第3章【何かがおかしい】
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あの時、アーロンには結局答えを貰っていない。
あの時のことを覚えているか聞きたいと思ったのだが、その時の出来事を口に出すことも躊躇われて、結局曖昧なまま私はその場から逃げた。
覚えていないのであれば、わざわざその事を言っても仕方が無い。
覚えていたとしても、だからこれからどうしろと言われても今更だ。
アーロンとの関係が不安定になってきていた時期に、また更に輪をかけてこんな話題を持ち出したのでは、これから先一緒になんていられない。
だから私は、声を掛けたくせに自分から逃げてしまった。酷い言葉だけを残して…
「…アーロン?」
家の中はしんと静まり返っていた。
人のいる気配はない。
ブラスカのところかと思い、彼のところにも行ってみた。
「アーロン? いや、今日は来ていないよ」
「…そう」
「どうかしたのかい?」
「あ、いや、なんでもないんだ。ちょっと話したいことがあって…」
「そうなのか。ここに来たら、その旨伝えよう」
「ありがとう、ブラスカ」
アーロンが、いない。
どこに行ったかなんてわからない。
普段奴が何をしているかなんて、そういえばあまり知らない。
私は祈り子たちに頼まれた仕事をしているから、スピラにいることが多いし、家に戻れば必ず会えるので特に意識したこともなかった。
待っていればその内戻ってくるだろうと、何の気にもとめずに私は勝手に休むことにした。
一夜が明けて、結局、アーロンは戻らなかった。
ここで暮らすようになってからこんなことは初めてだ。
先日のこともあるのかもしれない。
私は勢いに任せて酷いことを口走ってしまったから…
しんとした空間で一人、呆けていても仕方がない。
私はそこらにあった紙に走り書きだけを残して、家を飛び出した。
目指す先は、若いアーロンのところではなく、祈り子たちのところ。
私が任されている仕事の経過もそうだが、今回のことをアーロンに言っておけなかった分、祈り子たちに相談してみようかと思ったのだ。
そして、祈り子の一人、一番大事な人物にも会っておかなければならない。
私やほかの祈り子たちが集めている欠片は、実はもう既に大体集まっているらしい。
だが、一番大事なものがまだ無いのだ。
集めた欠片を組み合わせたとしても、それが無ければ、せっかく組み立てたものもすぐにバラバラになってしまうだろう。
小さな少年を訪ねた。
姿は幼い少年のものだが、祈り子として長い年月を過ごし、大きな力を持っている。
私やほかの祈り子たちに今回の仕事の提案をしたのは他でもない、彼なのだ。
長い長い年月を、ひたすら夢を見ることだけを強要された多くの人々に、開放を与えてくれた人物に対する、彼なりの礼なのかもしれない。
私がこの世に生を受けるそのずっとずっと昔から、大きな都市に生きた人々。
彼らは夢を見続けてきた。
ただ、平和な夢だけを。
その全てがここに導かれ、彼ら自身の自由を満喫しているようだった。
夢を見続けてきた彼らは、もう自分たちの好きにできるのだ。
この大きな科学の進んだ街は、そんな彼らが幻光虫で作り上げた彼らだけの街。
私はザナルカンドという街を、廃墟という形でしか知ることは無いが、恐らくこんな街だったのだろう。
不思議な建物や大きな機械仕掛けの、人もモノも溢れた見知らぬ世界。
あの時、シーモアの屋敷で見たあの光景のままの世界がそこにあった。
少年も、ここに住んでいる。
…だが、その少年も姿がなかった。
住人たちも、誰も彼の行方を知るものはいなかった。
→
19,aug,2011
あの時、アーロンには結局答えを貰っていない。
あの時のことを覚えているか聞きたいと思ったのだが、その時の出来事を口に出すことも躊躇われて、結局曖昧なまま私はその場から逃げた。
覚えていないのであれば、わざわざその事を言っても仕方が無い。
覚えていたとしても、だからこれからどうしろと言われても今更だ。
アーロンとの関係が不安定になってきていた時期に、また更に輪をかけてこんな話題を持ち出したのでは、これから先一緒になんていられない。
だから私は、声を掛けたくせに自分から逃げてしまった。酷い言葉だけを残して…
「…アーロン?」
家の中はしんと静まり返っていた。
人のいる気配はない。
ブラスカのところかと思い、彼のところにも行ってみた。
「アーロン? いや、今日は来ていないよ」
「…そう」
「どうかしたのかい?」
「あ、いや、なんでもないんだ。ちょっと話したいことがあって…」
「そうなのか。ここに来たら、その旨伝えよう」
「ありがとう、ブラスカ」
アーロンが、いない。
どこに行ったかなんてわからない。
普段奴が何をしているかなんて、そういえばあまり知らない。
私は祈り子たちに頼まれた仕事をしているから、スピラにいることが多いし、家に戻れば必ず会えるので特に意識したこともなかった。
待っていればその内戻ってくるだろうと、何の気にもとめずに私は勝手に休むことにした。
一夜が明けて、結局、アーロンは戻らなかった。
ここで暮らすようになってからこんなことは初めてだ。
先日のこともあるのかもしれない。
私は勢いに任せて酷いことを口走ってしまったから…
しんとした空間で一人、呆けていても仕方がない。
私はそこらにあった紙に走り書きだけを残して、家を飛び出した。
目指す先は、若いアーロンのところではなく、祈り子たちのところ。
私が任されている仕事の経過もそうだが、今回のことをアーロンに言っておけなかった分、祈り子たちに相談してみようかと思ったのだ。
そして、祈り子の一人、一番大事な人物にも会っておかなければならない。
私やほかの祈り子たちが集めている欠片は、実はもう既に大体集まっているらしい。
だが、一番大事なものがまだ無いのだ。
集めた欠片を組み合わせたとしても、それが無ければ、せっかく組み立てたものもすぐにバラバラになってしまうだろう。
小さな少年を訪ねた。
姿は幼い少年のものだが、祈り子として長い年月を過ごし、大きな力を持っている。
私やほかの祈り子たちに今回の仕事の提案をしたのは他でもない、彼なのだ。
長い長い年月を、ひたすら夢を見ることだけを強要された多くの人々に、開放を与えてくれた人物に対する、彼なりの礼なのかもしれない。
私がこの世に生を受けるそのずっとずっと昔から、大きな都市に生きた人々。
彼らは夢を見続けてきた。
ただ、平和な夢だけを。
その全てがここに導かれ、彼ら自身の自由を満喫しているようだった。
夢を見続けてきた彼らは、もう自分たちの好きにできるのだ。
この大きな科学の進んだ街は、そんな彼らが幻光虫で作り上げた彼らだけの街。
私はザナルカンドという街を、廃墟という形でしか知ることは無いが、恐らくこんな街だったのだろう。
不思議な建物や大きな機械仕掛けの、人もモノも溢れた見知らぬ世界。
あの時、シーモアの屋敷で見たあの光景のままの世界がそこにあった。
少年も、ここに住んでいる。
…だが、その少年も姿がなかった。
住人たちも、誰も彼の行方を知るものはいなかった。
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19,aug,2011