第4章【不可思議な世界】
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「(ジェクト――――――――っっ!!!)」
変化が完了したのか、ジェクトの動きが止まる。
黒い靄に包まれたまま、顔の前でクロスさせた両腕はそのままに、一瞬の静寂が辺りを包む。
ジェクトがその太い両腕を勢いよく左右に開く。
その動きで彼を包み込んでいた黒い靄が一気に霧散し、ジェクトが天に向かって吼えた。
獣のように大気を震わす声で、まさに、吼えたのだ。
ビリビリと伝わってくる空気の震えを、私も感じることができた。
正直、恐ろしいと感じた。
また、こんな場面になるなんて…
また、ジェクトと戦うことになるなんて…
また、彼を倒さなくてはならないなんて…
2年前のあの日。
ユウナたちと旅をして、そして臨んだ最後の戦い。
あの日もこうしてジェクトの召喚獣に立ち向かった。
私は戦うことができなくて、どうしてもジェクトであるということが割り切れなくて、戦えなかった。
もう二度とそんな苦しみを味わいたくは無かったのに、それなのに…
目の前には、ジェクト。
召喚獣となったジェクトが立ちはだかっている。
私の体が、動く。
私の意志とは無関係に、この巨大なジェクトに向かっていく。
巨大な召喚獣。
召喚士がザナルカンドを目指して旅をするスピラ各地に存在する召喚獣の比ではない。
召喚士と、召喚獣となるべく祈り子となった人物との絆の深さでその強さは決まる。
多くの召喚士の祈りを受け、心を通わせただけの召喚獣と、深い絆で結ばれた1対1の究極召喚獣。
どれだけ、ブラスカとジェクトは深い絆で結ばれていたのだろうか。
ジェクトのガードとしての力の大きさ、そして召喚士としてのブラスカの能力の高さ。
それらが全て、この目の前にいる巨大な召喚獣としての結果だ。
こうして対峙しているだけで、目の前にいるというだけで足が竦む。
眩暈を覚える。
立ち向かうなど、到底できるものではない。
これがジェクトであるということを差し置いたとしても、この巨大な召喚獣を前に、私など本当にちっぽけな存在でしかない。
勝てる勝てない以前の問題だ。
立ち向かうことすら無理な話なのだ。
…それなのに。
私の意志とは関係なく、私の体はその手に武器を握り締め、そしてジェクトに向かっていこうとしている。
それがどれだけ愚かな行為なのか、戦う前から分かりきっていること。
私は私を止めたくて、でもそんなこと、できるわけもなくて…
喉から搾り出される悲痛な叫びは、誰の耳にも届くことも無く、ただ私の喉を痛めるだけ。
思い通りにならない自分の体を勝手に動かされることの悔しさが、ますます私を追い詰めていく。
見たくも無い光景を無理に見せられて、おかしくならないほうがおかしいと感じる。
ジェクトに向ける刃も魔法も、何一つジェクトにダメージを与えることなどできるはずも無く、小さな虫を追い払うように払いのけられる。
私自身の体も、すでに幻光虫が集まって作られた空蝉。
受けたダメージは生身の人間と同じものだが、そこから飛び散る肉片や血は小さな幻光虫となって消えていく。
それは召喚獣であるジェクトも同じ。
私の体が与える小さな攻撃でも、彼の体からはその傷に合わせた幻光虫が舞い上がる。
まだ生きていた頃、スピラという世界で命を有していたあの頃。
私は自分の強さに溺れていた。
全ての魔物とまでは行かないにしろ、ある程度の魔物ならば自分ひとりで片を付けられるほどだった。
小さな小太刀だけの武器で、溢れるほどの魔力で、私はたった1人で10年という年月を過ごしてきたことに天狗になっていた。
自分の強さに過信を持ちすぎていた。
ユウナたちと旅をすることになった頃も、どんな魔物が現れてもそいつの弱点を皆に教えてスムーズに戦闘が進めるようにしていた。
仲間達にどう戦うのかサポートしてきた。
でもそれらは全て、私自身のエゴ。
そんなことをしてもらわなくても、仲間たちは仲間たち同士で助け合い、力を1つにして心を通じ合わせていける。
私はただそれを遠くで眺めて羨ましがっていただけ。
→
5,nov,2011
「(ジェクト――――――――っっ!!!)」
変化が完了したのか、ジェクトの動きが止まる。
黒い靄に包まれたまま、顔の前でクロスさせた両腕はそのままに、一瞬の静寂が辺りを包む。
ジェクトがその太い両腕を勢いよく左右に開く。
その動きで彼を包み込んでいた黒い靄が一気に霧散し、ジェクトが天に向かって吼えた。
獣のように大気を震わす声で、まさに、吼えたのだ。
ビリビリと伝わってくる空気の震えを、私も感じることができた。
正直、恐ろしいと感じた。
また、こんな場面になるなんて…
また、ジェクトと戦うことになるなんて…
また、彼を倒さなくてはならないなんて…
2年前のあの日。
ユウナたちと旅をして、そして臨んだ最後の戦い。
あの日もこうしてジェクトの召喚獣に立ち向かった。
私は戦うことができなくて、どうしてもジェクトであるということが割り切れなくて、戦えなかった。
もう二度とそんな苦しみを味わいたくは無かったのに、それなのに…
目の前には、ジェクト。
召喚獣となったジェクトが立ちはだかっている。
私の体が、動く。
私の意志とは無関係に、この巨大なジェクトに向かっていく。
巨大な召喚獣。
召喚士がザナルカンドを目指して旅をするスピラ各地に存在する召喚獣の比ではない。
召喚士と、召喚獣となるべく祈り子となった人物との絆の深さでその強さは決まる。
多くの召喚士の祈りを受け、心を通わせただけの召喚獣と、深い絆で結ばれた1対1の究極召喚獣。
どれだけ、ブラスカとジェクトは深い絆で結ばれていたのだろうか。
ジェクトのガードとしての力の大きさ、そして召喚士としてのブラスカの能力の高さ。
それらが全て、この目の前にいる巨大な召喚獣としての結果だ。
こうして対峙しているだけで、目の前にいるというだけで足が竦む。
眩暈を覚える。
立ち向かうなど、到底できるものではない。
これがジェクトであるということを差し置いたとしても、この巨大な召喚獣を前に、私など本当にちっぽけな存在でしかない。
勝てる勝てない以前の問題だ。
立ち向かうことすら無理な話なのだ。
…それなのに。
私の意志とは関係なく、私の体はその手に武器を握り締め、そしてジェクトに向かっていこうとしている。
それがどれだけ愚かな行為なのか、戦う前から分かりきっていること。
私は私を止めたくて、でもそんなこと、できるわけもなくて…
喉から搾り出される悲痛な叫びは、誰の耳にも届くことも無く、ただ私の喉を痛めるだけ。
思い通りにならない自分の体を勝手に動かされることの悔しさが、ますます私を追い詰めていく。
見たくも無い光景を無理に見せられて、おかしくならないほうがおかしいと感じる。
ジェクトに向ける刃も魔法も、何一つジェクトにダメージを与えることなどできるはずも無く、小さな虫を追い払うように払いのけられる。
私自身の体も、すでに幻光虫が集まって作られた空蝉。
受けたダメージは生身の人間と同じものだが、そこから飛び散る肉片や血は小さな幻光虫となって消えていく。
それは召喚獣であるジェクトも同じ。
私の体が与える小さな攻撃でも、彼の体からはその傷に合わせた幻光虫が舞い上がる。
まだ生きていた頃、スピラという世界で命を有していたあの頃。
私は自分の強さに溺れていた。
全ての魔物とまでは行かないにしろ、ある程度の魔物ならば自分ひとりで片を付けられるほどだった。
小さな小太刀だけの武器で、溢れるほどの魔力で、私はたった1人で10年という年月を過ごしてきたことに天狗になっていた。
自分の強さに過信を持ちすぎていた。
ユウナたちと旅をすることになった頃も、どんな魔物が現れてもそいつの弱点を皆に教えてスムーズに戦闘が進めるようにしていた。
仲間達にどう戦うのかサポートしてきた。
でもそれらは全て、私自身のエゴ。
そんなことをしてもらわなくても、仲間たちは仲間たち同士で助け合い、力を1つにして心を通じ合わせていける。
私はただそれを遠くで眺めて羨ましがっていただけ。
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5,nov,2011