第7章【闇の私とは真逆の存在】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『62』~心の無い、私~
封印の間の中央には光の柱。
それがどこから降り注がれているのかわからないが、随分と高いところまで通じているようだ。
光の元は眩しすぎて見ることができない。
その光が照らしているこの場所には、見たことのない印。
小高く盛り上がった大岩で何かに蓋をしているようにも見える。
封印の間というからには、何かをここに封印しているのだろう。
それが何であるかなど、私には関係ないし興味もない。
私はここに彼女を連れてくることだけが与えられた仕事だ。
つまり、これで私の仕事は終わったことになる。
本来の契約の内容をこなす以外に、こんな仕事をする羽目になるとは…
小さく溜息をこぼしながら、さっさとアーロンの元へ戻ろうかと考えていた。
「ここは、…何?」
当然だが、初めて訪れた場所に興味を示すメグは、部屋の中をきょろきょろと見回している。
決して広くはない。
部屋の壁際にぐるりと取り囲むように蜀台が据えられているが、部屋の中を照らし続けている光の柱のおかげで意味はない。
下手をすると外の世界よりも明るいかもしれない。
この暗い空間の中で、最も明るい場所といえるだろう。
彼女の零した言葉は、私にとっても同意で、答えを知りたかった。
「…えっと、ラフテル、だったかしら。 …ここは何をする所なの?」
「…さあ」
「知らないのに、私を連れてきたの?」
「私は、あなたをここに連れて来いと言われただけだ。 ここが何でこれから何をするかなど、私にはどうでもいい」
この、メグという女性。
こんな目に遭わされているというのに、全く物怖じした様子を見せない。
恐怖はないのだろうか? 不安は感じないのだろうか?
「一つ、聞いてもいいか?」
「どうぞ」
「…平気、なのか? こんなところに連れて来られて、何をされるかわからないというのに」
「……平気、じゃないわ。
でも、信じてるから。
きっと助けに来てくれるって、信じてるの。 だから、大丈夫」
「………」
「あなたはなぜハデスの言うことを聞いているの? あなたのような人があいつの仲間だなんて、あなたには、相応しくないわ」
「あんたにはわからない」
「わからないわ。わからないから聞いてるの。 …あなた、冥界の人間、じゃないわよね。 あなたは、ハデスの何?」
「…私のことはどうでもいいと言ったはずだが?」
「いいえ、よくないわ! あなたは誰? なぜ、何の為にハデスに仕えてるの?
あんな恐ろしいことをしようとしてるハデスと、あなたも同じ考えなの?」
「…奴がしようとしてることに興味はない。 …私はただ、自分の世界に戻りたいだけだ」
「…自分の、世界? どういう意味? あなたはどこから来たの?」
「…女ってのは、みんなそうお喋りなものなのか? 随分と他人の詮索をしたがるんだな」
「あら、普通でしょ。 あたしはもっとあなたのことを知りたいわ」
「…なぜ?」
「そりゃ、同じ女ですもの。 色々話が出来ると思うし、共感できるものがあったら同じ気持ちを持てるだろうし、あなたのこと、聞かせて。
どこから来たの?家族や恋人は?」
「こいつにそんなこと聞いても、無駄ムダ、む~だ~」
「!」
メグの怒濤のような質問攻めに辟易して、さっさと逃げようかと思っていた時だった。
どこからともなく聞こえてきた声は、間違いなくあいつだろう。
会話に割って入ったということは、密かに聞いてもいたのだろう。
信じられん変態だ。
どこからどうやって現れるのか、ボフンと黒い煙が立ち上った場所に、奴はいた。
その顔に不気味な笑みを浮かべて。
「…ハデス」
急にメグの顔から明るさが消えた。
忌々しげに名を呟いた後は、私に向けていた表情を一変させて大人しくなってしまった。
「ん~ふふん、ラフテルとお友達にでもなろうって思ったのか? ひ~ひっひっひっひっひっ…、友達!
…この世で最も醜くて滑稽で必要のないものだ」
「なんですって!?」
変態野郎の言葉に強い反応を示したメグは、たった今まで私と交わしていた会話を嘲笑った奴を許せないのだろう。
友、などという存在はユウナに言われるまでよく理解していなかった私ですら、その言葉には頭に来る。
「ラフテル~、よくやった」
「うるさい。 …私は戻る」
「どうぞお好きに。 また後で呼ぶよ」
「ラフテル!!」
「あなたをここに連れて来るときに、目的も告げたはずだ。 …もう私はここに用はない。
それに、…信じているのだろう? 助けが来ると」
「………」
酷い冷酷な言葉を投げかけていると自分でもわかっていた。
それでも、今の私にはやはりどこか感情が欠如している部分があるのだろう。
悲しいとも可哀相とも思わない。
ただ、自分の与えられた仕事を終えた、ただその微かな解放感だけが私を支配していた。
→
11,aug,2015
封印の間の中央には光の柱。
それがどこから降り注がれているのかわからないが、随分と高いところまで通じているようだ。
光の元は眩しすぎて見ることができない。
その光が照らしているこの場所には、見たことのない印。
小高く盛り上がった大岩で何かに蓋をしているようにも見える。
封印の間というからには、何かをここに封印しているのだろう。
それが何であるかなど、私には関係ないし興味もない。
私はここに彼女を連れてくることだけが与えられた仕事だ。
つまり、これで私の仕事は終わったことになる。
本来の契約の内容をこなす以外に、こんな仕事をする羽目になるとは…
小さく溜息をこぼしながら、さっさとアーロンの元へ戻ろうかと考えていた。
「ここは、…何?」
当然だが、初めて訪れた場所に興味を示すメグは、部屋の中をきょろきょろと見回している。
決して広くはない。
部屋の壁際にぐるりと取り囲むように蜀台が据えられているが、部屋の中を照らし続けている光の柱のおかげで意味はない。
下手をすると外の世界よりも明るいかもしれない。
この暗い空間の中で、最も明るい場所といえるだろう。
彼女の零した言葉は、私にとっても同意で、答えを知りたかった。
「…えっと、ラフテル、だったかしら。 …ここは何をする所なの?」
「…さあ」
「知らないのに、私を連れてきたの?」
「私は、あなたをここに連れて来いと言われただけだ。 ここが何でこれから何をするかなど、私にはどうでもいい」
この、メグという女性。
こんな目に遭わされているというのに、全く物怖じした様子を見せない。
恐怖はないのだろうか? 不安は感じないのだろうか?
「一つ、聞いてもいいか?」
「どうぞ」
「…平気、なのか? こんなところに連れて来られて、何をされるかわからないというのに」
「……平気、じゃないわ。
でも、信じてるから。
きっと助けに来てくれるって、信じてるの。 だから、大丈夫」
「………」
「あなたはなぜハデスの言うことを聞いているの? あなたのような人があいつの仲間だなんて、あなたには、相応しくないわ」
「あんたにはわからない」
「わからないわ。わからないから聞いてるの。 …あなた、冥界の人間、じゃないわよね。 あなたは、ハデスの何?」
「…私のことはどうでもいいと言ったはずだが?」
「いいえ、よくないわ! あなたは誰? なぜ、何の為にハデスに仕えてるの?
あんな恐ろしいことをしようとしてるハデスと、あなたも同じ考えなの?」
「…奴がしようとしてることに興味はない。 …私はただ、自分の世界に戻りたいだけだ」
「…自分の、世界? どういう意味? あなたはどこから来たの?」
「…女ってのは、みんなそうお喋りなものなのか? 随分と他人の詮索をしたがるんだな」
「あら、普通でしょ。 あたしはもっとあなたのことを知りたいわ」
「…なぜ?」
「そりゃ、同じ女ですもの。 色々話が出来ると思うし、共感できるものがあったら同じ気持ちを持てるだろうし、あなたのこと、聞かせて。
どこから来たの?家族や恋人は?」
「こいつにそんなこと聞いても、無駄ムダ、む~だ~」
「!」
メグの怒濤のような質問攻めに辟易して、さっさと逃げようかと思っていた時だった。
どこからともなく聞こえてきた声は、間違いなくあいつだろう。
会話に割って入ったということは、密かに聞いてもいたのだろう。
信じられん変態だ。
どこからどうやって現れるのか、ボフンと黒い煙が立ち上った場所に、奴はいた。
その顔に不気味な笑みを浮かべて。
「…ハデス」
急にメグの顔から明るさが消えた。
忌々しげに名を呟いた後は、私に向けていた表情を一変させて大人しくなってしまった。
「ん~ふふん、ラフテルとお友達にでもなろうって思ったのか? ひ~ひっひっひっひっひっ…、友達!
…この世で最も醜くて滑稽で必要のないものだ」
「なんですって!?」
変態野郎の言葉に強い反応を示したメグは、たった今まで私と交わしていた会話を嘲笑った奴を許せないのだろう。
友、などという存在はユウナに言われるまでよく理解していなかった私ですら、その言葉には頭に来る。
「ラフテル~、よくやった」
「うるさい。 …私は戻る」
「どうぞお好きに。 また後で呼ぶよ」
「ラフテル!!」
「あなたをここに連れて来るときに、目的も告げたはずだ。 …もう私はここに用はない。
それに、…信じているのだろう? 助けが来ると」
「………」
酷い冷酷な言葉を投げかけていると自分でもわかっていた。
それでも、今の私にはやはりどこか感情が欠如している部分があるのだろう。
悲しいとも可哀相とも思わない。
ただ、自分の与えられた仕事を終えた、ただその微かな解放感だけが私を支配していた。
→
11,aug,2015