第3章【何かがおかしい】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
=19=
真っ暗な世界。
こんな場所は初めて。
いつの間にか自分は地面に腰を落としていたらしい。
真っ黒でごつごつした硬い地面。
こんな岩を、見たことがある。
燃えて爆発した山から吐き出される黒い岩。
それに似た、ぼこぼこと穴の空いた黒くて硬い岩。
次第に目が慣れてきたのか、辺りの景色がどんなものか見えてきた。
私がいるところは、でかい岩の塊の上。
周囲にぐるりと目を向ける。
今立っている足元と同じような岩の塊があちらこちらに浮いている。
それも1つや2つではない。
飛び移ってどこまでも渡って行けそうなほどにたくさんの岩の塊が空を埋めている。
そしてどこから届くのか、ところどころにスポットのように光が降り注いできている。
私は腰を上げて、私をここに導いたものの存在がなくなっていることに気が付いた。
先程力一杯に掴まれた箇所が未だに軽く痺れている。
どんな力だというのだ。
この暗い空間で、自分の置かれた状況を理解しようとして、また、あの寂しいピアノの調べが耳に届く。
きれいなメロディだとは思うが、聞いているとこちらまで心が廃れてしまうような、寂しい音色。
私がいる岩は、他のものと比べても少々大きめのもののようで、先程までいた異界の花畑ほどはあるだろうか。
端から端まで歩いてみたが、特に何かがあるわけでもなく、近くに浮いている岩に飛び移って移動するしか方法はなさそうだ。
たった独り、こんな何も無い真っ暗な空間に放り込まれて、色々と考えない人間はいない。
命があろうが無かろうが、そんなことは関係ない。
私は今、私という意識を持ってここに存在しているのだ。
あの青年の言葉を思い出す。
“きれいにする”
彼はそう言った。
それがどんな意味なのかなんてわからない。
単純に美しい世界にする、なんてことではないということぐらいは理解できる。
ふいに、奴を思い出す。
怪しい笑みと共に奴の言葉を…
“世界を滅ぼし、そして救う”
意味的にはもしかして同じもののように思えた。
つまりは、この世界を、スピラを、消し去ろうとしている、のだろうか。
召喚士とその能力、祈り子という存在に対して異様なまでの思い入れがあるようにも感じた。
彼は一体、何者なのだろうか。
それよりも今は、ここを出ることを考えたほうがよさそうだ。
あの時のアーロンの様子も気にかかる。
今の隻眼のアーロンや祈り子たちの行方も気にかかる。
今この異界に、何が起こっているのか、把握しなくてはならない。
この異界に来る前までは、グアド族の能力の1つであった異界の匂いを感じることができる能力があった。
しかし、自分自身も命を無くし、ここ異界に来てからはその能力がなくなってしまったのか、それとも意味の無いものになったのか、全く役には立たない。
ただ、何かの気配を感じる能力は格段に上がったようだ。
私自身も幻光虫の塊であることがそうさせているのかもしれない。
背後に、何かの気配を感じる。
温かい、柔らかい、どこか懐かしい気配。
はっとして後ろを振り返る。
いつの間にかそこに立っていたのは、見覚えのある人物。
よく日に焼けた逞しい太い腕を胸の前で組んで、威厳を示すように立ちはだかっている。
「ジェクト!」
この暗い空間に一人きりにされて、私は寂しかったのか。
見知った人物に安堵の吐息を漏らしながら何の警戒も無いままに近づいた。
→
3,sep,2011
真っ暗な世界。
こんな場所は初めて。
いつの間にか自分は地面に腰を落としていたらしい。
真っ黒でごつごつした硬い地面。
こんな岩を、見たことがある。
燃えて爆発した山から吐き出される黒い岩。
それに似た、ぼこぼこと穴の空いた黒くて硬い岩。
次第に目が慣れてきたのか、辺りの景色がどんなものか見えてきた。
私がいるところは、でかい岩の塊の上。
周囲にぐるりと目を向ける。
今立っている足元と同じような岩の塊があちらこちらに浮いている。
それも1つや2つではない。
飛び移ってどこまでも渡って行けそうなほどにたくさんの岩の塊が空を埋めている。
そしてどこから届くのか、ところどころにスポットのように光が降り注いできている。
私は腰を上げて、私をここに導いたものの存在がなくなっていることに気が付いた。
先程力一杯に掴まれた箇所が未だに軽く痺れている。
どんな力だというのだ。
この暗い空間で、自分の置かれた状況を理解しようとして、また、あの寂しいピアノの調べが耳に届く。
きれいなメロディだとは思うが、聞いているとこちらまで心が廃れてしまうような、寂しい音色。
私がいる岩は、他のものと比べても少々大きめのもののようで、先程までいた異界の花畑ほどはあるだろうか。
端から端まで歩いてみたが、特に何かがあるわけでもなく、近くに浮いている岩に飛び移って移動するしか方法はなさそうだ。
たった独り、こんな何も無い真っ暗な空間に放り込まれて、色々と考えない人間はいない。
命があろうが無かろうが、そんなことは関係ない。
私は今、私という意識を持ってここに存在しているのだ。
あの青年の言葉を思い出す。
“きれいにする”
彼はそう言った。
それがどんな意味なのかなんてわからない。
単純に美しい世界にする、なんてことではないということぐらいは理解できる。
ふいに、奴を思い出す。
怪しい笑みと共に奴の言葉を…
“世界を滅ぼし、そして救う”
意味的にはもしかして同じもののように思えた。
つまりは、この世界を、スピラを、消し去ろうとしている、のだろうか。
召喚士とその能力、祈り子という存在に対して異様なまでの思い入れがあるようにも感じた。
彼は一体、何者なのだろうか。
それよりも今は、ここを出ることを考えたほうがよさそうだ。
あの時のアーロンの様子も気にかかる。
今の隻眼のアーロンや祈り子たちの行方も気にかかる。
今この異界に、何が起こっているのか、把握しなくてはならない。
この異界に来る前までは、グアド族の能力の1つであった異界の匂いを感じることができる能力があった。
しかし、自分自身も命を無くし、ここ異界に来てからはその能力がなくなってしまったのか、それとも意味の無いものになったのか、全く役には立たない。
ただ、何かの気配を感じる能力は格段に上がったようだ。
私自身も幻光虫の塊であることがそうさせているのかもしれない。
背後に、何かの気配を感じる。
温かい、柔らかい、どこか懐かしい気配。
はっとして後ろを振り返る。
いつの間にかそこに立っていたのは、見覚えのある人物。
よく日に焼けた逞しい太い腕を胸の前で組んで、威厳を示すように立ちはだかっている。
「ジェクト!」
この暗い空間に一人きりにされて、私は寂しかったのか。
見知った人物に安堵の吐息を漏らしながら何の警戒も無いままに近づいた。
→
3,sep,2011