第8章【感情は心より生まれる】
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『68』~女の存在理由と利用価値~
少年、確かソラと呼ばれていたキーブレード使いの子供。
ソラの最後の言葉にはっとして、ソラの方を見たつもりだったのに、そこにいたのは相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべた変態野郎だった。
思いっきり顔を背けてから、またかと溜め息を溢した。
「うっわ、何その重い溜め息!」
「………」
いちいち答えるのも嫌になってくる。
ソラと、ゆっくり話をしてみたいと思った。アーロンのことを教えて貰いたかった。
…無理だろうな。私はこの変態野郎の側の存在であの女を拉致してキーブレードを使う者を倒すことが目的で…。
つまり私はソラたちの敵で…。
アーロンはあれからどうしただろうか?
体力は戻っただろうか? 傷は…?
心のないハートレスだと言われても、彼に会いたいと思う気持ちだけは無くならないのだと、自身に小さく失笑していまう。
「ラフテル~、契約に熱心なのはいいけど、今はダメ。 せっかくのお楽しみが楽しめなくなる」
大仰に身振り手振りを交えた言動はこいつの癖なのだろう。
それがより一層鬱陶しさを増している。
「どういう意味だ?」
「ここの封印は、あの鍵がなければ開けられない」
…ここ?
そう言えば、ここはどこだ? いつもの奴の部屋ではない、暗い空間。
「ひーっひっひっひっひっひ。 じきにわかる」
「…またくだらないゲームでも始める気か。 私は興味ない。 もう契約以外で私に命令するなと言ったはずだ。
女は連れてきたんだからもういいだろう」
変態野郎の返事を聞く前に、闇の扉を開いた。
「…相変わらず連れない。 だけどこれだけは言っておく。 そのゲームにはアーロンも参加する」
「!! な、んだと…?」
闇の中へ1歩進めた足が止まってしまった。
「コロシアムが完成するまではまだ時間がある。 お前も参加するかどうか、考えておいて。 へーっへっへっへっへっへ…」
一度止めた足を再び進めた。
闇の扉の先は、つい先程までアーロンと共にいた岩肌剥き出しの洞穴。
そこにアーロンはいなかった。
気配を探ってみても、感じるのは冥界の怪物達だけ。
まだ私が与えたダメージは残っているはず。
…どこへ行ってしまったのだろうか。
私は再び手を翳した。
闇を抜けた先は私が使っている小さな部屋。
くり貫いただけの大きな窓から見える禍々しい世界に目を向けた。
ここからではアーロンの気配を感じることはできないが、きっとどこかにはいるのだろう。
不気味な淡い光を浮かばせた障気の渦巻く深い闇が、このぽっかり開いた空間の底に広がっている。
この冥界の更に深くに繋がっているであろう世界の存在に、寒気を覚える。
体の動きに影響を及ぼす程ではないが、疲労を感じていた。
闇に囚われた私とは真逆の、光に包まれた存在、光の勇者、ソラ。
あの少年に近付いたことで、私を支配する闇の力が弱まったとでも言うのか?
そんなつもりはなかったが、寝台に腰掛けて身を倒すと、心地よくて暖かくて…。
まだ命を持った生者だった頃に感じていた、眠りに落ちる直前のあの微睡みを思い出す。
目を閉じてうとうとしただけの浅い眠りの中で、それでもしっかり夢を見たらしい。
どこか見覚えがあるようなないような、暗い部屋。
黒い服で頭から全身を隠した者達が頭を寄せ合うようにして何かを話している。
次に現れた場面は、…赤。 一面の赤。
何が起こったのかなんて理解できるはずもないし、する必要もない。
これはただの、夢、なのだから。
ありもしない心臓がビクリと収縮したような感覚で目を覚ます。
「……なんだ、今のは?」
ふと何かを感じた。
身を起こし、再び窓から下のほうを見下ろす。
ずっと底のほうに向けていた目の端に動くものを見た気がして、そちらへ視線を持っていく。
特に何も変わったものはなく、気のせいだろうかと思い始めた瞬間、岩陰の小道を走る人影を見つけた。
「あれは…」
ハデスが目の敵にしている青年、皆が英雄と称える存在、そして私の最初のターゲット。
なぜ、彼がこんなところを走っているのだ!?
なぜか妙に興味を覚え、部屋を飛び出した。
姿を見た場所に来ても、とうにそこにいるはずもなく、どこに行ったのかと気配を探ってみる。
走っていた方向からして、奥のほうへ向かったのは間違いない。
ただ闇雲に闇の扉を開いたとしても気配を掴めないままでは意味はない。
大方、あの少年達と同じように女を助けに来たのだろう。
「………」
一瞬胸の中を何かが引っ掻いていったようなおかしな感覚がした。
ザワリと耳障りな音が体中を走り抜ける。
これは、何だろう?
—————とアーロンを重ねた瞬間だった。
私に連れて来られたあの女は、私。
訳もわからないままこの世界に連れて来られた私と同じ。
そして私を探していたと言ったアーロンと、あの女を助けようとしている—————は同じ。
…あの女が、羨ましく思えた、のだろうか? 心もない、私が?
→
23,aug,2015
少年、確かソラと呼ばれていたキーブレード使いの子供。
ソラの最後の言葉にはっとして、ソラの方を見たつもりだったのに、そこにいたのは相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべた変態野郎だった。
思いっきり顔を背けてから、またかと溜め息を溢した。
「うっわ、何その重い溜め息!」
「………」
いちいち答えるのも嫌になってくる。
ソラと、ゆっくり話をしてみたいと思った。アーロンのことを教えて貰いたかった。
…無理だろうな。私はこの変態野郎の側の存在であの女を拉致してキーブレードを使う者を倒すことが目的で…。
つまり私はソラたちの敵で…。
アーロンはあれからどうしただろうか?
体力は戻っただろうか? 傷は…?
心のないハートレスだと言われても、彼に会いたいと思う気持ちだけは無くならないのだと、自身に小さく失笑していまう。
「ラフテル~、契約に熱心なのはいいけど、今はダメ。 せっかくのお楽しみが楽しめなくなる」
大仰に身振り手振りを交えた言動はこいつの癖なのだろう。
それがより一層鬱陶しさを増している。
「どういう意味だ?」
「ここの封印は、あの鍵がなければ開けられない」
…ここ?
そう言えば、ここはどこだ? いつもの奴の部屋ではない、暗い空間。
「ひーっひっひっひっひっひ。 じきにわかる」
「…またくだらないゲームでも始める気か。 私は興味ない。 もう契約以外で私に命令するなと言ったはずだ。
女は連れてきたんだからもういいだろう」
変態野郎の返事を聞く前に、闇の扉を開いた。
「…相変わらず連れない。 だけどこれだけは言っておく。 そのゲームにはアーロンも参加する」
「!! な、んだと…?」
闇の中へ1歩進めた足が止まってしまった。
「コロシアムが完成するまではまだ時間がある。 お前も参加するかどうか、考えておいて。 へーっへっへっへっへっへ…」
一度止めた足を再び進めた。
闇の扉の先は、つい先程までアーロンと共にいた岩肌剥き出しの洞穴。
そこにアーロンはいなかった。
気配を探ってみても、感じるのは冥界の怪物達だけ。
まだ私が与えたダメージは残っているはず。
…どこへ行ってしまったのだろうか。
私は再び手を翳した。
闇を抜けた先は私が使っている小さな部屋。
くり貫いただけの大きな窓から見える禍々しい世界に目を向けた。
ここからではアーロンの気配を感じることはできないが、きっとどこかにはいるのだろう。
不気味な淡い光を浮かばせた障気の渦巻く深い闇が、このぽっかり開いた空間の底に広がっている。
この冥界の更に深くに繋がっているであろう世界の存在に、寒気を覚える。
体の動きに影響を及ぼす程ではないが、疲労を感じていた。
闇に囚われた私とは真逆の、光に包まれた存在、光の勇者、ソラ。
あの少年に近付いたことで、私を支配する闇の力が弱まったとでも言うのか?
そんなつもりはなかったが、寝台に腰掛けて身を倒すと、心地よくて暖かくて…。
まだ命を持った生者だった頃に感じていた、眠りに落ちる直前のあの微睡みを思い出す。
目を閉じてうとうとしただけの浅い眠りの中で、それでもしっかり夢を見たらしい。
どこか見覚えがあるようなないような、暗い部屋。
黒い服で頭から全身を隠した者達が頭を寄せ合うようにして何かを話している。
次に現れた場面は、…赤。 一面の赤。
何が起こったのかなんて理解できるはずもないし、する必要もない。
これはただの、夢、なのだから。
ありもしない心臓がビクリと収縮したような感覚で目を覚ます。
「……なんだ、今のは?」
ふと何かを感じた。
身を起こし、再び窓から下のほうを見下ろす。
ずっと底のほうに向けていた目の端に動くものを見た気がして、そちらへ視線を持っていく。
特に何も変わったものはなく、気のせいだろうかと思い始めた瞬間、岩陰の小道を走る人影を見つけた。
「あれは…」
ハデスが目の敵にしている青年、皆が英雄と称える存在、そして私の最初のターゲット。
なぜ、彼がこんなところを走っているのだ!?
なぜか妙に興味を覚え、部屋を飛び出した。
姿を見た場所に来ても、とうにそこにいるはずもなく、どこに行ったのかと気配を探ってみる。
走っていた方向からして、奥のほうへ向かったのは間違いない。
ただ闇雲に闇の扉を開いたとしても気配を掴めないままでは意味はない。
大方、あの少年達と同じように女を助けに来たのだろう。
「………」
一瞬胸の中を何かが引っ掻いていったようなおかしな感覚がした。
ザワリと耳障りな音が体中を走り抜ける。
これは、何だろう?
—————とアーロンを重ねた瞬間だった。
私に連れて来られたあの女は、私。
訳もわからないままこの世界に連れて来られた私と同じ。
そして私を探していたと言ったアーロンと、あの女を助けようとしている—————は同じ。
…あの女が、羨ましく思えた、のだろうか? 心もない、私が?
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23,aug,2015