第4章【不可思議な世界】
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=26=
自分の目で世界が見える。
体が動いているのが分かる。
だがそれは、決して自分自身の意思によるものではない。
動かしたくないのに、勝手に動いてしまう自分の体に葛藤を覚える。
声を出したいのに、叫んでいるはずなのに、私の体からは何も発せられない。
自分の中から自分自身の起こす行動を見ていることしかできない。
自分の頭の中の空間では、大勢の人間のうめき声が一斉に響いているようにおかしな声とも音とも取れる何かが聞こえている。
そのせいで、自分が発した声が自分で聞き取れない。
…おかしくなりそうだ。
目の前に、やはり苦しむジェクトがいる。
それを見て何もせずにただじっと彼を見つめ続けているアーロンがいる。
アーロンがジェクトに何か言っているようだったが、今の私には何も聞こえない。
聞き取ることはできない。
私は、いや、私の体はジェクトに近づいていく。
いつの間に握ったのか、片手に私の武器である1本の小太刀を構えて。
苦しみ続けて身を悶えているジェクトに向かって、私の体は1歩、また1歩と近づいていく。
私の体が何をするつもりなのか、すぐに理解できた。
このまま、ジェクトを…!
なんとかして阻止しようと必死にもがいてみる。
抗ってみようとする。
だが私の意志などお構い無しに私の体は勝手に動いていく。
私という存在などまるで初めからいるわけもないのだと訴えているかのように。
ジェクトの体が光に包まれていく。
幻光虫が放つにじ色の美しい光などではなく、暗い、黒い、不気味な光。
あの花畑にいたアーロンの背に浮かんで見えた靄の塊のような黒い光。
ジェクトの体そのものがその黒い幻光虫の塊であることを示しているように、ジェクトの体にあわせて光が流れる。
ジェクトは更に苦しみ続ける。
頭を抱え、体を揺らし、声を上げてもがき苦しむ彼が今、目の前にいると言うのに、その姿があると言うのに、私はどこか別の次元から見つめているように感じている。
ジェクトの声は聞こえない。
私自身の声も聞こえない。
ただ人々の阿鼻叫喚の悲痛な音が大音量で頭の中に響いている。
まともに音を感知することはできないが、自分自身でコントロールすらできないままの瞳に写るものを見ることだけはできる。
いや、それしかできない。
見たくも無いのに見せられている。
自分の大切な人が苦しんでいる姿を、私に私の体が見せている。
ジェクトの体の黒い光はどんどん強さを増していく。
体全体が光に包まれ、やがて光は溢れ出るようにジェクトの体から四方へと放出される。
苦しみにもがいていたジェクトだったが、地にその体を落とすことはしなかった。
必死に己の足でなんとかかろうじてバランスを取っていた。
大きく開いた両足はしっかりと体を地の上に固定し、彼本来の力強さを現していた。
両腕を顔の前でクロスさせる。
過去に目にしたことのあるそのポーズ。
何が起こるのかをすぐに理解する。
私はまた必死に制止の声を張り上げた。
私の声など届くはずもないと分かっているのに、私自身にさえ聞こえない声を張り上げる。
ジェクトの胸が明るく輝きだす。
黒い光に包まれた彼の体は、その1点だけのまぶしい光を更に強調させているようだ。
ジェクトの体が変化し始める。
一体どんな仕組みなのか分からない。
その体はみるみる体積を増していき、大きくなっていく。
不気味な黒い光は靄となって彼の体を包み込んでいく。
自分の思い通りに動いてくれない私の体は、ジェクトの急激な変化に多少なりとも驚きを示したのか、数歩後退した。
そして見上げる。
もう、二度と見ることは無いだろうと思っていた、最強の召喚獣。
……最悪だ。
→
30,oct,2011
自分の目で世界が見える。
体が動いているのが分かる。
だがそれは、決して自分自身の意思によるものではない。
動かしたくないのに、勝手に動いてしまう自分の体に葛藤を覚える。
声を出したいのに、叫んでいるはずなのに、私の体からは何も発せられない。
自分の中から自分自身の起こす行動を見ていることしかできない。
自分の頭の中の空間では、大勢の人間のうめき声が一斉に響いているようにおかしな声とも音とも取れる何かが聞こえている。
そのせいで、自分が発した声が自分で聞き取れない。
…おかしくなりそうだ。
目の前に、やはり苦しむジェクトがいる。
それを見て何もせずにただじっと彼を見つめ続けているアーロンがいる。
アーロンがジェクトに何か言っているようだったが、今の私には何も聞こえない。
聞き取ることはできない。
私は、いや、私の体はジェクトに近づいていく。
いつの間に握ったのか、片手に私の武器である1本の小太刀を構えて。
苦しみ続けて身を悶えているジェクトに向かって、私の体は1歩、また1歩と近づいていく。
私の体が何をするつもりなのか、すぐに理解できた。
このまま、ジェクトを…!
なんとかして阻止しようと必死にもがいてみる。
抗ってみようとする。
だが私の意志などお構い無しに私の体は勝手に動いていく。
私という存在などまるで初めからいるわけもないのだと訴えているかのように。
ジェクトの体が光に包まれていく。
幻光虫が放つにじ色の美しい光などではなく、暗い、黒い、不気味な光。
あの花畑にいたアーロンの背に浮かんで見えた靄の塊のような黒い光。
ジェクトの体そのものがその黒い幻光虫の塊であることを示しているように、ジェクトの体にあわせて光が流れる。
ジェクトは更に苦しみ続ける。
頭を抱え、体を揺らし、声を上げてもがき苦しむ彼が今、目の前にいると言うのに、その姿があると言うのに、私はどこか別の次元から見つめているように感じている。
ジェクトの声は聞こえない。
私自身の声も聞こえない。
ただ人々の阿鼻叫喚の悲痛な音が大音量で頭の中に響いている。
まともに音を感知することはできないが、自分自身でコントロールすらできないままの瞳に写るものを見ることだけはできる。
いや、それしかできない。
見たくも無いのに見せられている。
自分の大切な人が苦しんでいる姿を、私に私の体が見せている。
ジェクトの体の黒い光はどんどん強さを増していく。
体全体が光に包まれ、やがて光は溢れ出るようにジェクトの体から四方へと放出される。
苦しみにもがいていたジェクトだったが、地にその体を落とすことはしなかった。
必死に己の足でなんとかかろうじてバランスを取っていた。
大きく開いた両足はしっかりと体を地の上に固定し、彼本来の力強さを現していた。
両腕を顔の前でクロスさせる。
過去に目にしたことのあるそのポーズ。
何が起こるのかをすぐに理解する。
私はまた必死に制止の声を張り上げた。
私の声など届くはずもないと分かっているのに、私自身にさえ聞こえない声を張り上げる。
ジェクトの胸が明るく輝きだす。
黒い光に包まれた彼の体は、その1点だけのまぶしい光を更に強調させているようだ。
ジェクトの体が変化し始める。
一体どんな仕組みなのか分からない。
その体はみるみる体積を増していき、大きくなっていく。
不気味な黒い光は靄となって彼の体を包み込んでいく。
自分の思い通りに動いてくれない私の体は、ジェクトの急激な変化に多少なりとも驚きを示したのか、数歩後退した。
そして見上げる。
もう、二度と見ることは無いだろうと思っていた、最強の召喚獣。
……最悪だ。
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30,oct,2011