第9章【覚悟を決めよう】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『76』~もっと教えてほしい~
「この質問の答えさえ聞けば、俺の任務は終了だ。 後はその内容に合ったメンバーが命令を受けて任務につくことになる。 俺はお役御免ってハナシ」
「もう、ここへは来ないのか?」
「なんだ、寂しいのか? 子猫ちゃん」
「…別に寂しくはない。 だがそういう言い方は殺したくなる」
「あはははは、手厳しいな」
「あんたは話しやすい。楽だ。 …それに、何かを思い出しそうなんだ」
「何かとは?」
「…さあ?」
シグバールはまた、私をじっと見つめる。
先程の意味ありげな熱い眼差しとは違った、優しい視線。
…あぁ、やっぱりアーロンと重なる。
異界の奥の花畑で出会った過去の姿をしたアーロン。
あれはあいつ自身ではなかったのだが、あの優しい視線に、そっくりだ。
すっかり日は沈んで、逢間が時を示す淡いグラデーションに染まった空に小さな光が輝き始めた頃だった。
その空に一筋の光が放たれた。
目を向けた先にいたのは、キーブレードを掲げたソラ。
光の指し示した所に見えるのは、大きな鍵穴。
「何だ?」
「…さて、次の世界への扉が開かれたか」
ゆっくりと立ち上がったシグバールは、あれが何なのか知っている…?
片手を持ち上げて闇の扉を開くと座ったままの私のほうを振り返った。
「今日のところは帰るとするが……?」
「え、あ……」
私の意見を求めているのか?
それとも、質問の答え?
…私は、心がないくせに、ズルい女だ。
こんなことさえも自分が有利に運ぶ取引をしようとしてしまう。
「…質問の、答えなんだが…、…“今は言えない”とでもしておいてくれ。 それから、あんた以外の奴とは話したくない」
「……そりゃ光栄なことだ。 だが、…あぁ、そう報告しよう。 またな」
そう言って、闇の扉は空気に溶けるように消えてしまった。
それから何日が過ぎただろうか?
ソラは別の世界へ旅立ち、ヘラクレスも疲れた体を推してまで、壊れた闘技場で戦い続けている。
あの少年の世界はどんなところなのだろうと、少し興味が沸いた。
光に包まれた少年はどこで生まれてどんな風に育ったのだろうか?
己の生きた世界だけでなく他のあらゆる世界にとって存続に関わる恐らく最も重要な意味を持つ鍵、キーブレードに選ばれた少年。
あの年齢でその責任を背負わせるのは酷く辛いことだろう。
だが、そんな素振りもみせずにあの少年は、ソラは、真っ青な海のような綺麗な瞳で前を向いている。
あの目に、弱い。
闇に囚われた私の胸の中の一番深い所まで照らして見透かされそうで。
あれ以来、アーロンとは会っていない。
変態野郎も新しいゲームとやらの準備に忙しそうだ。
それでも相変わらず地上のコロシアムへ刺客を送り続けてはヘラクレスとの対戦を見てにやにや笑っている。
私にもヘラクレスと戦わせようとしていたが、彼を倒すことは既に契約にはないし、第一あんなに疲れの溜まったふらふらの男を倒したところで面白くもなんともない。
それに実は、変態野郎の刺客を密かに何体か倒していたりする。
勿論、奴が闘技場に姿を現さない時を狙って、だが。
ヘラクレスは困惑した顔を浮かべつつ、フィルに連れられて闘技場を後にしていた。
闇の力が日に日に増してくるようで、どこかで発散させたがっているのだ。
冥界に繋がる洞窟の中に現れるハートレス達は、はっきり言ってストレス解消にもならない。
コロシアムに現れるタイタン族のようなでかい奴を相手にしているほうが遠慮なく力をぶつけられる。
あれから数日の間、シグバールに話を聞いていた。
奴の質問に答える代わりに、私の聞きたいことを教えてくれる。
そういう約束で彼から様々なことを学んだ。
たくさんのことを聞き、たくさんのことを知った。
その度に夢を見た。
身に覚えはないはずなのにどこか懐かしい光景や人物。
シグバールと同じような黒い服を着た幾人かの人々。
夢の中の私は、“ファレルクス”と呼ばれていた。
目が覚めると、酷い喉の渇きを覚えた。
これが何を示しているのか意味はわからないが、それでもたくさんのことを知ることはできた。
最後にアーロンと戦ったあの日、闘技場の外壁の上でシグバールから受けた2つ目の質問。
私は未だに彼に本当のことを伝えていない。
私が彼を身勝手な気持ちから引き留めている。
もっと聞きたい、知りたい、教えてほしい。
あの時はそんなことばかり浮かんでいた。
この世界のこと、私達ハートレス、そしてノーバディ、キーブレードの本当の意味。
それからシグバール達、機関のこと。
機関とは何だ? どうして私をおかしな名で呼ぶ?
→
1,sep,2015
「この質問の答えさえ聞けば、俺の任務は終了だ。 後はその内容に合ったメンバーが命令を受けて任務につくことになる。 俺はお役御免ってハナシ」
「もう、ここへは来ないのか?」
「なんだ、寂しいのか? 子猫ちゃん」
「…別に寂しくはない。 だがそういう言い方は殺したくなる」
「あはははは、手厳しいな」
「あんたは話しやすい。楽だ。 …それに、何かを思い出しそうなんだ」
「何かとは?」
「…さあ?」
シグバールはまた、私をじっと見つめる。
先程の意味ありげな熱い眼差しとは違った、優しい視線。
…あぁ、やっぱりアーロンと重なる。
異界の奥の花畑で出会った過去の姿をしたアーロン。
あれはあいつ自身ではなかったのだが、あの優しい視線に、そっくりだ。
すっかり日は沈んで、逢間が時を示す淡いグラデーションに染まった空に小さな光が輝き始めた頃だった。
その空に一筋の光が放たれた。
目を向けた先にいたのは、キーブレードを掲げたソラ。
光の指し示した所に見えるのは、大きな鍵穴。
「何だ?」
「…さて、次の世界への扉が開かれたか」
ゆっくりと立ち上がったシグバールは、あれが何なのか知っている…?
片手を持ち上げて闇の扉を開くと座ったままの私のほうを振り返った。
「今日のところは帰るとするが……?」
「え、あ……」
私の意見を求めているのか?
それとも、質問の答え?
…私は、心がないくせに、ズルい女だ。
こんなことさえも自分が有利に運ぶ取引をしようとしてしまう。
「…質問の、答えなんだが…、…“今は言えない”とでもしておいてくれ。 それから、あんた以外の奴とは話したくない」
「……そりゃ光栄なことだ。 だが、…あぁ、そう報告しよう。 またな」
そう言って、闇の扉は空気に溶けるように消えてしまった。
それから何日が過ぎただろうか?
ソラは別の世界へ旅立ち、ヘラクレスも疲れた体を推してまで、壊れた闘技場で戦い続けている。
あの少年の世界はどんなところなのだろうと、少し興味が沸いた。
光に包まれた少年はどこで生まれてどんな風に育ったのだろうか?
己の生きた世界だけでなく他のあらゆる世界にとって存続に関わる恐らく最も重要な意味を持つ鍵、キーブレードに選ばれた少年。
あの年齢でその責任を背負わせるのは酷く辛いことだろう。
だが、そんな素振りもみせずにあの少年は、ソラは、真っ青な海のような綺麗な瞳で前を向いている。
あの目に、弱い。
闇に囚われた私の胸の中の一番深い所まで照らして見透かされそうで。
あれ以来、アーロンとは会っていない。
変態野郎も新しいゲームとやらの準備に忙しそうだ。
それでも相変わらず地上のコロシアムへ刺客を送り続けてはヘラクレスとの対戦を見てにやにや笑っている。
私にもヘラクレスと戦わせようとしていたが、彼を倒すことは既に契約にはないし、第一あんなに疲れの溜まったふらふらの男を倒したところで面白くもなんともない。
それに実は、変態野郎の刺客を密かに何体か倒していたりする。
勿論、奴が闘技場に姿を現さない時を狙って、だが。
ヘラクレスは困惑した顔を浮かべつつ、フィルに連れられて闘技場を後にしていた。
闇の力が日に日に増してくるようで、どこかで発散させたがっているのだ。
冥界に繋がる洞窟の中に現れるハートレス達は、はっきり言ってストレス解消にもならない。
コロシアムに現れるタイタン族のようなでかい奴を相手にしているほうが遠慮なく力をぶつけられる。
あれから数日の間、シグバールに話を聞いていた。
奴の質問に答える代わりに、私の聞きたいことを教えてくれる。
そういう約束で彼から様々なことを学んだ。
たくさんのことを聞き、たくさんのことを知った。
その度に夢を見た。
身に覚えはないはずなのにどこか懐かしい光景や人物。
シグバールと同じような黒い服を着た幾人かの人々。
夢の中の私は、“ファレルクス”と呼ばれていた。
目が覚めると、酷い喉の渇きを覚えた。
これが何を示しているのか意味はわからないが、それでもたくさんのことを知ることはできた。
最後にアーロンと戦ったあの日、闘技場の外壁の上でシグバールから受けた2つ目の質問。
私は未だに彼に本当のことを伝えていない。
私が彼を身勝手な気持ちから引き留めている。
もっと聞きたい、知りたい、教えてほしい。
あの時はそんなことばかり浮かんでいた。
この世界のこと、私達ハートレス、そしてノーバディ、キーブレードの本当の意味。
それからシグバール達、機関のこと。
機関とは何だ? どうして私をおかしな名で呼ぶ?
→
1,sep,2015