第5章【気持ちと心の変化】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
=34=
「…こんな姿にしたのは、お前だ、ラフテル…」
喉の奥にも血液が流れ込んでいるのだろう、まともな声ではなかった。
これが誰なのかなんて、知らない。
だが、名を呼んだ。
私の名を…。
彼に一体何があったのか、何が起こったのかなんてわからない。
私に何を求めているんだ?
「…お、おまえが…、あ、ああ……、いな、ければ…、シン、……たお、さ……」
「…?」
頭を半分失っても尚、この男は私に歩み寄ってくる。
足取りはしっかりしたものとは言えないが、それでも動いている死体のように1歩、また1歩と足を進めてくる。
自分はもう、死んでいる人間だ。
人を、命を殺めたこともある。
こんな姿になった人間を目の当たりにしたことも何度もある。
それなのに、今目の前にいて私に向かってくるこの姿を見て、素直に怖いと思う。
恐怖に心を乗っ取られそうだ。
彼がこの姿になったのは、私のせい。
こいつは確かにそう言った。
……私は彼を知らないと言うのに…
男の姿がまた幻光に包まれていく。
幻光の黒い光の中に現われたのは、アーロン。
だが光は収まらない。
それどころか、その光は膨張でもしているのか、どんどんその容量を大きくしていく。
アーロンの姿、体全部をすっかり包み込んで、それでも尚その大きさを増していく。
「ジェクト!」
この隙に、と私は己を奮い立たせてなんとかジェクトの側まで走り寄る。
動きの無いジェクトにそっと触れる。
もう既に命の無い自分たちでは、心臓の鼓動を確かめるなんて愚かな行為でしかない。
だが、まだそこに姿を保っていられるということはそこにまだ魂が繋ぎとめられていると言う事。
「ジェクト!!」
声を掛けてなんとか意識を取り戻させようとする。
ジェクトの反応が無い。
声を掛けても体を揺すってみても、目を覚ます気配が無い。
自分が今逃れてきた方向を確認するように目を向ける。
黒い禍々しい光に包まれた若い姿のアーロンが、そこで立ち止まったまま僅かに身を俯けているようにも見える。
私はすぐに視線をジェクトに戻した。
そして再び名を呼ぶ。
ふと気が付いた。
ジェクトの体から幻光虫が1つ飛び出した。
フワリと舞い上がったそれは、私の背後で立つあの男の元に近寄っていく。
目でしばらく追って、再び視線を戻したところでまた1つ、淡い光が舞い上がる。
はっとした。
私の体から流れ続ける血液も、私の体を離れた瞬間に光となって舞い上がる。
それらは皆、一連のように同じところに集まっていく。
いや、集められていく。
私やジェクト、そして恐らくはもっとたくさんのべつのところから集めたであろう幻光虫をその身に取り込んだ、この男。
どれほどの量を取り込んだのかなんて、わからない。
だが、アーロンの体を包み込んでいた光は、彼の体よりも遥かに大きさを増して膨らみ続けている。
その光がアーロンを中心にして左右に2つに分かれて、そして光の中に更に黒い物体を映し出す。
人間の大きさや形とは明らかに異なった黒い影。
光が影に吸い込まれるように収束していく。
それが収まる頃、若い姿をしたアーロンがほっとしたように溜息を零した。
そして私の顔を見て口元を歪ませる。
彼の背後に現れた、大きな魔物2体と一緒に。
→
11,dec,2011
「…こんな姿にしたのは、お前だ、ラフテル…」
喉の奥にも血液が流れ込んでいるのだろう、まともな声ではなかった。
これが誰なのかなんて、知らない。
だが、名を呼んだ。
私の名を…。
彼に一体何があったのか、何が起こったのかなんてわからない。
私に何を求めているんだ?
「…お、おまえが…、あ、ああ……、いな、ければ…、シン、……たお、さ……」
「…?」
頭を半分失っても尚、この男は私に歩み寄ってくる。
足取りはしっかりしたものとは言えないが、それでも動いている死体のように1歩、また1歩と足を進めてくる。
自分はもう、死んでいる人間だ。
人を、命を殺めたこともある。
こんな姿になった人間を目の当たりにしたことも何度もある。
それなのに、今目の前にいて私に向かってくるこの姿を見て、素直に怖いと思う。
恐怖に心を乗っ取られそうだ。
彼がこの姿になったのは、私のせい。
こいつは確かにそう言った。
……私は彼を知らないと言うのに…
男の姿がまた幻光に包まれていく。
幻光の黒い光の中に現われたのは、アーロン。
だが光は収まらない。
それどころか、その光は膨張でもしているのか、どんどんその容量を大きくしていく。
アーロンの姿、体全部をすっかり包み込んで、それでも尚その大きさを増していく。
「ジェクト!」
この隙に、と私は己を奮い立たせてなんとかジェクトの側まで走り寄る。
動きの無いジェクトにそっと触れる。
もう既に命の無い自分たちでは、心臓の鼓動を確かめるなんて愚かな行為でしかない。
だが、まだそこに姿を保っていられるということはそこにまだ魂が繋ぎとめられていると言う事。
「ジェクト!!」
声を掛けてなんとか意識を取り戻させようとする。
ジェクトの反応が無い。
声を掛けても体を揺すってみても、目を覚ます気配が無い。
自分が今逃れてきた方向を確認するように目を向ける。
黒い禍々しい光に包まれた若い姿のアーロンが、そこで立ち止まったまま僅かに身を俯けているようにも見える。
私はすぐに視線をジェクトに戻した。
そして再び名を呼ぶ。
ふと気が付いた。
ジェクトの体から幻光虫が1つ飛び出した。
フワリと舞い上がったそれは、私の背後で立つあの男の元に近寄っていく。
目でしばらく追って、再び視線を戻したところでまた1つ、淡い光が舞い上がる。
はっとした。
私の体から流れ続ける血液も、私の体を離れた瞬間に光となって舞い上がる。
それらは皆、一連のように同じところに集まっていく。
いや、集められていく。
私やジェクト、そして恐らくはもっとたくさんのべつのところから集めたであろう幻光虫をその身に取り込んだ、この男。
どれほどの量を取り込んだのかなんて、わからない。
だが、アーロンの体を包み込んでいた光は、彼の体よりも遥かに大きさを増して膨らみ続けている。
その光がアーロンを中心にして左右に2つに分かれて、そして光の中に更に黒い物体を映し出す。
人間の大きさや形とは明らかに異なった黒い影。
光が影に吸い込まれるように収束していく。
それが収まる頃、若い姿をしたアーロンがほっとしたように溜息を零した。
そして私の顔を見て口元を歪ませる。
彼の背後に現れた、大きな魔物2体と一緒に。
→
11,dec,2011