第8章【感情は心より生まれる】
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【 74 】
「アーロン!!」
ソラの甲高い声がやけに大きく響いた。
だが意識は目の前に集中している。
反らすわけにはいかない。
信じられん程の重い一撃を辛うじて受け止める。
なんという威力だ。
ラフテルの握った剣にまとわりついた闇がゆらりとこちらにまで触手を伸ばしてくる。
ただでさえ暗い空間で黒い服を身に付けているこいつの姿が、更に闇に溶けていくようだ。
金に光る眼だけがギラギラと不気味な色を放っていた。
「…くっ、ラフテル!!」
名を呼んだことで僅かに緩んだ一瞬にラフテルの剣ごと薙ぎ払った。
剣の擦れる耳障りな音と火花を散らして、ラフテルは後ろに飛んだ。
まるで重力を感じさせぬようにフワリと優雅に着地したその顔には、笑みはなかった。
「ラフテル、やめろ、ソラはまだ子供ではないか」
「…子供? 選ばれし者に生きた時間など無意味だ。 例え死を待つばかりの病人でも産まれて間もない赤子でも、力を失った老人だったとしても、…キーブレードを手にした者は等しく我々の敵だ!! 邪魔をするなアーロン!!」
「…ラフテル、これ以上この世界にいてはダメだ。 闇に飲まれるだけだ。 元の世界に帰るんだ、俺と共に!」
「何度同じことを言わせる。 そんなに帰りたければ一人で帰ればいい。 そこをどけ!」
暗闇の空間で、真っ黒な闇を纏ったラフテルが、鈍い金の輝きを放つ異形のものに見えてしまった。
改めて思い知らされる。 彼女がもう人間ではないのだと。
「ソラ、下がれ」
「でも!」
「確かに今の俺よりお前のほうが強いかもしれん。 だが子供を戦わせて己一人傍観しているわけにはいかん。
…俺は、ガードだ」
「ソラ、アーロンの呪いを解くんだ!」
「あ、そうか! アーロン、これを使って!」
「冥界の呪いを打ち消してくれるよ!」
ソラに渡されたのは小さなメダルのような石。
こんなもので…と思いながらも、言われるがままに頭上に掲げる。
この暗い空間とは対照的な聖なる輝きを放ち、途端に体が軽くなった。
「………」
「どう? アーロン」
「あぁ…!!」
返事を返す余裕もなく、攻撃してきたラフテルの一撃を跳ね返す。
…軽い。
いや、本来の自分の力が戻ったのか。
弾かれて体勢を崩した好機にこちらから攻め込む。
今まで抑えられていた分が爆発したかのように、体が軽い。力がみなぎる。
互いに繰り出した剣は弾き合い、同じように後方へ飛んで体勢を整える。
「はあああああっ!!」
共に吐き出した同じ掛け声で気合いを入れ直し、更に攻撃するつもりで剣を握り直す。
「!?」
突然、ラフテルの背後に闇の塊が沸き上がった。
「おおっと、そこまでだ」
「んん! …ぅっ…」
「あ、お前、あの時の!」
「ⅩⅢ機関!」
「ぐわっ、その人をどうするつもりだ!」
黒い服に身を包んだ男がラフテルの背後に現れ、後ろから口を塞ぐと何をしたのかわからんが突然ラフテルは意識を失ってしまった。
「なんだお前は、彼女をどうする気だ」
「ふふん、お前が“冥界の戦士”か。
…どうって、どう見てもいじめられてるか弱い女の子を助ける正義の英雄(ヒーロー)だろ?」
「英雄? お前が英雄なわけないだろ!」
「英雄は僕達だ! ぐわっ」
「卵だけどね」
ソラ達の言ってる意味はよくわからんが、それでも突然現れたこの男よりはまともなのだろう。
再び男のほうに目を向けると、奴は勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべた。
意識のないラフテルの顔を持ち上げて、己の顔を近付けていく。
まるで頬擦りするように顔の縁を撫でる。
その仕草が異様に腹立たしい。
「…貴様…!」
「ふふん、お前にはもう興味ないってハナシ」
男は音もなく闇の中に消えた。
「待て!」
思わず数歩駆け寄った手は、虚しく空を切った。
第8章終
→第9章【覚悟を決めよう】
30,aug,2015
18,Feb,2018 携帯版より転載
「アーロン!!」
ソラの甲高い声がやけに大きく響いた。
だが意識は目の前に集中している。
反らすわけにはいかない。
信じられん程の重い一撃を辛うじて受け止める。
なんという威力だ。
ラフテルの握った剣にまとわりついた闇がゆらりとこちらにまで触手を伸ばしてくる。
ただでさえ暗い空間で黒い服を身に付けているこいつの姿が、更に闇に溶けていくようだ。
金に光る眼だけがギラギラと不気味な色を放っていた。
「…くっ、ラフテル!!」
名を呼んだことで僅かに緩んだ一瞬にラフテルの剣ごと薙ぎ払った。
剣の擦れる耳障りな音と火花を散らして、ラフテルは後ろに飛んだ。
まるで重力を感じさせぬようにフワリと優雅に着地したその顔には、笑みはなかった。
「ラフテル、やめろ、ソラはまだ子供ではないか」
「…子供? 選ばれし者に生きた時間など無意味だ。 例え死を待つばかりの病人でも産まれて間もない赤子でも、力を失った老人だったとしても、…キーブレードを手にした者は等しく我々の敵だ!! 邪魔をするなアーロン!!」
「…ラフテル、これ以上この世界にいてはダメだ。 闇に飲まれるだけだ。 元の世界に帰るんだ、俺と共に!」
「何度同じことを言わせる。 そんなに帰りたければ一人で帰ればいい。 そこをどけ!」
暗闇の空間で、真っ黒な闇を纏ったラフテルが、鈍い金の輝きを放つ異形のものに見えてしまった。
改めて思い知らされる。 彼女がもう人間ではないのだと。
「ソラ、下がれ」
「でも!」
「確かに今の俺よりお前のほうが強いかもしれん。 だが子供を戦わせて己一人傍観しているわけにはいかん。
…俺は、ガードだ」
「ソラ、アーロンの呪いを解くんだ!」
「あ、そうか! アーロン、これを使って!」
「冥界の呪いを打ち消してくれるよ!」
ソラに渡されたのは小さなメダルのような石。
こんなもので…と思いながらも、言われるがままに頭上に掲げる。
この暗い空間とは対照的な聖なる輝きを放ち、途端に体が軽くなった。
「………」
「どう? アーロン」
「あぁ…!!」
返事を返す余裕もなく、攻撃してきたラフテルの一撃を跳ね返す。
…軽い。
いや、本来の自分の力が戻ったのか。
弾かれて体勢を崩した好機にこちらから攻め込む。
今まで抑えられていた分が爆発したかのように、体が軽い。力がみなぎる。
互いに繰り出した剣は弾き合い、同じように後方へ飛んで体勢を整える。
「はあああああっ!!」
共に吐き出した同じ掛け声で気合いを入れ直し、更に攻撃するつもりで剣を握り直す。
「!?」
突然、ラフテルの背後に闇の塊が沸き上がった。
「おおっと、そこまでだ」
「んん! …ぅっ…」
「あ、お前、あの時の!」
「ⅩⅢ機関!」
「ぐわっ、その人をどうするつもりだ!」
黒い服に身を包んだ男がラフテルの背後に現れ、後ろから口を塞ぐと何をしたのかわからんが突然ラフテルは意識を失ってしまった。
「なんだお前は、彼女をどうする気だ」
「ふふん、お前が“冥界の戦士”か。
…どうって、どう見てもいじめられてるか弱い女の子を助ける正義の英雄(ヒーロー)だろ?」
「英雄? お前が英雄なわけないだろ!」
「英雄は僕達だ! ぐわっ」
「卵だけどね」
ソラ達の言ってる意味はよくわからんが、それでも突然現れたこの男よりはまともなのだろう。
再び男のほうに目を向けると、奴は勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべた。
意識のないラフテルの顔を持ち上げて、己の顔を近付けていく。
まるで頬擦りするように顔の縁を撫でる。
その仕草が異様に腹立たしい。
「…貴様…!」
「ふふん、お前にはもう興味ないってハナシ」
男は音もなく闇の中に消えた。
「待て!」
思わず数歩駆け寄った手は、虚しく空を切った。
第8章終
→第9章【覚悟を決めよう】
30,aug,2015
18,Feb,2018 携帯版より転載