第2章【過去の記憶】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
=11=
「アーロン、目を覚まして! 私だよ!」
「…う、うう…。…魔物が! どんなに姿を変えても無駄だ!」
アーロンが、鋭い眼差しを向けて、太刀を向ける手に力を込めた。
太刀の切っ先が私の喉元に小さな傷をつけた。
痛みを感じないわけはない。
でも、今はそんなことよりも、アーロンを元に戻したくて、私はその場を動けなかった。
「…アーロン、私は、魔物じゃないよ」
痛みの走る喉元から、生暖かい液体が流れてきたのがわかった。
それが何かなんて、確かめる必要も無い。
僅かに、アーロンが動揺したのか、私に突き立てた太刀の切っ先が離れて揺れた。
ガランと重い音を立てて、アーロンの手から太刀が零れ落ちる。
柄を握っていた腕を下ろすことなく、アーロンは眉間の皺を深くしたまま瞑目した。
必死に何かと戦っているようだった。
苦しげに僅かに声を漏らしながら、上げたままの腕の拳をギュっと握り締めた。
「…アーロン…?」
様子を伺うように、私は1歩距離を縮める。
足音に目を開いたアーロンが、また私を睨んだ。
「近づくな!魔物が!」
「アーロン!」
混乱したアーロンは怯えたように覇気を剥き出しにする。
私は怯まなかった。
喉元から流れた生暖かい血が、服に染み込んで冷気を感じさせる。
1歩近づく。
同時に、1歩後退するアーロン。
それでも私を睨み付ける鋭い眼差しは変わらない。
私はそのアーロンの気迫に恐怖を感じながらも、それでも怯まずに思い切って飛びついた。
彼の頭をすっぽり両の腕で抱え込むようにして抱きしめた。
彼は、何も言葉を発しなかった。
「…アーロン、私は、私だよ。魔物なんかじゃ、ない」
腕の力を少し緩めて、私は静かに諭した。
「…うう、 …ラフテル……?」
「アーロン」
しがみつく様に抱き付いていた私を、ベリと音でも聞こえるように引き剥がしたかと思うと、突然アーロンが私を組み敷いた。
凍りついた地面に強かに頭を打ち付けた私は、一瞬気が遠くなるような感覚を覚え、自分の身に何が起こったのか理解できずにいた。
「魔物のくせに、一端の赤い血を流すのか…」
「…ア、アーロン…?」
正気に、戻ってない。
途端に、先程まで太刀の切っ先を当てていた部分に噛み付いてきた。
「うっ!」
当てられた歯の痛みと、血の流れた傷の上を這い回る別の柔らかい何かの感触。
一度に感じるその2つの感覚と、それとは別のゾワリとした感覚。
これは何だ。
何だ、これは…!
「…あ、あぁ、アー、ロン、やめ……」
両手をがっちりと押さえつけられ、体の上に圧し掛かられて、全く身動きが取れない。
跳ね除けようにも、思うように体が動かない。
力が入らない。
魔力がないのと、この寒さと、頭を打ったことと、悪いことが一気に重なってしまったようで運が悪い。
アーロンがこんなことをするなんて、考えられなかった。
決してアーロンに嫌悪感を抱いているわけではない。
でも、こんなことをする奴だとは思ってもいなかった。
「アーロン! やめて! 離して!」
服の合わせ目に手を掛けて、そこから力任せに左右に開く。
喉元に吸い付いた口を離すことなく露になった胸の膨らみを握り締めた。
私は自由になった両手で必死にアーロンを引き剥がそうとしてみるが、そんなことを無意味だった。
手どころか、体そのものの力も入らなくなってきていた私には、どうすることもできない。
なんとかしてアーロンの混乱を治さなくては、と、アイテムを入れた袋の存在を思い出した。
その部分に手を当てて愕然とする。
自分の着ていた服ごと、その部分はきれいになくなっていた。
先程の魔物との戦闘中に魔物の攻撃を受けて破られたことを思い出す。
諦めともとれる溜息を零す。
こんな体制になってから、改めて己の力の無さを痛感する。
男と女の力の差を実感して、唇を噛み締めた。
悔しくて、情けなくて、自分が繰り広げた戦闘のスタイルを全て否定された気がして。
ほんの少しでも魔力を残しておくべきだったと、ここに来る前にブラスカ達に知らせるべきだったと、
激しく後悔した。
→
25,jul,2011
「アーロン、目を覚まして! 私だよ!」
「…う、うう…。…魔物が! どんなに姿を変えても無駄だ!」
アーロンが、鋭い眼差しを向けて、太刀を向ける手に力を込めた。
太刀の切っ先が私の喉元に小さな傷をつけた。
痛みを感じないわけはない。
でも、今はそんなことよりも、アーロンを元に戻したくて、私はその場を動けなかった。
「…アーロン、私は、魔物じゃないよ」
痛みの走る喉元から、生暖かい液体が流れてきたのがわかった。
それが何かなんて、確かめる必要も無い。
僅かに、アーロンが動揺したのか、私に突き立てた太刀の切っ先が離れて揺れた。
ガランと重い音を立てて、アーロンの手から太刀が零れ落ちる。
柄を握っていた腕を下ろすことなく、アーロンは眉間の皺を深くしたまま瞑目した。
必死に何かと戦っているようだった。
苦しげに僅かに声を漏らしながら、上げたままの腕の拳をギュっと握り締めた。
「…アーロン…?」
様子を伺うように、私は1歩距離を縮める。
足音に目を開いたアーロンが、また私を睨んだ。
「近づくな!魔物が!」
「アーロン!」
混乱したアーロンは怯えたように覇気を剥き出しにする。
私は怯まなかった。
喉元から流れた生暖かい血が、服に染み込んで冷気を感じさせる。
1歩近づく。
同時に、1歩後退するアーロン。
それでも私を睨み付ける鋭い眼差しは変わらない。
私はそのアーロンの気迫に恐怖を感じながらも、それでも怯まずに思い切って飛びついた。
彼の頭をすっぽり両の腕で抱え込むようにして抱きしめた。
彼は、何も言葉を発しなかった。
「…アーロン、私は、私だよ。魔物なんかじゃ、ない」
腕の力を少し緩めて、私は静かに諭した。
「…うう、 …ラフテル……?」
「アーロン」
しがみつく様に抱き付いていた私を、ベリと音でも聞こえるように引き剥がしたかと思うと、突然アーロンが私を組み敷いた。
凍りついた地面に強かに頭を打ち付けた私は、一瞬気が遠くなるような感覚を覚え、自分の身に何が起こったのか理解できずにいた。
「魔物のくせに、一端の赤い血を流すのか…」
「…ア、アーロン…?」
正気に、戻ってない。
途端に、先程まで太刀の切っ先を当てていた部分に噛み付いてきた。
「うっ!」
当てられた歯の痛みと、血の流れた傷の上を這い回る別の柔らかい何かの感触。
一度に感じるその2つの感覚と、それとは別のゾワリとした感覚。
これは何だ。
何だ、これは…!
「…あ、あぁ、アー、ロン、やめ……」
両手をがっちりと押さえつけられ、体の上に圧し掛かられて、全く身動きが取れない。
跳ね除けようにも、思うように体が動かない。
力が入らない。
魔力がないのと、この寒さと、頭を打ったことと、悪いことが一気に重なってしまったようで運が悪い。
アーロンがこんなことをするなんて、考えられなかった。
決してアーロンに嫌悪感を抱いているわけではない。
でも、こんなことをする奴だとは思ってもいなかった。
「アーロン! やめて! 離して!」
服の合わせ目に手を掛けて、そこから力任せに左右に開く。
喉元に吸い付いた口を離すことなく露になった胸の膨らみを握り締めた。
私は自由になった両手で必死にアーロンを引き剥がそうとしてみるが、そんなことを無意味だった。
手どころか、体そのものの力も入らなくなってきていた私には、どうすることもできない。
なんとかしてアーロンの混乱を治さなくては、と、アイテムを入れた袋の存在を思い出した。
その部分に手を当てて愕然とする。
自分の着ていた服ごと、その部分はきれいになくなっていた。
先程の魔物との戦闘中に魔物の攻撃を受けて破られたことを思い出す。
諦めともとれる溜息を零す。
こんな体制になってから、改めて己の力の無さを痛感する。
男と女の力の差を実感して、唇を噛み締めた。
悔しくて、情けなくて、自分が繰り広げた戦闘のスタイルを全て否定された気がして。
ほんの少しでも魔力を残しておくべきだったと、ここに来る前にブラスカ達に知らせるべきだったと、
激しく後悔した。
→
25,jul,2011