第6章【心の逆転を】
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ただごつごつとした黒い地面と、吸い込まれそうな真っ暗な闇が広がる空間が見えるだけ。
攻撃を受けた時にまたどこか負傷したのだろう、流れた血から変化した幻光虫が私の顔を微かに照らして舞い上がった。
私は傷ついていく一方で、私とジェクトから幻光虫を吸って魔物たちは強力になる一方で…。
戦わなくては!という私の心は崩れていく。
体中に負った傷が与えていた痛みを感じない。
必死に考えることもバカらしく思えてくる。
指一本さえ動かすことが億劫になる。
瞼が重くて、目を開けているのが難しい。
半分ほど落ちた瞼のせいで、目から温かい液体が零れた。
体の痛みはわからなくても、この小さな熱だけは感じられる。
もう戦うなと、諦めろと、敗けを認めて泣いていればいいと、私の体が訴えているようだった。
薄く開いた目に、零れ落ちた涙から浮かび上がる小さな小さな幻光虫が見えた。
こんな小さな涙の跡ひとつ、この世界には残すことも赦されないのだろうか…。
「…アーロン…助け、て…」
思わず呟いた声は誰にも届くことはないだろう。
私は、静かに意識を手放した。
「………」
真っ暗な空間。
何もない、あったとしても見えない黒い世界。
いつか入り込んだ真っ白な世界とは、対称的な闇の空間。
ここは、何だ…?
あの時と同じような深層の世界なのだろうか?
あの時には感じた、小さな魂の存在。
だが今はもう何も感じない。
「………!」
誰かの微かな声を聞いた気がした。
声を聞いたから、私はここで目を覚ましたのに、今は何も聞こえない。
「誰かいるのか!?」
先程の声をまた聞きたくて、私は声を張り上げる。
黒い闇に飲み込まれるように、私の声は木霊も残さず消えてしまう。
「 」
どこか遠くのほうで何かを言っているようには感じられるが、それが言葉として届かない。
時折気味の悪い下卑た笑いが混じるのだけを感じることができる。
「…分と……しな……いを……った……、…ヒヒヒ……」
耳に入る音は誰かの声だとわかるのに、それが言葉として繋がらない。
判別できない。判断できない。
ただ、ゾクリと蟲が背筋を這うような薄気味の悪さだけがそこにあった。
→
18,Jan,2012
ただごつごつとした黒い地面と、吸い込まれそうな真っ暗な闇が広がる空間が見えるだけ。
攻撃を受けた時にまたどこか負傷したのだろう、流れた血から変化した幻光虫が私の顔を微かに照らして舞い上がった。
私は傷ついていく一方で、私とジェクトから幻光虫を吸って魔物たちは強力になる一方で…。
戦わなくては!という私の心は崩れていく。
体中に負った傷が与えていた痛みを感じない。
必死に考えることもバカらしく思えてくる。
指一本さえ動かすことが億劫になる。
瞼が重くて、目を開けているのが難しい。
半分ほど落ちた瞼のせいで、目から温かい液体が零れた。
体の痛みはわからなくても、この小さな熱だけは感じられる。
もう戦うなと、諦めろと、敗けを認めて泣いていればいいと、私の体が訴えているようだった。
薄く開いた目に、零れ落ちた涙から浮かび上がる小さな小さな幻光虫が見えた。
こんな小さな涙の跡ひとつ、この世界には残すことも赦されないのだろうか…。
「…アーロン…助け、て…」
思わず呟いた声は誰にも届くことはないだろう。
私は、静かに意識を手放した。
「………」
真っ暗な空間。
何もない、あったとしても見えない黒い世界。
いつか入り込んだ真っ白な世界とは、対称的な闇の空間。
ここは、何だ…?
あの時と同じような深層の世界なのだろうか?
あの時には感じた、小さな魂の存在。
だが今はもう何も感じない。
「………!」
誰かの微かな声を聞いた気がした。
声を聞いたから、私はここで目を覚ましたのに、今は何も聞こえない。
「誰かいるのか!?」
先程の声をまた聞きたくて、私は声を張り上げる。
黒い闇に飲み込まれるように、私の声は木霊も残さず消えてしまう。
「 」
どこか遠くのほうで何かを言っているようには感じられるが、それが言葉として届かない。
時折気味の悪い下卑た笑いが混じるのだけを感じることができる。
「…分と……しな……いを……った……、…ヒヒヒ……」
耳に入る音は誰かの声だとわかるのに、それが言葉として繋がらない。
判別できない。判断できない。
ただ、ゾクリと蟲が背筋を這うような薄気味の悪さだけがそこにあった。
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18,Jan,2012