第1章【何が起きたのか理解不能】
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【 9 】
診察をするとのことで、俺とバラライは部屋を追い出されてしまった。
中でどんな遣り取りが行われているのか伺うことはできない。
様子を見たい、知りたいと思うのは当然のことだが、だからといってそれを本能のままに行動するほど俺は理性がないわけではない。
「兵の訓練のこと、ありがとうございます」
「…構わん」
「伝説のガードに教えを請うなんて、若い兵達が羨ましい限りですよ」
「…だが、いいのか?」
「何がです?」
「俺は、もう僧兵でもなければガードでもない。ここでは俺は反…「違いますよ」…」
「もう、あの時の寺院とは違います」
2年前のあの旅の途中で立ち寄ったここは、俺が昔からよく知るあの腐った寺院のままだった。
マイカが宙に還り、老師は全て去り、寺院はもはやその名を掲げるだけの張りぼてとなったかと思ったが…
シンという災厄が消え去ったという、この世界に最も大きな変化が訪れたあの時から、この世界は少しずつ変わり始めてきているのだろう。
ここ、ベベルも然り、だ。
ベベルの寺院で毎日訓練に明け暮れていたあの頃も、向こうの世界にいた頃も、こちらへ戻って異界で過ごした日々も、何も変わることはなかった。
変化を望まぬまま、ただ時間だけが流れていった。
1000年。
これだけの時間があれば、もっと世界は変われたのではないだろうか。
自分が10年間離れていたスピラでさえ、何も変わらぬといいながら変化はある。
しかし、根本的な部分が全く変化を遂げていないというのなら、それはやはり何も変わらないのと同じではないか。
…いや、もう既に変化は始まっているのだったな。
ジェクトがこの世界へやってきて、結果、シンは消えた。
あの男が自らの意思でこの世界へやってきて、全てを知った上での行動ではないだろう。
そんな人間ではないことは俺が一番よく知っている。
たまたま、時代が選んだ男が、あいつだっただけだ。
だが、大きな切欠ではある。
歴史が、時代が、時間が大きく変化する瞬間を迎えたところに丁度居合わせたあいつの運命なのだろう。
その流れの一端に自分自身も乗ることができた。
幸か不幸か、俺は全てを見届けることができた。
スピラは、変わる。
シンが消えて2年で、この世界は既に大きく動き始めている。
たった2年でだ。
1000年という長い束縛から解き放たれて、その反動は大きかろう。
シンという存在を知る人間だからこそ、今後の世界は彼らにとって計り知れない無限の可能性を秘めた世界となるはずだ。
「…あの時…」
部屋の外の廊下に出て、バラライは窓に身を寄り掛からせ、じっと遥か遠くを見つめながら呟いた。
異界で、あの巨大な化け物と戦ったあの時のことを。
「あなた達も、あそこにいたんですね」
「……あぁ」
「…お恥ずかしながら、あの時の記憶はほとんどないんです。深い闇の底で自分の体を自分で見ているような…、酷い頭痛がしていました」
「…そうか」
「あの時、何があったのか、ヌージもギップルも…あぁ、あの時の仲間ですが、彼らは何も教えてくれません。ただ、無事でよかった、と」
「…終わったことだ」
「ですがっ!!」
新しい党首を務めていると、言っていたな。
こんな若造に、このベベルの寺院を背負っていくには、少々荷が重過ぎるのではないか。
だがそれを分かっていて、こいつはこいつなりに必死に足を動かそうとしている。
覚えていないと言いながら、自分が何をしたのかわかっているようだ。
そして全てを自分ひとりで解決しようとしているのか。
その責任を負うことも含めて…
まるでどこかの誰かさんのようだと、その存在を思い出して口元を緩めてしまう。
そして、彼女を思い出したことを切欠として、もしかしたら何か役に立つだろうかと淡い期待を持ってしまう。
「おい」
「…なんでしょうか」
「もう終わったことをいつまでもグズグズ言ってるようでは、この寺院を纏めていくことなどできんぞ」
「…は、はい」
「1つ、頼みがある」
「はい、何でも仰って下さい」
「…会いたい奴がいる」
→
11,jun,2015
診察をするとのことで、俺とバラライは部屋を追い出されてしまった。
中でどんな遣り取りが行われているのか伺うことはできない。
様子を見たい、知りたいと思うのは当然のことだが、だからといってそれを本能のままに行動するほど俺は理性がないわけではない。
「兵の訓練のこと、ありがとうございます」
「…構わん」
「伝説のガードに教えを請うなんて、若い兵達が羨ましい限りですよ」
「…だが、いいのか?」
「何がです?」
「俺は、もう僧兵でもなければガードでもない。ここでは俺は反…「違いますよ」…」
「もう、あの時の寺院とは違います」
2年前のあの旅の途中で立ち寄ったここは、俺が昔からよく知るあの腐った寺院のままだった。
マイカが宙に還り、老師は全て去り、寺院はもはやその名を掲げるだけの張りぼてとなったかと思ったが…
シンという災厄が消え去ったという、この世界に最も大きな変化が訪れたあの時から、この世界は少しずつ変わり始めてきているのだろう。
ここ、ベベルも然り、だ。
ベベルの寺院で毎日訓練に明け暮れていたあの頃も、向こうの世界にいた頃も、こちらへ戻って異界で過ごした日々も、何も変わることはなかった。
変化を望まぬまま、ただ時間だけが流れていった。
1000年。
これだけの時間があれば、もっと世界は変われたのではないだろうか。
自分が10年間離れていたスピラでさえ、何も変わらぬといいながら変化はある。
しかし、根本的な部分が全く変化を遂げていないというのなら、それはやはり何も変わらないのと同じではないか。
…いや、もう既に変化は始まっているのだったな。
ジェクトがこの世界へやってきて、結果、シンは消えた。
あの男が自らの意思でこの世界へやってきて、全てを知った上での行動ではないだろう。
そんな人間ではないことは俺が一番よく知っている。
たまたま、時代が選んだ男が、あいつだっただけだ。
だが、大きな切欠ではある。
歴史が、時代が、時間が大きく変化する瞬間を迎えたところに丁度居合わせたあいつの運命なのだろう。
その流れの一端に自分自身も乗ることができた。
幸か不幸か、俺は全てを見届けることができた。
スピラは、変わる。
シンが消えて2年で、この世界は既に大きく動き始めている。
たった2年でだ。
1000年という長い束縛から解き放たれて、その反動は大きかろう。
シンという存在を知る人間だからこそ、今後の世界は彼らにとって計り知れない無限の可能性を秘めた世界となるはずだ。
「…あの時…」
部屋の外の廊下に出て、バラライは窓に身を寄り掛からせ、じっと遥か遠くを見つめながら呟いた。
異界で、あの巨大な化け物と戦ったあの時のことを。
「あなた達も、あそこにいたんですね」
「……あぁ」
「…お恥ずかしながら、あの時の記憶はほとんどないんです。深い闇の底で自分の体を自分で見ているような…、酷い頭痛がしていました」
「…そうか」
「あの時、何があったのか、ヌージもギップルも…あぁ、あの時の仲間ですが、彼らは何も教えてくれません。ただ、無事でよかった、と」
「…終わったことだ」
「ですがっ!!」
新しい党首を務めていると、言っていたな。
こんな若造に、このベベルの寺院を背負っていくには、少々荷が重過ぎるのではないか。
だがそれを分かっていて、こいつはこいつなりに必死に足を動かそうとしている。
覚えていないと言いながら、自分が何をしたのかわかっているようだ。
そして全てを自分ひとりで解決しようとしているのか。
その責任を負うことも含めて…
まるでどこかの誰かさんのようだと、その存在を思い出して口元を緩めてしまう。
そして、彼女を思い出したことを切欠として、もしかしたら何か役に立つだろうかと淡い期待を持ってしまう。
「おい」
「…なんでしょうか」
「もう終わったことをいつまでもグズグズ言ってるようでは、この寺院を纏めていくことなどできんぞ」
「…は、はい」
「1つ、頼みがある」
「はい、何でも仰って下さい」
「…会いたい奴がいる」
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11,jun,2015