第1章【2年後のお話】
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花畑の真ん中に立って、なんとなく上空を飛び回る幻光虫の群れを眺めていると、背後から草花を踏みしめる足音が聞こえた。
はっとして後ろを振り返る。
昨日見たままの、若いアーロンがやはり柔らかな笑みを湛えた表情で私を見つめていた。
あの時のままの姿のはずなのに、当時は決して見ることの無かったこんな笑顔で私の名を呼ぶ。
もうそれだけで胸が高鳴ってしまう。
こんな、年頃の少女のような感覚をまた味わうことになるなんて、自分はどうかしてしまったんじゃないだろうかと思ってしまう。
心臓がばくばくと早鐘を打ち、顔がかっと熱くなるのを感じる。
見つめ続けることが恥ずかしくて、すぐに後ろを向いてしまう。
「…あ、アーロン」
「ラフテル、よかった。…来てくれたか」
「今日、ブラスカと出かけるんじゃ、なかったのか…?」
「ブラスカ様と…? どこに?」
…“様”!?
今、アーロンはブラスカを様付けで呼んだりしない。
当時は、いつもブラスカに様はいらないと言われていたのに、結局ブラスカがシンを倒すまでその癖は治らなかった。
だが、今ここにいるアーロンは……
「そんな約束はしていないが?」
言葉と共に、足音が近付いてくる。
「…昨日、言っただろ? ガンドフ様と会う、って…」
「ガンドフ様…、そうか、ガンドフ様もいらっしゃるのか。一度お会いしてみたいな」
「あれからどれくらい経ったんだ」
私はアーロンと2人並んで花畑をゆっくりと歩きながら話をしている。
こんな風に隣に並んで歩くなんて、当時では考えられなかった。
だが、ユウナ達と共に旅をしていた頃は、私は必ずと言っていいほどアーロンの右隣に立って歩いていた。
アーロンは、右側が見えないから…
でも今、アーロンは私の右側にいる。
なぜかすごく新鮮で不思議な気持ちになる。
この角度から見る若いアーロンの顔が物凄く精悍に見えた。
「ブラスカがシンを倒してから、スピラは12年が過ぎた」
「お前はどうしてここにいるんだ? お前はあの時、生き延びたはずだろう」
「…うん、ちょっと、命を削ることをしてしまって…」
「何をしたんだ?」
やっぱり、このアーロンは、違う。
私が今ここにいるはずがないと思っている。
「ユウナたちと旅をしたことは、覚えているか?」
「…ユウナ? ……ブラスカ様の、ご息女、か?」
「じゃあ、ティーダのことは?」
「…?誰だ?」
「……ジェクトの、息子だ」
「ジェクトの!? ……あぁ、泣き虫だとかいう息子か」
ティーダを、知らない…?ザナルカンドへは行っていないのか。
たくさん話をした。
この話し方、言動、そして記憶。
全てがアーロン本人であることを物語っている。
ただ・・・
ただ、まるで時空を越えてきたように、ブラスカ達と旅をした直後の記憶は無く見た目も当時のまま。
そしてこの笑顔。
この柔らかい雰囲気だけは、違う人物なのだと思わせる。
だから混乱する。
本当にこれは本人なのか、それとも違うのか。
当時、この姿だった頃のアーロンに、私はこんな感情を抱いたことは無い。
むしろ、逆だ。
憎むべき相手だとすら思っていた。
きっと今のアーロンもこの目の前にいるアーロンも、そのことの記憶はないだろう。
それを覚えているのは、私だけ。
わざわざ話すこともない。
それなのに、心惹かれる。
そして同時に、今のアーロンを私はどう思っているのか分からなくなった。
私の時間を、あいつは俺のものと言った。だから一緒にいる。
でも、私は、本当はどう思ってたんだろう?
今ここにいるアーロンの近くで、私は胸を高鳴らせている。
当時は決して感じなかった、有り得ない感情が私を支配している。
こうしていることが、心地よい。
→
26,jun,2011
花畑の真ん中に立って、なんとなく上空を飛び回る幻光虫の群れを眺めていると、背後から草花を踏みしめる足音が聞こえた。
はっとして後ろを振り返る。
昨日見たままの、若いアーロンがやはり柔らかな笑みを湛えた表情で私を見つめていた。
あの時のままの姿のはずなのに、当時は決して見ることの無かったこんな笑顔で私の名を呼ぶ。
もうそれだけで胸が高鳴ってしまう。
こんな、年頃の少女のような感覚をまた味わうことになるなんて、自分はどうかしてしまったんじゃないだろうかと思ってしまう。
心臓がばくばくと早鐘を打ち、顔がかっと熱くなるのを感じる。
見つめ続けることが恥ずかしくて、すぐに後ろを向いてしまう。
「…あ、アーロン」
「ラフテル、よかった。…来てくれたか」
「今日、ブラスカと出かけるんじゃ、なかったのか…?」
「ブラスカ様と…? どこに?」
…“様”!?
今、アーロンはブラスカを様付けで呼んだりしない。
当時は、いつもブラスカに様はいらないと言われていたのに、結局ブラスカがシンを倒すまでその癖は治らなかった。
だが、今ここにいるアーロンは……
「そんな約束はしていないが?」
言葉と共に、足音が近付いてくる。
「…昨日、言っただろ? ガンドフ様と会う、って…」
「ガンドフ様…、そうか、ガンドフ様もいらっしゃるのか。一度お会いしてみたいな」
「あれからどれくらい経ったんだ」
私はアーロンと2人並んで花畑をゆっくりと歩きながら話をしている。
こんな風に隣に並んで歩くなんて、当時では考えられなかった。
だが、ユウナ達と共に旅をしていた頃は、私は必ずと言っていいほどアーロンの右隣に立って歩いていた。
アーロンは、右側が見えないから…
でも今、アーロンは私の右側にいる。
なぜかすごく新鮮で不思議な気持ちになる。
この角度から見る若いアーロンの顔が物凄く精悍に見えた。
「ブラスカがシンを倒してから、スピラは12年が過ぎた」
「お前はどうしてここにいるんだ? お前はあの時、生き延びたはずだろう」
「…うん、ちょっと、命を削ることをしてしまって…」
「何をしたんだ?」
やっぱり、このアーロンは、違う。
私が今ここにいるはずがないと思っている。
「ユウナたちと旅をしたことは、覚えているか?」
「…ユウナ? ……ブラスカ様の、ご息女、か?」
「じゃあ、ティーダのことは?」
「…?誰だ?」
「……ジェクトの、息子だ」
「ジェクトの!? ……あぁ、泣き虫だとかいう息子か」
ティーダを、知らない…?ザナルカンドへは行っていないのか。
たくさん話をした。
この話し方、言動、そして記憶。
全てがアーロン本人であることを物語っている。
ただ・・・
ただ、まるで時空を越えてきたように、ブラスカ達と旅をした直後の記憶は無く見た目も当時のまま。
そしてこの笑顔。
この柔らかい雰囲気だけは、違う人物なのだと思わせる。
だから混乱する。
本当にこれは本人なのか、それとも違うのか。
当時、この姿だった頃のアーロンに、私はこんな感情を抱いたことは無い。
むしろ、逆だ。
憎むべき相手だとすら思っていた。
きっと今のアーロンもこの目の前にいるアーロンも、そのことの記憶はないだろう。
それを覚えているのは、私だけ。
わざわざ話すこともない。
それなのに、心惹かれる。
そして同時に、今のアーロンを私はどう思っているのか分からなくなった。
私の時間を、あいつは俺のものと言った。だから一緒にいる。
でも、私は、本当はどう思ってたんだろう?
今ここにいるアーロンの近くで、私は胸を高鳴らせている。
当時は決して感じなかった、有り得ない感情が私を支配している。
こうしていることが、心地よい。
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26,jun,2011