第1章【何が起きたのか理解不能】
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【 7 】
あれから3日が過ぎた。
彼女は未だ眠ったまま。
ほとんど眠りを必要としないこの体を持つ俺には、意識を戻すことなく昏々と眠り続ける様は異様に感じる。
生きては、いない。
だが、存在はしている。
このまま二度と目覚めることも無く、いつしか消えてしまうのではないかと、こいつの寝顔を見つめながら考えてしまう。
そんな愚かな己自身の思考を振り払うようにして、頭を振る。
この部屋の隣にもう1つ、同じような造りの部屋を用意されてはいるが、そこでじっと待つことなど、俺にはできなかった。
こいつが眠る寝台の傍らに背を預けるようにして休んだ。
目覚めたときに、一番に顔を見ることができるのは俺であればいいと。
子供じみた幼稚な思考が出るのは、一体誰の影響なのか。
俺たちがこうして肉体と共に存在していられるのは、互いが互いに想い合っているから。
ヒトの想いを反映して姿を形作る幻光虫を利用して、俺たちは存在している。
ジェクトは消え、ブラスカは異界に留まった。
ここにいるのは、俺とこいつだけ。
俺はこうして意識を保ち、この世界に留まらなくてはならないと想い続けることができる。
やらなくてはならないことがある内は、俺は消えることは無い。
だが、こいつは…
意識の無いこいつは、自分で自分を想い留まらせることができない。
誰かが想い続けなければならない。
それは勿論、俺であるはずなのだが、この世界に、ここスピラに留まってよかったのかと考えている。
異界にいても、結果は同じであったのではないか。
だが、あの時、あの祈り子の少年はここへ、スピラへ行けと言った。
彼らではどうすることもできないのだ、と。
肉体を保持している状態ならば、自分たちの体は生前のそれと変わりない。
眠ることもあるし、食事もする。
動けば疲労し、傷つけば血を流す。
だからこそ、この世界で医師に任せることにしたのだが…
なんとも歯痒いことだ。
新しい傷は多少あるものの、こいつはただ、眠っているだけだなどと。
祈り子たちの手にさえ負えない症例だというのに、ここの医師の軽いその言葉に呆気に取られた。
早く目覚めて欲しくて、冷たい頬に指をなぞらせる。
くすぐったそうに身動ぎする様子は、自分の記憶の中のこいつだけ。
今ここで眠っているこいつは、ピクリとも動かずにただ薄い呼吸を繰り返しているだけ。
「お前に、謝りたいことがあるんだ。…早く起きてくれ…」
先の戦いで、俺の記憶を使ってこいつを利用した男から記憶を取り戻したとき、信じられない記憶がそこに残っていた。
俺が、そんなことをしていたとは…
こいつはそれを分かっていながら、それでもずっと旅を続けてくれた。
俺の側にいてくれた。
そんな記憶など、戻ってきて欲しくは無かった。
あの時だと、すぐに理解はできたが、それを今更蘇らせなくてもいいだろうにと、記憶を奪った男を恨んだ。
「……逆恨み、だな」
自嘲を浮かべて、もう一度、その顔に手を添えた。
→
9,jun,2015
あれから3日が過ぎた。
彼女は未だ眠ったまま。
ほとんど眠りを必要としないこの体を持つ俺には、意識を戻すことなく昏々と眠り続ける様は異様に感じる。
生きては、いない。
だが、存在はしている。
このまま二度と目覚めることも無く、いつしか消えてしまうのではないかと、こいつの寝顔を見つめながら考えてしまう。
そんな愚かな己自身の思考を振り払うようにして、頭を振る。
この部屋の隣にもう1つ、同じような造りの部屋を用意されてはいるが、そこでじっと待つことなど、俺にはできなかった。
こいつが眠る寝台の傍らに背を預けるようにして休んだ。
目覚めたときに、一番に顔を見ることができるのは俺であればいいと。
子供じみた幼稚な思考が出るのは、一体誰の影響なのか。
俺たちがこうして肉体と共に存在していられるのは、互いが互いに想い合っているから。
ヒトの想いを反映して姿を形作る幻光虫を利用して、俺たちは存在している。
ジェクトは消え、ブラスカは異界に留まった。
ここにいるのは、俺とこいつだけ。
俺はこうして意識を保ち、この世界に留まらなくてはならないと想い続けることができる。
やらなくてはならないことがある内は、俺は消えることは無い。
だが、こいつは…
意識の無いこいつは、自分で自分を想い留まらせることができない。
誰かが想い続けなければならない。
それは勿論、俺であるはずなのだが、この世界に、ここスピラに留まってよかったのかと考えている。
異界にいても、結果は同じであったのではないか。
だが、あの時、あの祈り子の少年はここへ、スピラへ行けと言った。
彼らではどうすることもできないのだ、と。
肉体を保持している状態ならば、自分たちの体は生前のそれと変わりない。
眠ることもあるし、食事もする。
動けば疲労し、傷つけば血を流す。
だからこそ、この世界で医師に任せることにしたのだが…
なんとも歯痒いことだ。
新しい傷は多少あるものの、こいつはただ、眠っているだけだなどと。
祈り子たちの手にさえ負えない症例だというのに、ここの医師の軽いその言葉に呆気に取られた。
早く目覚めて欲しくて、冷たい頬に指をなぞらせる。
くすぐったそうに身動ぎする様子は、自分の記憶の中のこいつだけ。
今ここで眠っているこいつは、ピクリとも動かずにただ薄い呼吸を繰り返しているだけ。
「お前に、謝りたいことがあるんだ。…早く起きてくれ…」
先の戦いで、俺の記憶を使ってこいつを利用した男から記憶を取り戻したとき、信じられない記憶がそこに残っていた。
俺が、そんなことをしていたとは…
こいつはそれを分かっていながら、それでもずっと旅を続けてくれた。
俺の側にいてくれた。
そんな記憶など、戻ってきて欲しくは無かった。
あの時だと、すぐに理解はできたが、それを今更蘇らせなくてもいいだろうにと、記憶を奪った男を恨んだ。
「……逆恨み、だな」
自嘲を浮かべて、もう一度、その顔に手を添えた。
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9,jun,2015