第10章【冥界コロシアム】
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≪ 94 ≫
手に伝わったあの感覚を、俺はきっとこの先ずっと忘れることはないと思う。
魔物じゃない。
これは紛れもない、ヒトの体。
肉を裂き、骨を砕く音と感触。
…ヒトを殺すという事。
あれは、あの時までは、そこにハデスがいたのに。
俺の攻撃がもうすぐ届くというときになって、突然そこに現れた黒い影。
あっと思った瞬間はもう遅かった。
俺の出した攻撃は止められなくて、目の前に突然現れた黒いものに嫌な音を立てて突き刺さった。
はっとしてキーブレードを握りしめたままその黒い物を見る。
黒い、闇に包まれた、金色の目を持つもの。
ゆらりと闇が空気に溶けていって、それの正体が露になる。
「…お、お姉さん……!?」
堪えきれない風に、小さな咳を溢す度に、血が混じって苦しそうに聞こえた。
血飛沫がキーブレードを握っている俺の手にまで飛んでくる。
お姉さんがガクリと片膝を落としたのに合わせて、俺はキーブレードから手を離してしまった。
俺はドンと突き飛ばされて、抵抗する力もないまま後方のアーロンに支えられた。
俺からの攻撃が来ると思って身構えてたんだろう。
ハデスがこちらに向き直って、また下品な笑い声を立てた。
頭がパニックになって、なんで? どうして? ってことしか考えられなくなってた。
「上等だ、ラフテル、よくやった」
「……!!」
ハデスの言葉に頭に来て、足を一歩踏み出したところで肩を掴まれた。
「待て」
「でもっ!」
俺を止めたアーロンの顔を見てはっとした。
そうだ、この場面を一番見たくないのは、アーロンのはずだ。
「アーロン、…ゴメン、…俺、…俺…」
俯いてしまった俺の頭にそっと大きな手を乗せただけで、アーロンは何も言わなかった。
「これであのガキは敵ではない。 キーブレードはこちらにあるんだからな。 ひ~っひっひっひっひ…。 ラフテル~、や~っと役目を果たしてくれたね~。
このまま最後まで役に立たなかったらどうしようかと思ってたよ」
「……そうか、では契約は果たしたということだな」
「はっ?」
「!?」
お姉さんがゆっくりと立ち上がって俺達のほうに向き直った。
その顔には、笑みが浮かんでた。
怖い笑顔じゃない、あの時、俺にキーブレードをしまえって言った時の、あの顔。
「アーロン、…待たせてすまないな。 これでやっと帰れる」
「…そうか」
「ソラ、大事なものだろう? 手放すな」
「う、うん…」
片手を翳すと、お姉さんに突き刺さってたキーブレードが光の粒となって消え、俺の手に戻ってきた。
その場に膝から崩れ落ちるように倒れてしまったお姉さんはピクリとも動かない。
それまでお姉さんを包んでいた黒い闇はすっかりなくなり、血も流れない代わりに体から薄い煙みたいなものが立ち上ってるのが見える。
これって、ハートレスが倒れた後に闇に還っていくアレにそっくりだ。
俺は、ゾクリと震えた。
…お姉さんを、殺してしまった…。
倒れたお姉さんを跨いで、ハデスは相変わらずニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。
俺は、多分冷静に考えることができなくなってたんだろうな。
メグとヘラクレスを冥界の穴に落とされて、お姉さんを俺が殺してしまった。
なのに、こいつは笑ってる。
やり場のない怒りや悲しむべきなのかどうかもよくわからなくて、ただただハデスを憎いと思った。
「アーロン、お姉さんのところに行ってあげて」
「…だがお前1人では…」
「いいから!」
たぶん、俺の気持ちをドナルドとグーフィーは察してくれたんだと思う。
アーロンに何か言ってくれたみたいで、アーロンは短い了承の言葉を残してお姉さんのところへ向かった。
…こいつだけは絶対に許せない。
絶対に俺が倒す!
そして、俺達3人とハデスの戦いが始まった。
こんな奴だけど、悔しいけど、やっぱりこいつは強くて俺の意思も感情も空回りしてる気がしてた。
気持ちばっかりが焦って、奴の攻撃は当たるのに、俺の攻撃は当たらない。
それが益々イライラして武器は空を切る。
何度目かなんて覚えてない。
ハデスの放った闇の黒い球に弾き飛ばされて尻餅をついた。
すぐにドナルドとグーフィーが駆け寄って来てくれる。
「ソラ、大丈夫?」
「うん、ありがとグーフィー。 …回復薬は?」
「それが、もうないよ、ソラ」
「えっ、じゃあドナルド」
「グワッ、ボクも魔力がもうないよ」
「そんなあ…」
「い~っひっひっひっひっひっ、どうした、もう終わりか?」
飛ばされた時に足を捻ったみたいで、力を入れると痛みで立つことができなさそう。
…こんな時に。
あいつがどんどん近付いてくる。
俺達は3人で互いに支え合いながらハデスを睨み付けた。
あいつはニヤついた顔のまま俺達を薙ぎ払い、俺はまた後方へ飛ばされる。
みんな別の方向に飛ばされたらしく、身を起こした時近くには2人の姿はなかった。
足の痛みでまともに歩けなくて、ハデスがまた近付いてくるのを見てるしかできない。
……悔しい。
もっと強くなりたい。
力が欲しい。
力がなければ戦うことも、守ることもできない。
ふと、リクとカイリの顔が浮かんだ。
『お願い2人とも、力を貸して!』
ハデスがもうそこまで近付いていて、俺はぎゅっと目を閉じた。
「お前の思い通りにはさせないぞ、ハデス!」
「!?」
この声は!
→
21,sep,2015
手に伝わったあの感覚を、俺はきっとこの先ずっと忘れることはないと思う。
魔物じゃない。
これは紛れもない、ヒトの体。
肉を裂き、骨を砕く音と感触。
…ヒトを殺すという事。
あれは、あの時までは、そこにハデスがいたのに。
俺の攻撃がもうすぐ届くというときになって、突然そこに現れた黒い影。
あっと思った瞬間はもう遅かった。
俺の出した攻撃は止められなくて、目の前に突然現れた黒いものに嫌な音を立てて突き刺さった。
はっとしてキーブレードを握りしめたままその黒い物を見る。
黒い、闇に包まれた、金色の目を持つもの。
ゆらりと闇が空気に溶けていって、それの正体が露になる。
「…お、お姉さん……!?」
堪えきれない風に、小さな咳を溢す度に、血が混じって苦しそうに聞こえた。
血飛沫がキーブレードを握っている俺の手にまで飛んでくる。
お姉さんがガクリと片膝を落としたのに合わせて、俺はキーブレードから手を離してしまった。
俺はドンと突き飛ばされて、抵抗する力もないまま後方のアーロンに支えられた。
俺からの攻撃が来ると思って身構えてたんだろう。
ハデスがこちらに向き直って、また下品な笑い声を立てた。
頭がパニックになって、なんで? どうして? ってことしか考えられなくなってた。
「上等だ、ラフテル、よくやった」
「……!!」
ハデスの言葉に頭に来て、足を一歩踏み出したところで肩を掴まれた。
「待て」
「でもっ!」
俺を止めたアーロンの顔を見てはっとした。
そうだ、この場面を一番見たくないのは、アーロンのはずだ。
「アーロン、…ゴメン、…俺、…俺…」
俯いてしまった俺の頭にそっと大きな手を乗せただけで、アーロンは何も言わなかった。
「これであのガキは敵ではない。 キーブレードはこちらにあるんだからな。 ひ~っひっひっひっひ…。 ラフテル~、や~っと役目を果たしてくれたね~。
このまま最後まで役に立たなかったらどうしようかと思ってたよ」
「……そうか、では契約は果たしたということだな」
「はっ?」
「!?」
お姉さんがゆっくりと立ち上がって俺達のほうに向き直った。
その顔には、笑みが浮かんでた。
怖い笑顔じゃない、あの時、俺にキーブレードをしまえって言った時の、あの顔。
「アーロン、…待たせてすまないな。 これでやっと帰れる」
「…そうか」
「ソラ、大事なものだろう? 手放すな」
「う、うん…」
片手を翳すと、お姉さんに突き刺さってたキーブレードが光の粒となって消え、俺の手に戻ってきた。
その場に膝から崩れ落ちるように倒れてしまったお姉さんはピクリとも動かない。
それまでお姉さんを包んでいた黒い闇はすっかりなくなり、血も流れない代わりに体から薄い煙みたいなものが立ち上ってるのが見える。
これって、ハートレスが倒れた後に闇に還っていくアレにそっくりだ。
俺は、ゾクリと震えた。
…お姉さんを、殺してしまった…。
倒れたお姉さんを跨いで、ハデスは相変わらずニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。
俺は、多分冷静に考えることができなくなってたんだろうな。
メグとヘラクレスを冥界の穴に落とされて、お姉さんを俺が殺してしまった。
なのに、こいつは笑ってる。
やり場のない怒りや悲しむべきなのかどうかもよくわからなくて、ただただハデスを憎いと思った。
「アーロン、お姉さんのところに行ってあげて」
「…だがお前1人では…」
「いいから!」
たぶん、俺の気持ちをドナルドとグーフィーは察してくれたんだと思う。
アーロンに何か言ってくれたみたいで、アーロンは短い了承の言葉を残してお姉さんのところへ向かった。
…こいつだけは絶対に許せない。
絶対に俺が倒す!
そして、俺達3人とハデスの戦いが始まった。
こんな奴だけど、悔しいけど、やっぱりこいつは強くて俺の意思も感情も空回りしてる気がしてた。
気持ちばっかりが焦って、奴の攻撃は当たるのに、俺の攻撃は当たらない。
それが益々イライラして武器は空を切る。
何度目かなんて覚えてない。
ハデスの放った闇の黒い球に弾き飛ばされて尻餅をついた。
すぐにドナルドとグーフィーが駆け寄って来てくれる。
「ソラ、大丈夫?」
「うん、ありがとグーフィー。 …回復薬は?」
「それが、もうないよ、ソラ」
「えっ、じゃあドナルド」
「グワッ、ボクも魔力がもうないよ」
「そんなあ…」
「い~っひっひっひっひっひっ、どうした、もう終わりか?」
飛ばされた時に足を捻ったみたいで、力を入れると痛みで立つことができなさそう。
…こんな時に。
あいつがどんどん近付いてくる。
俺達は3人で互いに支え合いながらハデスを睨み付けた。
あいつはニヤついた顔のまま俺達を薙ぎ払い、俺はまた後方へ飛ばされる。
みんな別の方向に飛ばされたらしく、身を起こした時近くには2人の姿はなかった。
足の痛みでまともに歩けなくて、ハデスがまた近付いてくるのを見てるしかできない。
……悔しい。
もっと強くなりたい。
力が欲しい。
力がなければ戦うことも、守ることもできない。
ふと、リクとカイリの顔が浮かんだ。
『お願い2人とも、力を貸して!』
ハデスがもうそこまで近付いていて、俺はぎゅっと目を閉じた。
「お前の思い通りにはさせないぞ、ハデス!」
「!?」
この声は!
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21,sep,2015