第4章【不可思議な世界】
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=28=
彼らには、願いがあった。覚悟があった。希望があった。
…私は、私は、もう、諦めていた。
こんな体になって、命を有する時間が無くなって、この先の希望なんてこれっぽっちもなかった。
『どうせ、死ぬから』
仲間たちが必死に戦っているのは、生きるため。
生きて悲しみと戦って、そして真の平和を迎えるため。
そんな先のことを夢見ていけるのは、命を持った人間のみ。
もうそんな平和な時間に生きていることは無いと、私は私の物語を勝手に完結させて、諦めていた。
皆の頑張る姿が、眩しくて、まともに目を合わせられなかった。
かつての仲間であるジェクトに立ち向かわなくてはならなかった、あの日。あの最後の戦い。
ジェクトの息子であるはずの少年でさえ、覚悟を決めていた。
自分の父親に剣を向けた。
己自身で父親を手に掛けた。
彼の心情は計り知れない。
私が父親のように思っていたジェクト。
本当の親子であるジェクトと少年との間に、私は割って入ることなどできない。
私の苦しみは、少年はとっくに乗り越えていたんだ。
私はひたすらもがいていただけだった。
あの時の少年の心意気を、私にも貸して欲しい。
父親のような存在を倒すことさえできない私に、父親である存在を倒せる勇気を、力を!
巨大なジェクトの攻撃を交わすこともできなくなって、私の体は羽虫のように地面に叩きつけられる。
重いものが落ちたときの音と、痛みを感じるまでの時間は僅かにずれがある。
体中が悲鳴を上げる。
内臓が潰される感覚、骨が軋む感覚、血が流れ出る感覚、意識が薄れていく感覚。
自分の意思で体を動かすことができないくせに、一人前にそれらの感覚は私に伝わってくる。
痛い、苦しい! 辛い…
私の攻撃、私が受ける攻撃、それらで私とジェクトから飛び散った幻光虫は消えることも無く辺りを漂っている。
いつの間にか幻光虫で一杯になったこの暗い空間で、幻想的な不気味な光景が私たちを包み込んでいた。
私は叩きつけられた体を何とか起こし、ふらつく足でそれでもしっかりと地面を踏みしめた。
額から流れる血が頬を伝って顎からポタリと零れた。
零れた血の雫は地に付く前に幻光虫へと変わる。
もうやめて欲しいと願うのに、もう動かないで欲しいと思うのに、私の体はそれでもジェクトに向かっていく。
斬りつけたジェクトの体から離れた肉片が、一瞬だけその姿を留めた後、やはり同じように幻光虫に変わる。
そうして生み出された夥しい数の幻光虫は、辺り一体を淡い光で照らしている。
いつまで続けなくてはならないのか。
どうしてこんな戦いをしなくてはならないのか。
私もジェクトも、一体どうしてしまったのか。
……何もわからない。
わからないまま、不毛な戦いを延々と繰り返している。
もう掠れた声しか出ないのかもしれない。
喉の痛みは痛みを通り越して息をすることさえ難しい。
誰にも聞こえない、何も聞こえない、それでも私は叫び続けている。
ジェクトの名を……
→第5章
8,nov,2011
彼らには、願いがあった。覚悟があった。希望があった。
…私は、私は、もう、諦めていた。
こんな体になって、命を有する時間が無くなって、この先の希望なんてこれっぽっちもなかった。
『どうせ、死ぬから』
仲間たちが必死に戦っているのは、生きるため。
生きて悲しみと戦って、そして真の平和を迎えるため。
そんな先のことを夢見ていけるのは、命を持った人間のみ。
もうそんな平和な時間に生きていることは無いと、私は私の物語を勝手に完結させて、諦めていた。
皆の頑張る姿が、眩しくて、まともに目を合わせられなかった。
かつての仲間であるジェクトに立ち向かわなくてはならなかった、あの日。あの最後の戦い。
ジェクトの息子であるはずの少年でさえ、覚悟を決めていた。
自分の父親に剣を向けた。
己自身で父親を手に掛けた。
彼の心情は計り知れない。
私が父親のように思っていたジェクト。
本当の親子であるジェクトと少年との間に、私は割って入ることなどできない。
私の苦しみは、少年はとっくに乗り越えていたんだ。
私はひたすらもがいていただけだった。
あの時の少年の心意気を、私にも貸して欲しい。
父親のような存在を倒すことさえできない私に、父親である存在を倒せる勇気を、力を!
巨大なジェクトの攻撃を交わすこともできなくなって、私の体は羽虫のように地面に叩きつけられる。
重いものが落ちたときの音と、痛みを感じるまでの時間は僅かにずれがある。
体中が悲鳴を上げる。
内臓が潰される感覚、骨が軋む感覚、血が流れ出る感覚、意識が薄れていく感覚。
自分の意思で体を動かすことができないくせに、一人前にそれらの感覚は私に伝わってくる。
痛い、苦しい! 辛い…
私の攻撃、私が受ける攻撃、それらで私とジェクトから飛び散った幻光虫は消えることも無く辺りを漂っている。
いつの間にか幻光虫で一杯になったこの暗い空間で、幻想的な不気味な光景が私たちを包み込んでいた。
私は叩きつけられた体を何とか起こし、ふらつく足でそれでもしっかりと地面を踏みしめた。
額から流れる血が頬を伝って顎からポタリと零れた。
零れた血の雫は地に付く前に幻光虫へと変わる。
もうやめて欲しいと願うのに、もう動かないで欲しいと思うのに、私の体はそれでもジェクトに向かっていく。
斬りつけたジェクトの体から離れた肉片が、一瞬だけその姿を留めた後、やはり同じように幻光虫に変わる。
そうして生み出された夥しい数の幻光虫は、辺り一体を淡い光で照らしている。
いつまで続けなくてはならないのか。
どうしてこんな戦いをしなくてはならないのか。
私もジェクトも、一体どうしてしまったのか。
……何もわからない。
わからないまま、不毛な戦いを延々と繰り返している。
もう掠れた声しか出ないのかもしれない。
喉の痛みは痛みを通り越して息をすることさえ難しい。
誰にも聞こえない、何も聞こえない、それでも私は叫び続けている。
ジェクトの名を……
→第5章
8,nov,2011