第7章【闇の私とは真逆の存在】
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『64』~青年とキーブレード~
男が私に向かって手を翳した。
すぐ背後で奇妙な音が聞こえて、陰湿な気配を感じとった。
次の瞬間体がそこに吸い込まれるように大きくバランスを失った。
男が軽く私を押したことで、私は無様にも尻餅をついてしまう。
「なっ、何を…」
すぐに体勢を建て直して男のほうへ視線を向ける。
男の視線はすでに私から外れていた。
その視線の先には、3人の人影。
今自分がいる位置から離れているとはいえ、先程の男の前に立つ人影は明らかに小さい。
それはまるで子供のよう……。
改めてその人物をよく確認する。
「あれは……」
そうだ、こいつはキーブレード使いの、あの少年。
メグが卵と呼んだ、あの時アーロンと共に逃げた、少年。
名も知らぬ、その正体もわからぬ、だが、倒さねばならない相手。
恨みも憎しみもなく、キーブレードを持っているというだけで敵と認識しなくてはならない。
あのキーブレードという武器にどれだけの力があるのか、どれだけの攻撃力があるのか知らない。
それでも私は……。
男が少年達と何か話をしているのが見える。
その声までは聞こえてこない。
少年達には、恐らく私の姿は見えないのだろう。
何の力かわからないが、硝子張りの狭い箱に入れられたように感じる。
こんな経験を以前にもした記憶がある。
あれはどこだったか、あの時も若い男がいたな、と思い浮かべたところで慌てて頭を左右に振る。
今はそれどころではない。
目の前にある見えない壁に両手をついて、男にアピールする。
“ここから出せ!”と。
男には私の声が聞こえているのかはわからないが、チラリとこちらを一度見ると、叫んだ。
「舞い踊れ水たち!」
ほんの数分、いやもっと短かっただろうか、私は彼らから目を離すことができなかった。
これを何と表現したらいいのか、言葉が見つからない。
男が操る水の敵と、踊るように跳ね回る少年達の動きと。
アーロンと共に戦っていたあの時とは全く違う動きに、少年の戦い振りが初見のように錯覚する。
瞬きをすることを忘れていたからだろうか?
それは瞬く間に終息してしまった。
男がガクリと膝を落とし、少年に何かを叫んでいたかと思うと、逃げるように闇の扉の中に消えた。
途端に、体の拘束を解かれたように空気が緩み、元の岩の地面に足をつけた。
少年達はまだ私に気付いていないようで、男が消えていった闇の扉があった辺りに向かって子供らしい罵りをしていた。
無邪気に喜ぶ子供達を見ていると、ふいに私の中に何かが沸々と沸き上がった。
微笑ましい光景のはずなのに、私には何の感情も沸かない。
あるのは、欲望だけ。
ただ、この少年達を倒したい。
キーブレードは邪魔なもの。
それを持つ者は私の敵。
抑えようのない気持ちが溢れそうだ。
頭の中で誰かが囁く。
私の耳に直接話しかけてくる。
体があの武器に嫌悪感を抱いている。
あれが、私の目の前にあることが許せない。
手を伸ばせば触れられる。
届くところにある。
だから、私はあれを壊したい衝動にかられる。
持つものを殺したくなる。
一歩、また一歩と足を進める。
その手に私の武器である小太刀を握り締めて。
→
18,aug,2015
男が私に向かって手を翳した。
すぐ背後で奇妙な音が聞こえて、陰湿な気配を感じとった。
次の瞬間体がそこに吸い込まれるように大きくバランスを失った。
男が軽く私を押したことで、私は無様にも尻餅をついてしまう。
「なっ、何を…」
すぐに体勢を建て直して男のほうへ視線を向ける。
男の視線はすでに私から外れていた。
その視線の先には、3人の人影。
今自分がいる位置から離れているとはいえ、先程の男の前に立つ人影は明らかに小さい。
それはまるで子供のよう……。
改めてその人物をよく確認する。
「あれは……」
そうだ、こいつはキーブレード使いの、あの少年。
メグが卵と呼んだ、あの時アーロンと共に逃げた、少年。
名も知らぬ、その正体もわからぬ、だが、倒さねばならない相手。
恨みも憎しみもなく、キーブレードを持っているというだけで敵と認識しなくてはならない。
あのキーブレードという武器にどれだけの力があるのか、どれだけの攻撃力があるのか知らない。
それでも私は……。
男が少年達と何か話をしているのが見える。
その声までは聞こえてこない。
少年達には、恐らく私の姿は見えないのだろう。
何の力かわからないが、硝子張りの狭い箱に入れられたように感じる。
こんな経験を以前にもした記憶がある。
あれはどこだったか、あの時も若い男がいたな、と思い浮かべたところで慌てて頭を左右に振る。
今はそれどころではない。
目の前にある見えない壁に両手をついて、男にアピールする。
“ここから出せ!”と。
男には私の声が聞こえているのかはわからないが、チラリとこちらを一度見ると、叫んだ。
「舞い踊れ水たち!」
ほんの数分、いやもっと短かっただろうか、私は彼らから目を離すことができなかった。
これを何と表現したらいいのか、言葉が見つからない。
男が操る水の敵と、踊るように跳ね回る少年達の動きと。
アーロンと共に戦っていたあの時とは全く違う動きに、少年の戦い振りが初見のように錯覚する。
瞬きをすることを忘れていたからだろうか?
それは瞬く間に終息してしまった。
男がガクリと膝を落とし、少年に何かを叫んでいたかと思うと、逃げるように闇の扉の中に消えた。
途端に、体の拘束を解かれたように空気が緩み、元の岩の地面に足をつけた。
少年達はまだ私に気付いていないようで、男が消えていった闇の扉があった辺りに向かって子供らしい罵りをしていた。
無邪気に喜ぶ子供達を見ていると、ふいに私の中に何かが沸々と沸き上がった。
微笑ましい光景のはずなのに、私には何の感情も沸かない。
あるのは、欲望だけ。
ただ、この少年達を倒したい。
キーブレードは邪魔なもの。
それを持つ者は私の敵。
抑えようのない気持ちが溢れそうだ。
頭の中で誰かが囁く。
私の耳に直接話しかけてくる。
体があの武器に嫌悪感を抱いている。
あれが、私の目の前にあることが許せない。
手を伸ばせば触れられる。
届くところにある。
だから、私はあれを壊したい衝動にかられる。
持つものを殺したくなる。
一歩、また一歩と足を進める。
その手に私の武器である小太刀を握り締めて。
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18,aug,2015