第7章【闇の私とは真逆の存在】
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【 61 】
「ラフテルを元に戻す方法がある、と言ったらどうする?」
「!!」
昔の俺なら、一笑を残して立ち去っただろう。
だが今は…、今の俺にはできぬ行為だ。
現に、こうして思案を巡らせている時点ですでに迷いが表れている、確固たる証だ。
これは明らかに罠だ。
そんなことはわかりきっている。
わかっているというのに、俺の中のもう一人の俺がその答えを欲している。
「知りたい?」
「…貴様の言うことを聞かせる為の方便だ」
「あれ、信じないんだ」
「真実だとしても、聞いたところで素直に話す気はないだろう」
俺の放った言葉は奴にとっては意外な答えだったのだろう。
一瞬呆けたような顔をした後、またすぐにニヤけた顔に戻り、言葉を紡いだ。
「…ホント、つれない。 …まあいい。 さて、改めて契約といこう。 ある男を倒してくれるだけでいい」
「…またその話か。 お前と契約など結ぶつもりはない」
「………へ~っへっへっへっへ。 何か、勘違いしてないか~んん~?」
「?」
「お前を牢獄から救い上げたのは誰だ? お前の罪を特別に許してやろうとしてるのは誰だったかな~?」
「………」
「お前は罪を犯した罪人。 そんなお前にチャンスをやろうって言ってやってるのに。 …今のお前には選択肢はない。
断れる立場じゃないのさ! おわかり?」
いつの間に寄ったのか、奴が俺の肩に腕を回してきた。
俺の顔を覗き込みながら、指先で胸の辺りをつついてくる。
まったく面倒この上ない。
わざとらしく盛大に溜め息を吐き出してみせた。
「なんと言われようと、俺はお前の言いなりにはならんし、契約もしない」
再び俺から距離を置いた男が、こちらに背を向けたままどこか明後日の方向に目を向けている。
何かを考える素振りをしているようにも見えるが、どうせ俺に言うことを聞かせる算段でもしているのだろう。
「やれやれ、ホント、わかってないらしい。 …やっぱりこれしか方法はないか」
そう言って、奴はこちらを振り返った。
奴の手のひらの上には、小さな人形。
「さて問題! これは、誰~?」
「!!」
黒い服に黒いコート、長い黒髪には真っ赤な髪紐。
見覚えなどと呼べるものではない。
これは正しく、あいつではないか!
「ふふん、わかった?」
どういうつもりだ? ラフテルにそっくりの人形など、一体何の意味があるというのだ?
「ラフテルと、話はしたはず。 …なんかおかしくなかった?」
「………」
「例えば~、こんな暗い世界にたった一人連れてこられて寂しいはずなのに、泣かない。 大切な人を傷つけてるのに、苦しまない。
大好きな人に会えたのに、喜ばな~い」
「なん、だと」
いちいち大袈裟に身振り手振りを付け加えながら話す様は鬱陶しい。
だがその内容は…、思い当たる。
こいつの言う通りだ。
ラフテルは、元から感情をあまり表に出すほうではない。
だがそれは、あいつが意図しているわけではなく、ただ単に不器用なだけだ。
並みの人間と変わらず、当たり前の感情を持っている。
よく泣くし、すぐ怒るし、幼い顔で笑う。
……ここへ来てから、彼女の感情らしい感情を見たのは、あの時のみ。
あの涙は、どんな意味があったのだろうか?
ふと目の前に立つ男に視線を向ける。
ニヤつく顔でラフテルの人形を眺めている。
そして気付いた。
ラフテルがこいつの言いなりになっている理由。
…こいつか。
何をどうしたかなどわかるはずもないが、こいつに感情を奪われた…!
だから、大人しく言うことを聞いている、そういうことか。
こいつはこうまでして俺と契約を結ぼうというのか。
どんなに頑なに拒否し続けたとしても、こいつは次から次へと材を持ち出してくるだろう。
そしてそれは、彼女自身の身を危ぶむまでに至る可能性もある。
それだけは…。
……やむを得ん、か…。
「…わかった、契約しよう」
「そうか!! 契約成立だ! へ~っへっへっへっへ!」
突然、威勢よくその場でくるりと回転する。
足元から黒い煙が沸き上がり、蛇のように俺の足から体を回って立ち上ってきた。
奴はいかにも楽しそうに高笑いを繰り返している。
体の力ががくりと抜け、立っていることすら困難になってきた。
な、なんだこれは…!
→
10,aug,2015
「ラフテルを元に戻す方法がある、と言ったらどうする?」
「!!」
昔の俺なら、一笑を残して立ち去っただろう。
だが今は…、今の俺にはできぬ行為だ。
現に、こうして思案を巡らせている時点ですでに迷いが表れている、確固たる証だ。
これは明らかに罠だ。
そんなことはわかりきっている。
わかっているというのに、俺の中のもう一人の俺がその答えを欲している。
「知りたい?」
「…貴様の言うことを聞かせる為の方便だ」
「あれ、信じないんだ」
「真実だとしても、聞いたところで素直に話す気はないだろう」
俺の放った言葉は奴にとっては意外な答えだったのだろう。
一瞬呆けたような顔をした後、またすぐにニヤけた顔に戻り、言葉を紡いだ。
「…ホント、つれない。 …まあいい。 さて、改めて契約といこう。 ある男を倒してくれるだけでいい」
「…またその話か。 お前と契約など結ぶつもりはない」
「………へ~っへっへっへっへ。 何か、勘違いしてないか~んん~?」
「?」
「お前を牢獄から救い上げたのは誰だ? お前の罪を特別に許してやろうとしてるのは誰だったかな~?」
「………」
「お前は罪を犯した罪人。 そんなお前にチャンスをやろうって言ってやってるのに。 …今のお前には選択肢はない。
断れる立場じゃないのさ! おわかり?」
いつの間に寄ったのか、奴が俺の肩に腕を回してきた。
俺の顔を覗き込みながら、指先で胸の辺りをつついてくる。
まったく面倒この上ない。
わざとらしく盛大に溜め息を吐き出してみせた。
「なんと言われようと、俺はお前の言いなりにはならんし、契約もしない」
再び俺から距離を置いた男が、こちらに背を向けたままどこか明後日の方向に目を向けている。
何かを考える素振りをしているようにも見えるが、どうせ俺に言うことを聞かせる算段でもしているのだろう。
「やれやれ、ホント、わかってないらしい。 …やっぱりこれしか方法はないか」
そう言って、奴はこちらを振り返った。
奴の手のひらの上には、小さな人形。
「さて問題! これは、誰~?」
「!!」
黒い服に黒いコート、長い黒髪には真っ赤な髪紐。
見覚えなどと呼べるものではない。
これは正しく、あいつではないか!
「ふふん、わかった?」
どういうつもりだ? ラフテルにそっくりの人形など、一体何の意味があるというのだ?
「ラフテルと、話はしたはず。 …なんかおかしくなかった?」
「………」
「例えば~、こんな暗い世界にたった一人連れてこられて寂しいはずなのに、泣かない。 大切な人を傷つけてるのに、苦しまない。
大好きな人に会えたのに、喜ばな~い」
「なん、だと」
いちいち大袈裟に身振り手振りを付け加えながら話す様は鬱陶しい。
だがその内容は…、思い当たる。
こいつの言う通りだ。
ラフテルは、元から感情をあまり表に出すほうではない。
だがそれは、あいつが意図しているわけではなく、ただ単に不器用なだけだ。
並みの人間と変わらず、当たり前の感情を持っている。
よく泣くし、すぐ怒るし、幼い顔で笑う。
……ここへ来てから、彼女の感情らしい感情を見たのは、あの時のみ。
あの涙は、どんな意味があったのだろうか?
ふと目の前に立つ男に視線を向ける。
ニヤつく顔でラフテルの人形を眺めている。
そして気付いた。
ラフテルがこいつの言いなりになっている理由。
…こいつか。
何をどうしたかなどわかるはずもないが、こいつに感情を奪われた…!
だから、大人しく言うことを聞いている、そういうことか。
こいつはこうまでして俺と契約を結ぼうというのか。
どんなに頑なに拒否し続けたとしても、こいつは次から次へと材を持ち出してくるだろう。
そしてそれは、彼女自身の身を危ぶむまでに至る可能性もある。
それだけは…。
……やむを得ん、か…。
「…わかった、契約しよう」
「そうか!! 契約成立だ! へ~っへっへっへっへ!」
突然、威勢よくその場でくるりと回転する。
足元から黒い煙が沸き上がり、蛇のように俺の足から体を回って立ち上ってきた。
奴はいかにも楽しそうに高笑いを繰り返している。
体の力ががくりと抜け、立っていることすら困難になってきた。
な、なんだこれは…!
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10,aug,2015