第10章【冥界コロシアム】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『92』~宿命という名の戦い~
『心のないハートレス…』
『闇を纏う女の姿をした魔物…』
『ハートレスはキーブレードによって倒されなければならない…』
『お前はなぜ存在している…』
『お前のノーバディはどこにいる…』
『ファレルクスは俺が殺した欠陥人形だ…』
『ラフテル、お前は本当に、ラフテルなのか…?』
頭の中にいくつもの言葉が浮かんでは消えていく。
そしてそれ以上に不気味な冥界の亡者共の呻き声や喚き声が響いている。
冥界はずっとこんな亡者共の悲鳴が蔓延しているのか。
異界のほうがまだマシだと思えるうちは、私はまだヒトとしての意識が残っているのだろうか。
恐らく、私はもうヒトとしての自分を保っていられないのだと思う。
強烈な眠気のようなものを感じて、眠るまいと意識を強くしている筈なのに、ハッとすると覚えのない行動をとっている。
この闘技場に入ってから、私は何をした?
眠くて眠くて、意識が飛びそうで、ダメだと自分に言い聞かせて意識を戻した瞬間、魔物の首を落としていた。
慌ててその場を離れ、闘技場の上に奴を見つけた。
また何か私に命令したのかと文句の1つも言ってやりたかった。
だがまたすぐに睡魔に襲われる。
眠くて眠くて……。
次に意識を取り戻したら、左腕がなくなっていた。
痛みや原因よりもまず、混乱のほうが大きくて、思考が追い付かなくて、私は奴に何かおかしなことを言った気がする。
その後も、何度か意識を落としては戻しての繰り返しで、どうやら私の体は今、アーロンと戦っているらしい。
丁度いい。このまま私を殺してくれれば、私はやっと解放されるだろう。
もう、ハートレスだのキーブレードだの、よく解らない世界に囚われるのは疲れた。
こんな、禍々しい障気渦巻く暗い冥界ではなく、美しくて静かな異界に戻りたい。
せっかく私を迎えに来てくれたアーロンの言葉を無下に振り払って、私はなぜつまらない意地を張っていたのだろうか。
あの変態野郎と結ばれた契約は絶対だ。
あんな変態でも、この冥界の王。
その契約の力はどんな神でも破ることは不可能だ。
ならば、契約を果たすか、或いは契約者を殺すか…。
どちらも、はっきり言って私には無理だ。
この世界に来て、この世界を知って、人と出会った。
ハートレスという存在である私には心がないと言うが、今私の中に芽生えているのは“情”という気持ち。
これは心の一部ではないのか?
それともただの記憶の一部?
自分の体の中で覚醒する。
この感覚は前にも感じたことがある。
だがあの時とは少し違う。
何が違うのか、具体的なものはわからない。
なんだろうか、まるで夢を見てるような感覚。
夢の中の私は、アーロンと戦っている。
その前にソラ達と戦った私の体はまだ完全に回復していなくて、魔力も残り少なくて、それでも私を包む闇の力がそれを補う。
…私の意思に反して。
あの時の男の言葉がまた浮かんでくる。
彼が教えてくれた、解放される方法。
自分の主であるあの変態野郎に逆らうことは許されないのならば、私はその方法を試みるしかない。
夢を見ているこの微睡みのような感覚の中で、私と対峙するアーロンの目を見つめる。
敵を睨むような鋭い視線に、私は身を投げ出す。
“私を解放してくれ、…助けてくれ”と…。
彼の強烈な蹴りが綺麗に横腹に入った。
骨がミシリと嫌な音を立てたのが耳に届く。
声を出すどころか、息もできないままに弾き飛ばされる。
何かにぶつかって、取り敢えず闘技場からの落下は避けられた。
意識をはっきり覚醒させて、体中の激しい痛みに顔をしかめた。
これが現実。
闇の力も今は抑えられているようで、己の残された体力や魔力が本当にもう僅かであることを知る。
このままアーロンと戦い続ければ、私は消されてしまう。
だが、私の中の闇がそれをさせないだろう。
起き上がった私に、変態野郎が何か言ってたようだが、そんな言葉ももう聞こえない。
また激しい眠気が襲ってきて、私の意識は遠くなっていく。
…私は、彼に、どう償えばいいだろうか?
こんな異世界の穴の中の囚われの身となった私を探し、迎えに来てくれた。
どんなに拒んでも拒絶しても、私の前に現れた、アーロン。
私を連れて帰ると言った。
だが、恐らくそれは叶わない。
あんたの希望には添えない。
…私はここで、あんたに消されるから。
夢を見るあの感覚の中で、アーロンが私に言う。
『覚悟はいいか?』
昔、よく見てた夢に出てくる優しい目はそこにはない。
これは、敵を見る目だ。
そうだ。私は敵。あんたに敵対する憎むべき敵。
だから、どうか私を殺してくれ。
この呪縛から解放してくれ!
……助けて、くれ…。
意識が遠くなっていく。
重くなって沈んでいく。
夢の中で叫んだ声なんて、相手に届くとは思えないが、それでも彼に届いて欲しいと希望を乗せて、私の意識は途切れた。
→
19,sep,2015
『心のないハートレス…』
『闇を纏う女の姿をした魔物…』
『ハートレスはキーブレードによって倒されなければならない…』
『お前はなぜ存在している…』
『お前のノーバディはどこにいる…』
『ファレルクスは俺が殺した欠陥人形だ…』
『ラフテル、お前は本当に、ラフテルなのか…?』
頭の中にいくつもの言葉が浮かんでは消えていく。
そしてそれ以上に不気味な冥界の亡者共の呻き声や喚き声が響いている。
冥界はずっとこんな亡者共の悲鳴が蔓延しているのか。
異界のほうがまだマシだと思えるうちは、私はまだヒトとしての意識が残っているのだろうか。
恐らく、私はもうヒトとしての自分を保っていられないのだと思う。
強烈な眠気のようなものを感じて、眠るまいと意識を強くしている筈なのに、ハッとすると覚えのない行動をとっている。
この闘技場に入ってから、私は何をした?
眠くて眠くて、意識が飛びそうで、ダメだと自分に言い聞かせて意識を戻した瞬間、魔物の首を落としていた。
慌ててその場を離れ、闘技場の上に奴を見つけた。
また何か私に命令したのかと文句の1つも言ってやりたかった。
だがまたすぐに睡魔に襲われる。
眠くて眠くて……。
次に意識を取り戻したら、左腕がなくなっていた。
痛みや原因よりもまず、混乱のほうが大きくて、思考が追い付かなくて、私は奴に何かおかしなことを言った気がする。
その後も、何度か意識を落としては戻しての繰り返しで、どうやら私の体は今、アーロンと戦っているらしい。
丁度いい。このまま私を殺してくれれば、私はやっと解放されるだろう。
もう、ハートレスだのキーブレードだの、よく解らない世界に囚われるのは疲れた。
こんな、禍々しい障気渦巻く暗い冥界ではなく、美しくて静かな異界に戻りたい。
せっかく私を迎えに来てくれたアーロンの言葉を無下に振り払って、私はなぜつまらない意地を張っていたのだろうか。
あの変態野郎と結ばれた契約は絶対だ。
あんな変態でも、この冥界の王。
その契約の力はどんな神でも破ることは不可能だ。
ならば、契約を果たすか、或いは契約者を殺すか…。
どちらも、はっきり言って私には無理だ。
この世界に来て、この世界を知って、人と出会った。
ハートレスという存在である私には心がないと言うが、今私の中に芽生えているのは“情”という気持ち。
これは心の一部ではないのか?
それともただの記憶の一部?
自分の体の中で覚醒する。
この感覚は前にも感じたことがある。
だがあの時とは少し違う。
何が違うのか、具体的なものはわからない。
なんだろうか、まるで夢を見てるような感覚。
夢の中の私は、アーロンと戦っている。
その前にソラ達と戦った私の体はまだ完全に回復していなくて、魔力も残り少なくて、それでも私を包む闇の力がそれを補う。
…私の意思に反して。
あの時の男の言葉がまた浮かんでくる。
彼が教えてくれた、解放される方法。
自分の主であるあの変態野郎に逆らうことは許されないのならば、私はその方法を試みるしかない。
夢を見ているこの微睡みのような感覚の中で、私と対峙するアーロンの目を見つめる。
敵を睨むような鋭い視線に、私は身を投げ出す。
“私を解放してくれ、…助けてくれ”と…。
彼の強烈な蹴りが綺麗に横腹に入った。
骨がミシリと嫌な音を立てたのが耳に届く。
声を出すどころか、息もできないままに弾き飛ばされる。
何かにぶつかって、取り敢えず闘技場からの落下は避けられた。
意識をはっきり覚醒させて、体中の激しい痛みに顔をしかめた。
これが現実。
闇の力も今は抑えられているようで、己の残された体力や魔力が本当にもう僅かであることを知る。
このままアーロンと戦い続ければ、私は消されてしまう。
だが、私の中の闇がそれをさせないだろう。
起き上がった私に、変態野郎が何か言ってたようだが、そんな言葉ももう聞こえない。
また激しい眠気が襲ってきて、私の意識は遠くなっていく。
…私は、彼に、どう償えばいいだろうか?
こんな異世界の穴の中の囚われの身となった私を探し、迎えに来てくれた。
どんなに拒んでも拒絶しても、私の前に現れた、アーロン。
私を連れて帰ると言った。
だが、恐らくそれは叶わない。
あんたの希望には添えない。
…私はここで、あんたに消されるから。
夢を見るあの感覚の中で、アーロンが私に言う。
『覚悟はいいか?』
昔、よく見てた夢に出てくる優しい目はそこにはない。
これは、敵を見る目だ。
そうだ。私は敵。あんたに敵対する憎むべき敵。
だから、どうか私を殺してくれ。
この呪縛から解放してくれ!
……助けて、くれ…。
意識が遠くなっていく。
重くなって沈んでいく。
夢の中で叫んだ声なんて、相手に届くとは思えないが、それでも彼に届いて欲しいと希望を乗せて、私の意識は途切れた。
→
19,sep,2015