第3章【何かがおかしい】
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『…キミも祈り子の端くれなら、理解できるだろう?』
また聞こえてきた、若い声。
それに反応してアーロンの周辺に視線を巡らせる。
それは前から後ろから、横から上から、どこから聞こえてくるのかわからない。
声は続ける。
『何一つ変わらないこの世界の全てを、きれいにするんだ』
「…どういうこと?」
『キミも祈り子ならわかるはずだ。召喚士という存在がキミたちをどんな風に使ってきたか、何のために使うのか。…結局それで何かが変わったのかい?』
「…使う、なんて言い方をするな!」
『召喚士なんていうものがいたからいけないんだ。魂を呼び出して自分の代わりに利用する能力があったからいけないんだ。
そんな能力、欲しいなんて思っていなかったのに。その力を授けた世界は、今も何も変わっていない。…だから、きれいにするんだよ』
こいつは何を言っているんだ、と思わざるを得ない。
この声の主が何者かなんてわからない。
でも、こいつの思想は危険すぎる。
直接会って感じたわけではない。それなのに直感的に感じる壮大な危機感。
ブラスカを、召喚士という存在を守ることに誇りを持っていたはずのアーロンが何も言わない。
先程から僅かに俯いて黒い影を燻らせている。
「アーロン、これ、一体誰なんだ?」
目の前に立つこの男の様子も気にかかるが、どこからともなく聞こえてくるこの青年の声のほうが遥かに気に障る。
それでも何も言わないアーロンに苛立ちを覚えてしまう。
「アーロン! どうしたって言うんだ。これは誰の声なんだ」
『キミにもすぐにわかる。…さあ、力を貸して。キミの祈り子としての力で共にスピラを、この世界をきれいにしよう』
「ふざけるな!わけのわからないことをぐだぐだと!
言いたい事があるなら、今ここに出て来い!」
『…随分と威勢のいい祈り子だ。どれだけの力を持っているか、楽しみだよ』
「……私は、祈り子なんかじゃ、ない」
「ラフテル…」
低い声が漏れる。
俯いたまま、アーロンは私の名を呼ぶ。
彼の背後の黒い瘴気の塊なんか、今の私にはどうでもいいことだった。
アーロンに、触れた。
彼の両の腕を上から押さえるように掴んで、彼の名を呼んだ。
「アーロン、一体何があったんだ。どうしたというんだ」
「…ラフテル、お前の、力が、必要なんだ。力と、その体を、差し出せ…」
搾り出すように紡がれた単語で、辛うじて何を言っているか理解する。
だがその内容は、信じられないものだ。
「!!」
掴んでいた手を離して身を仰け反らせた。
目の前にいるアーロンの姿が、別の誰かの姿とダブって見えたような気がしたからだ。
「…アーロン、何言って…」
異様に重く感じる自分の足をゆっくり、僅かずつ後退させる。
足元の花に足を取られながらも、ほんの少しずつ距離が開いていく。
俯いたままだったアーロンが、突然顔を上げて私を睨み付ける。
その顔に私は言葉を失った。
それは、アーロンではなかった。
頭の片隅が一目見て欠けているのがわかる。
そこから流れる夥しい血と、その中に詰まっていたであろう臓器官の崩れた塊。
血走った目と穴という穴から流れ落ちる赤い液体。
これは、誰だ…!
私の腕をいきなり凄い力で掴んだかと思うと、背後の闇の入り口へ力ずくで誘導する。
アーロンだと思い込んでいた私の思考を覆されて、私はパニックになっていたのかもしれない。
されるがままに、その暗い闇の入り口の中へと入り込んでしまった。
→
28,aug,2011
『…キミも祈り子の端くれなら、理解できるだろう?』
また聞こえてきた、若い声。
それに反応してアーロンの周辺に視線を巡らせる。
それは前から後ろから、横から上から、どこから聞こえてくるのかわからない。
声は続ける。
『何一つ変わらないこの世界の全てを、きれいにするんだ』
「…どういうこと?」
『キミも祈り子ならわかるはずだ。召喚士という存在がキミたちをどんな風に使ってきたか、何のために使うのか。…結局それで何かが変わったのかい?』
「…使う、なんて言い方をするな!」
『召喚士なんていうものがいたからいけないんだ。魂を呼び出して自分の代わりに利用する能力があったからいけないんだ。
そんな能力、欲しいなんて思っていなかったのに。その力を授けた世界は、今も何も変わっていない。…だから、きれいにするんだよ』
こいつは何を言っているんだ、と思わざるを得ない。
この声の主が何者かなんてわからない。
でも、こいつの思想は危険すぎる。
直接会って感じたわけではない。それなのに直感的に感じる壮大な危機感。
ブラスカを、召喚士という存在を守ることに誇りを持っていたはずのアーロンが何も言わない。
先程から僅かに俯いて黒い影を燻らせている。
「アーロン、これ、一体誰なんだ?」
目の前に立つこの男の様子も気にかかるが、どこからともなく聞こえてくるこの青年の声のほうが遥かに気に障る。
それでも何も言わないアーロンに苛立ちを覚えてしまう。
「アーロン! どうしたって言うんだ。これは誰の声なんだ」
『キミにもすぐにわかる。…さあ、力を貸して。キミの祈り子としての力で共にスピラを、この世界をきれいにしよう』
「ふざけるな!わけのわからないことをぐだぐだと!
言いたい事があるなら、今ここに出て来い!」
『…随分と威勢のいい祈り子だ。どれだけの力を持っているか、楽しみだよ』
「……私は、祈り子なんかじゃ、ない」
「ラフテル…」
低い声が漏れる。
俯いたまま、アーロンは私の名を呼ぶ。
彼の背後の黒い瘴気の塊なんか、今の私にはどうでもいいことだった。
アーロンに、触れた。
彼の両の腕を上から押さえるように掴んで、彼の名を呼んだ。
「アーロン、一体何があったんだ。どうしたというんだ」
「…ラフテル、お前の、力が、必要なんだ。力と、その体を、差し出せ…」
搾り出すように紡がれた単語で、辛うじて何を言っているか理解する。
だがその内容は、信じられないものだ。
「!!」
掴んでいた手を離して身を仰け反らせた。
目の前にいるアーロンの姿が、別の誰かの姿とダブって見えたような気がしたからだ。
「…アーロン、何言って…」
異様に重く感じる自分の足をゆっくり、僅かずつ後退させる。
足元の花に足を取られながらも、ほんの少しずつ距離が開いていく。
俯いたままだったアーロンが、突然顔を上げて私を睨み付ける。
その顔に私は言葉を失った。
それは、アーロンではなかった。
頭の片隅が一目見て欠けているのがわかる。
そこから流れる夥しい血と、その中に詰まっていたであろう臓器官の崩れた塊。
血走った目と穴という穴から流れ落ちる赤い液体。
これは、誰だ…!
私の腕をいきなり凄い力で掴んだかと思うと、背後の闇の入り口へ力ずくで誘導する。
アーロンだと思い込んでいた私の思考を覆されて、私はパニックになっていたのかもしれない。
されるがままに、その暗い闇の入り口の中へと入り込んでしまった。
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28,aug,2011