第10章【冥界コロシアム】
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【 91 】
彼女のクセも攻撃のパターンも、よく知っているつもりだ。
自分のほうが体も大きいし力も強い。
性別の違いや武器の違いがそのまま強さに反映されることは無い場合が多いが、彼女には強大な魔力がある。
直接攻撃として使うものよりも、むしろ補助として使う間接魔法のほうが厄介だ。
攻撃力や防御力を上げるもの、素早さや跳躍力を上げたり、こちらの力を抑えるものなど、あいつは多種多様な魔法を巧みに使い分ける。
共に旅をする時にはかなり助かっていたものだった。
その時には気付かなかったが、いざこうして敵対して初めてその厄介さを思い知る。
俺の武器の弱点もよくわかっているのだろう。
振り切った直後に懐に潜り込んで来るように剣を突き立てる。
当然こちらもそれは読んでいる。
彼女が狙ってくる辺りに拳を振るう。
腕が間に合わないときは蹴りを。
ラフテルの振るう武器が俺の頬を掠めていく。
俺の振るう剣先がラフテルの腕を僅かに斬りつける。
飛び散った赤い血は、それぞれ淡い光と黒い靄となって消えていく。
「………?」
声が、聞こえたような気がした。
「はああああああっ!」
ラフテルの己の気を高める声で、彼女の覇気はさらに膨らんでいく。
目だけをギラギラと光らせた黒い魔物のような姿で、弾丸の如く向かってくる。
上空からの攻撃を弾くと、更に高く飛び上がった。
それを追ってこちらも飛び上がる。
闘技場の真上に設置された屋根の上で更に剣を合わせる。
こちらの武器のほうが遥かにでかいし重い。
だがそれを全く感じさせないのは、先程言った間接魔法に依るものだろう。
両手に持った2本の武器で息もつかせぬ二連撃。
そのどれもが急所狙いの必殺攻撃だ。
少しでも気を抜けば致命傷を負うことは必至だろう。
僅かに反応が遅れた瞬間に、ラフテルは予想通りに的確に狙ってくる。
左足に少し深めの傷を受けてしまった。
反射的に反撃の拳を叩き込む。
いくら防御力を上げているといっても、体重が変わるわけではない。
俺の渾身の一撃を受けて、ラフテルは闘技場の屋根に穴を開けた。
間を置かずすぐに後を追う。
下の闘技場の上に着地している彼女の姿を見つけ、逃すまいと太刀を振るう。
一瞬にして避けられ、太刀は闘技場の床を破壊しただけだった。
舌打ちをするかしないかの刹那で上空から殺気を感じる。
今度はこちらが狙われる番だ。
黒い闇を纏ってこちらに向かってくる魔物。
本来の彼女の姿からはかけ離れた容姿となったが、それでもこれは紛れもなくラフテルなのだ。
降り下ろされた剣を受け止めた瞬間、誰かの声を聞いた気がした。
俺とラフテルが戦っている後ろでも別の戦いが繰り広げられているのだ。
誰かの言葉を拾っただけだろう。
そう考えて目の前の敵に集中する。
力では絶対に敵わない。
彼女も重々承知の筈。
だから長引く鍔迫り合いを避け、背後に回り込む。
俺の右側は死角になることは最初から知っているだろうに、右側ではなく、後ろに回る。
なぜだ? じっくり考えている余裕はない。
こちらが振り向くと同時に魔法を放ってきた!
頭の反応に体がついてこない。
「!!」
先程受けた左足の損傷が思ったよりもでかい。
辺りに飛び交う幻光虫の数が、俺の流した血の量を物語っている。
傷口に手を当てて回復魔法を唱える。
俺の魔力では大した回復は見込めないが何もしないよりはマシだ。
こちらの隙をついてラフテルが向かってくる。
反撃に遅れをとったと見せかけて、体を捻ってラフテルの横腹目掛けて蹴り上げる。
声を上げる間もなく、ラフテルは体をくの字に折り曲げたままの姿勢で飛んでいく。
「うぎゃっ!?」
ラフテルの主であるあいつに見事に命中し、折り重なるようにその場に倒れ込んだ。
その瞬間、闘技場の端から何かが落ちていったような気がしたが、それが何かまでは確認できなかった。
「「ああっ!!!」」
「メグ————っっ!!」
「……?」
「…う、う~ん、いてててて…、な、なんだ? …ん? ラフテル!? 何やってるんだ!」
「……う、…ゲホッ、ゴホッ…」
ムクリと身を起こしたラフテルは口元の赤い血を手の甲でぐいと拭い、自分が下に敷いている男の言葉を無視してゆっくりと立ち上がった。
男がラフテルに何かを喚いているが、彼女には聞こえていないのかそれとも完全に聞こえない振りを決め込んでいるのか、耳を貸すどころか視線を向けようとさえしない。
「……アーロン」
「!、 ……なんだ?」
声を掛けてきた。
少々息が荒くなってきているようだ。
未だ流れる口元の血を再びぐいと拭い、ゆっくりとこちらに歩を進める。
「…本気、出してよ」
「!!」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべて、ラフテルは武器を構え直した。
荒ぶる息を飲み込んで自分の武器を担ぎ直し、ラフテルを睨む。
「…覚悟はいいんだな?」
「私を連れて帰るんだろう? そんな気などない私に言うことを聞かせたかったら、方法は1つだ」
もう、本当に、どうしようもないのか。
こんな姿になってしまった彼女を、俺は救えんのか…?
武器を手にしてこちらに歩み寄ってくるラフテルを、再び黒い闇が覆ってゆく。
禍々しい殺気を放ち、その覇気に皮膚がビリビリと痺れを感じるほどだ。
俺に本気を出せと言った彼女も、当然今まで以上の力で向かってくるのだろう。
ならばこちらも、それに応えなければならんのだろう。
『………、………、…ン、…助けて……』
→
18,sep,2015
彼女のクセも攻撃のパターンも、よく知っているつもりだ。
自分のほうが体も大きいし力も強い。
性別の違いや武器の違いがそのまま強さに反映されることは無い場合が多いが、彼女には強大な魔力がある。
直接攻撃として使うものよりも、むしろ補助として使う間接魔法のほうが厄介だ。
攻撃力や防御力を上げるもの、素早さや跳躍力を上げたり、こちらの力を抑えるものなど、あいつは多種多様な魔法を巧みに使い分ける。
共に旅をする時にはかなり助かっていたものだった。
その時には気付かなかったが、いざこうして敵対して初めてその厄介さを思い知る。
俺の武器の弱点もよくわかっているのだろう。
振り切った直後に懐に潜り込んで来るように剣を突き立てる。
当然こちらもそれは読んでいる。
彼女が狙ってくる辺りに拳を振るう。
腕が間に合わないときは蹴りを。
ラフテルの振るう武器が俺の頬を掠めていく。
俺の振るう剣先がラフテルの腕を僅かに斬りつける。
飛び散った赤い血は、それぞれ淡い光と黒い靄となって消えていく。
「………?」
声が、聞こえたような気がした。
「はああああああっ!」
ラフテルの己の気を高める声で、彼女の覇気はさらに膨らんでいく。
目だけをギラギラと光らせた黒い魔物のような姿で、弾丸の如く向かってくる。
上空からの攻撃を弾くと、更に高く飛び上がった。
それを追ってこちらも飛び上がる。
闘技場の真上に設置された屋根の上で更に剣を合わせる。
こちらの武器のほうが遥かにでかいし重い。
だがそれを全く感じさせないのは、先程言った間接魔法に依るものだろう。
両手に持った2本の武器で息もつかせぬ二連撃。
そのどれもが急所狙いの必殺攻撃だ。
少しでも気を抜けば致命傷を負うことは必至だろう。
僅かに反応が遅れた瞬間に、ラフテルは予想通りに的確に狙ってくる。
左足に少し深めの傷を受けてしまった。
反射的に反撃の拳を叩き込む。
いくら防御力を上げているといっても、体重が変わるわけではない。
俺の渾身の一撃を受けて、ラフテルは闘技場の屋根に穴を開けた。
間を置かずすぐに後を追う。
下の闘技場の上に着地している彼女の姿を見つけ、逃すまいと太刀を振るう。
一瞬にして避けられ、太刀は闘技場の床を破壊しただけだった。
舌打ちをするかしないかの刹那で上空から殺気を感じる。
今度はこちらが狙われる番だ。
黒い闇を纏ってこちらに向かってくる魔物。
本来の彼女の姿からはかけ離れた容姿となったが、それでもこれは紛れもなくラフテルなのだ。
降り下ろされた剣を受け止めた瞬間、誰かの声を聞いた気がした。
俺とラフテルが戦っている後ろでも別の戦いが繰り広げられているのだ。
誰かの言葉を拾っただけだろう。
そう考えて目の前の敵に集中する。
力では絶対に敵わない。
彼女も重々承知の筈。
だから長引く鍔迫り合いを避け、背後に回り込む。
俺の右側は死角になることは最初から知っているだろうに、右側ではなく、後ろに回る。
なぜだ? じっくり考えている余裕はない。
こちらが振り向くと同時に魔法を放ってきた!
頭の反応に体がついてこない。
「!!」
先程受けた左足の損傷が思ったよりもでかい。
辺りに飛び交う幻光虫の数が、俺の流した血の量を物語っている。
傷口に手を当てて回復魔法を唱える。
俺の魔力では大した回復は見込めないが何もしないよりはマシだ。
こちらの隙をついてラフテルが向かってくる。
反撃に遅れをとったと見せかけて、体を捻ってラフテルの横腹目掛けて蹴り上げる。
声を上げる間もなく、ラフテルは体をくの字に折り曲げたままの姿勢で飛んでいく。
「うぎゃっ!?」
ラフテルの主であるあいつに見事に命中し、折り重なるようにその場に倒れ込んだ。
その瞬間、闘技場の端から何かが落ちていったような気がしたが、それが何かまでは確認できなかった。
「「ああっ!!!」」
「メグ————っっ!!」
「……?」
「…う、う~ん、いてててて…、な、なんだ? …ん? ラフテル!? 何やってるんだ!」
「……う、…ゲホッ、ゴホッ…」
ムクリと身を起こしたラフテルは口元の赤い血を手の甲でぐいと拭い、自分が下に敷いている男の言葉を無視してゆっくりと立ち上がった。
男がラフテルに何かを喚いているが、彼女には聞こえていないのかそれとも完全に聞こえない振りを決め込んでいるのか、耳を貸すどころか視線を向けようとさえしない。
「……アーロン」
「!、 ……なんだ?」
声を掛けてきた。
少々息が荒くなってきているようだ。
未だ流れる口元の血を再びぐいと拭い、ゆっくりとこちらに歩を進める。
「…本気、出してよ」
「!!」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべて、ラフテルは武器を構え直した。
荒ぶる息を飲み込んで自分の武器を担ぎ直し、ラフテルを睨む。
「…覚悟はいいんだな?」
「私を連れて帰るんだろう? そんな気などない私に言うことを聞かせたかったら、方法は1つだ」
もう、本当に、どうしようもないのか。
こんな姿になってしまった彼女を、俺は救えんのか…?
武器を手にしてこちらに歩み寄ってくるラフテルを、再び黒い闇が覆ってゆく。
禍々しい殺気を放ち、その覇気に皮膚がビリビリと痺れを感じるほどだ。
俺に本気を出せと言った彼女も、当然今まで以上の力で向かってくるのだろう。
ならばこちらも、それに応えなければならんのだろう。
『………、………、…ン、…助けて……』
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