を迎える。
いつでも怒ったようなきつい眼差しで私を睨み付ける。
これがつい今しがたまで一緒にいた奴と同じ人物だなんて、やはり思えない。
さっきまでふわふわと浮いていたような気分は一気にどん底まで下がっていき、途端に不機嫌になってしまう。
それが自分自身のせいだとわかっているのに、認めたくない。
目の前にいる隻眼の男がもっと違う接し方をしてくれればいいのに、と、その責を転化しようとしている。
「ラフテル…」
低い声で私の名を呼ぶ。
10年という時間がどれだけ1人の人間を変えてしまうのか、こいつを見るとつくづく実感する。
「…悪い、もう休ませてくれ。疲れてるんだ…」
お決まりな文句でその場を離れようとする。
奴の脇をすり抜けようとした瞬間、奴の力強い逞しい腕に捕まえられた。
「!!」
急に進もうとした方向を変えられ、バランスを崩した私はそのまま奴の腕に抱き締められた。
「ラフテル…」
一度目より幾分か優しくなった口調で再び私の名を呼ぶ。
「アーロン、離して…」
もう、異界の匂いはしない胸の中で、こうして異界の匂いと共に包まれたときに感じていた安心感を思い出す。
でも、同時に信じられないが嫌悪感までもが湧いてくる。
「ラフテル、何を隠している」
「…別に、何も…」
近づく顔を思わず避けてしまう。
→
29,jun,2011
何気ない会話をして、所々に違和感を覚えながらも懐かしさや恋心に、次第に私は溺れて行った。
朝起きてスピラに行って、戻ったらここで若いアーロンと会って、そしてまた家に帰ってアーロンと会う。
よく考えれば凄くおかしな行動をしている。
今のアーロンと、どんな関係なんだろうかと考えずにはいられない。
別に結婚をしているわけではないから、他の異性と会ったことを咎められる筋合いは無い。
尤も、この2人は違うのか同一人物なのか、それすらもよく分からない。
それでも、何日かそうして過ごしていたある日、鋭い隻眼で私をじっと見つめて言った。
「ラフテル、毎日、誰かと会っているのか?」
「!!」
別に疚しいことをしているわけではない。
疑われるようなことをしているつもりは無い。
「…アーロンに、会ってるが?」
正直な答えだ。
「そういうことを聞いているんじゃない」
「別に嘘はついていない」
…確かに嘘ではないが、真相ではない。
私の言葉は、このアーロンにとっては自分のこと。だが私にとっては、もう1人のアーロンのこと……
私の様子が普段と違うことを見抜いていたのだろう。
私自身はそれをうまく隠していたつもりだったが、全てを誤魔化しきれるはずも無い。
ただでさえ勘の鋭い男だ。
何気ない振りの中の私の動揺を捕らえていたのだろう。
正直に話すべきか、それともこのまま黙っているべきか、私はまだ迷っている。
出会った最初の日、2人を引き合わせてみたいと思ったが、それはとても危険なことのように思えて仕方が無いのだ。
なぜ危険なのか、そんなことはわからない。
ただ漠然とやめたほうがいいと、私の心の中の誰かが言っているのだ。
「ラフテル、お前のやっている仕事を俺にも見せてくれないか?」
突然、アーロンがそう言った。
私は仕事を終えたばかりで、やっとスピラから戻ったところで、またこの甘い時間を味わえることに安堵していた矢先だった。
まさかこんなことを言われるなんて思ってもいなかったので、何かおかしな曖昧な言葉だけを返したらしい。
私の返答に、堪えきれずに吹き出したとでもいうような笑いを声を出して笑顔を私に向けてくる。
それからまた、私達は花畑に座り込んで他愛もない話をして笑いあった。
家に戻ると、片目の男が私を迎える。
いつでも怒ったようなきつい眼差しで私を睨み付ける。
これがつい今しがたまで一緒にいた奴と同じ人物だなんて、やはり思えない。
さっきまでふわふわと浮いていたような気分は一気にどん底まで下がっていき、途端に不機嫌になってしまう。
それが自分自身のせいだとわかっているのに、認めたくない。
目の前にいる隻眼の男がもっと違う接し方をしてくれればいいのに、と、その責を転化しようとしている。
「ラフテル…」
低い声で私の名を呼ぶ。
10年という時間がどれだけ1人の人間を変えてしまうのか、こいつを見るとつくづく実感する。
「…悪い、もう休ませてくれ。疲れてるんだ…」
お決まりな文句でその場を離れようとする。
奴の脇をすり抜けようとした瞬間、奴の力強い逞しい腕に捕まえられた。
「!!」
急に進もうとした方向を変えられ、バランスを崩した私はそのまま奴の腕に抱き締められた。
「ラフテル…」
一度目より幾分か優しくなった口調で再び私の名を呼ぶ。
「アーロン、離して…」
もう、異界の匂いはしない胸の中で、こうして異界の匂いと共に包まれたときに感じていた安心感を思い出す。
でも、同時に信じられないが嫌悪感までもが湧いてくる。
「ラフテル、何を隠している」
「…別に、何も…」
近づく顔を思わず避けてしまう。
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29,jun,2011