第4章【不可思議な世界】
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=24=
ジェクトの言葉に違和感を覚える。
先程は黒い煙みたいなもの、と言った。
なのに、今はそれが誰かであるような言葉…
「あいつ、って…?」
「オレの頭ん中に入ってくる奴だ。勝手にひとの頭に入り込んで何か言ってやがって、いつの間にかオレの体を勝手に使いやがる。
ったく、冗談じゃねーぜ!オレの体はオレのもんだっての! ………っ!!」
「?」
「…や、やべえ…」
「ジェクト?」
突然、ジェクトが自分の頭を両手で抱え込んだ。
体をくの字に折り曲げて何かをこらえているようにも見える。
いや、苦しんでいた。
突然のことに私は理解できずにただ、目の前の人物の名を呼ぶだけ。
「…ラフテル、すぐ、オレから、離れろ。 …ここから、逃げろ…!」
「え、ど、どういう意味?」
「いいから早くオレから離れるんだ! …また、アレが…!!」
「ジェクト…、…ジェクト!!」
「行け!早く!逃げっ……っ!! …う……うぅ… …っ…くっ、くそ…、ラフテル、いいから、…行け!!オレから逃げろ!!」
「ジェクト!でも!!」
苦しみに耐えながら、ジェクトは必死に私にここから逃げるように叫んだ。
だが、そんな苦しんでいる姿を見せられてすぐにここから立ち去ることなど、できるはずも無い。
一体何が起こったのかもわからず、自分を助けてくれた人物が自分の目の前で苦しんでいたなら、どうするべきだ?
逃げろと言われてすぐにそうかと従うわけにはいかない。
ジェクトを、何とかして助けてやりたい。
逃げるなら、共に…!!
「なんだ、こんなところにいたのか」
「!!」
聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえた。
逃げろと言いながら苦しむジェクトに手を添えたまま、私は声のしたほうに目を向ける。
「…アーロン」
「……くっ、て、てめえ…! オレに、何を…!」
「ラフテル、言っただろう、お前の力を貸して欲しいと。お前はいいと言ってくれたじゃないか」
苦しみに悶えるジェクトがすぐ側にいるというのに、若い姿のアーロンは全く関心が無いのか、それとも敢えて無視しているのか、そちらを見向きもしない。
私とジェクトがいる位置から少し距離があるというのに、声が、彼の声がすぐ近くで聞こえる。
まるで耳元で囁かれているかのように。
「どうして素直に俺の言うことが聞けないんだ」
「…あ、ア、アーロン…」
「ラフテル、俺はお前をこんなに愛しているのに…。お前だってそうだろ? 俺は、お前の力になったじゃないか。今度はお前の番だ。
難しいことは何も無い。お前の力で、世界をきれいにするだけだ。この汚い薄汚れたおぞましい世界全てをきれいに…。
その為にお前の力を貸して欲しいんだ。 …わかるだろう?」
ゆっくりとこちらに足を進めながら、アーロンは私を諭すように言葉を紡ぐ。
優しい笑顔を浮かべて、柔らかい口調でゆっくりと。
「…わ、わからない。きれいに、って、一体どういう意味? 私に、何をさせたいの? …ジェクトに何をしたの? …アーロン!!」
「………」
私の問いには、何も答えない。
ただゆっくりとこちらに向かって歩みを進めてくるだけ。
「…こ、来ないで…」
「ラフテル…」
ジェクトに添えていたはずの手はいつの間にか離れ、私は体をすっかりアーロンの方向に向けて直立していた。
私に向かって近づいてくる彼を迎えるように、私はその場でじっとその到着を待った。
私の後ろで苦しんでいたはずのジェクトの声が、私の名を呼ぶその声が次第に遠くなっていく。
もう命の無いジェクトよりも、目の前からこちらに近づいてくる存在の熱を、温かみを感じてしまう。
頭の中では異を唱えているはずなのに、それでもどうしても彼に惹かれてしまう。
私は、どうしてしまったんだ。どうすればいいんだ……
→
23,oct,2011
ジェクトの言葉に違和感を覚える。
先程は黒い煙みたいなもの、と言った。
なのに、今はそれが誰かであるような言葉…
「あいつ、って…?」
「オレの頭ん中に入ってくる奴だ。勝手にひとの頭に入り込んで何か言ってやがって、いつの間にかオレの体を勝手に使いやがる。
ったく、冗談じゃねーぜ!オレの体はオレのもんだっての! ………っ!!」
「?」
「…や、やべえ…」
「ジェクト?」
突然、ジェクトが自分の頭を両手で抱え込んだ。
体をくの字に折り曲げて何かをこらえているようにも見える。
いや、苦しんでいた。
突然のことに私は理解できずにただ、目の前の人物の名を呼ぶだけ。
「…ラフテル、すぐ、オレから、離れろ。 …ここから、逃げろ…!」
「え、ど、どういう意味?」
「いいから早くオレから離れるんだ! …また、アレが…!!」
「ジェクト…、…ジェクト!!」
「行け!早く!逃げっ……っ!! …う……うぅ… …っ…くっ、くそ…、ラフテル、いいから、…行け!!オレから逃げろ!!」
「ジェクト!でも!!」
苦しみに耐えながら、ジェクトは必死に私にここから逃げるように叫んだ。
だが、そんな苦しんでいる姿を見せられてすぐにここから立ち去ることなど、できるはずも無い。
一体何が起こったのかもわからず、自分を助けてくれた人物が自分の目の前で苦しんでいたなら、どうするべきだ?
逃げろと言われてすぐにそうかと従うわけにはいかない。
ジェクトを、何とかして助けてやりたい。
逃げるなら、共に…!!
「なんだ、こんなところにいたのか」
「!!」
聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえた。
逃げろと言いながら苦しむジェクトに手を添えたまま、私は声のしたほうに目を向ける。
「…アーロン」
「……くっ、て、てめえ…! オレに、何を…!」
「ラフテル、言っただろう、お前の力を貸して欲しいと。お前はいいと言ってくれたじゃないか」
苦しみに悶えるジェクトがすぐ側にいるというのに、若い姿のアーロンは全く関心が無いのか、それとも敢えて無視しているのか、そちらを見向きもしない。
私とジェクトがいる位置から少し距離があるというのに、声が、彼の声がすぐ近くで聞こえる。
まるで耳元で囁かれているかのように。
「どうして素直に俺の言うことが聞けないんだ」
「…あ、ア、アーロン…」
「ラフテル、俺はお前をこんなに愛しているのに…。お前だってそうだろ? 俺は、お前の力になったじゃないか。今度はお前の番だ。
難しいことは何も無い。お前の力で、世界をきれいにするだけだ。この汚い薄汚れたおぞましい世界全てをきれいに…。
その為にお前の力を貸して欲しいんだ。 …わかるだろう?」
ゆっくりとこちらに足を進めながら、アーロンは私を諭すように言葉を紡ぐ。
優しい笑顔を浮かべて、柔らかい口調でゆっくりと。
「…わ、わからない。きれいに、って、一体どういう意味? 私に、何をさせたいの? …ジェクトに何をしたの? …アーロン!!」
「………」
私の問いには、何も答えない。
ただゆっくりとこちらに向かって歩みを進めてくるだけ。
「…こ、来ないで…」
「ラフテル…」
ジェクトに添えていたはずの手はいつの間にか離れ、私は体をすっかりアーロンの方向に向けて直立していた。
私に向かって近づいてくる彼を迎えるように、私はその場でじっとその到着を待った。
私の後ろで苦しんでいたはずのジェクトの声が、私の名を呼ぶその声が次第に遠くなっていく。
もう命の無いジェクトよりも、目の前からこちらに近づいてくる存在の熱を、温かみを感じてしまう。
頭の中では異を唱えているはずなのに、それでもどうしても彼に惹かれてしまう。
私は、どうしてしまったんだ。どうすればいいんだ……
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23,oct,2011