第7章【闇の私とは真逆の存在】
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『59』~女同士の会話~
いつもの控室には、2人の姿はなかった。
闘技場のほうかと思い、そちらに足を向けて見る。
今日は何の試合も組まれていないのか、普段は賑やかな音が蔓延しているスタンドも静かなものだ。
ふと、闘技場の奥のほうから人の気配を感じた。
そこは確か、訓練場があったと思う。
そちらに足を運んで、岩の柱の陰に人影を見つけた。
細く柔らかなシルエットで女性とわかる。
淡い桜色のロングドレスと、豊かな髪を高い位置で1つに纏めた後姿は女性から見ても美しいと思う。
じっと訓練場のほうを見守っているようにも見えるが、実際訓練場では何をしているのかはここからではわからない。
気配を消して、そっとその後ろ姿に近づいた。
このまま気付かれることなく彼女を連れていくことなど容易いかと思われた。
だが次の瞬間…
「…!!」
女性がこちらを振りかえった。
それは私の気配に気づいて、というものではなく、タイミング的にたまたま後ろを振り返ったら私がいた、といった感じだ。
振り返った先に人がいるとは予想もしていなかったのだろう。
私の存在にそこで初めて気がついて、思わず息をのんだ、様子だ。
「…あ、誰?」
「私はラフテル。 …あなたが、—————の恋人?」
「恋人かどうかは、あれだけど…。 私はメガラよ。 メグって呼んで。 …ところで、ワンダーボーイに用? 呼んで来ましょうか?
彼、今英雄の卵達とトレーニングしてるわ」
「…卵…?」
ほら、と言うようにメグが僅かに体をずらして訓練場の様子を見るように促す。
私は数歩前に出て、それでも岩の柱の陰になるように少しだけ身を前に出した。
これまでにもう何度も戦った英雄と呼ばれる男と、そして例の半人半獣。
フィルという名前だと、メグから聞いた。
そして嫌でも目に飛び込んでくる、3つの小さな影。
「あれが、卵…」
「ふふふ、英雄を目指しているんですって」
そこにいたのは、あの時、あの部屋に飛び込んできた子供と動物。
一心不乱に手にした武器を振り回している。
あの子供が手にしているのが、伝説の武器キーブレード。
この世のあらゆる扉の解放と封印ができるもの。
「ほら、彼もあそこにいるわよ」
「あ、いや、いいんだ」
「あら、そうなの?」
「私が用があるのは、…あなただ」
「えっ…」
訓練場にいる男達の目から逃れるように、岩陰に身を潜めてメグを見る。
不思議そうな顔をしたメグは、両腕を豊かな胸の下で組んで顔を傾けた。
「…あなた、何者?」
「私のことなど、どうでもいいことだ。 それよりも…」
「あたしに何をするつもりなの?」
「少し協力してほしい。 別に何もする必要はない。 そこにいてくれさえすればいい」
「…囮にするのね」
「わかっているなら話が早い。 大人しくしてくれれば傷つけずに済む」
「…あなたって、おかしな人ね」
「そう?」
「普通は有無を言わさず無理矢理連れていくものじゃないの?」
「…そうして欲しかったのか?」
「いいえ。 でも、こんな卑怯な手を使うのって、ハデスしか考えられない。 つまりあなたはハデスの仲間なんでしょ?
ハデスの仲間なのに、こんなに正面から連れて行こうとするなんて、信じられないわ」
「…あんな変態野郎と一緒にしないでくれ」
「…変態…野郎…。 …ぷっ、ふふふふふ」
この女性は、あいつのことをよく知っている。
性格も言動も。
彼女も、もしかしたらあの変態野郎と何か関わりがあったことがあるのだろうか?
初めてこうして面と向かって会話を交わしたのに、この女性とはどこか親近感を覚える。
→
8,aug,2015
いつもの控室には、2人の姿はなかった。
闘技場のほうかと思い、そちらに足を向けて見る。
今日は何の試合も組まれていないのか、普段は賑やかな音が蔓延しているスタンドも静かなものだ。
ふと、闘技場の奥のほうから人の気配を感じた。
そこは確か、訓練場があったと思う。
そちらに足を運んで、岩の柱の陰に人影を見つけた。
細く柔らかなシルエットで女性とわかる。
淡い桜色のロングドレスと、豊かな髪を高い位置で1つに纏めた後姿は女性から見ても美しいと思う。
じっと訓練場のほうを見守っているようにも見えるが、実際訓練場では何をしているのかはここからではわからない。
気配を消して、そっとその後ろ姿に近づいた。
このまま気付かれることなく彼女を連れていくことなど容易いかと思われた。
だが次の瞬間…
「…!!」
女性がこちらを振りかえった。
それは私の気配に気づいて、というものではなく、タイミング的にたまたま後ろを振り返ったら私がいた、といった感じだ。
振り返った先に人がいるとは予想もしていなかったのだろう。
私の存在にそこで初めて気がついて、思わず息をのんだ、様子だ。
「…あ、誰?」
「私はラフテル。 …あなたが、—————の恋人?」
「恋人かどうかは、あれだけど…。 私はメガラよ。 メグって呼んで。 …ところで、ワンダーボーイに用? 呼んで来ましょうか?
彼、今英雄の卵達とトレーニングしてるわ」
「…卵…?」
ほら、と言うようにメグが僅かに体をずらして訓練場の様子を見るように促す。
私は数歩前に出て、それでも岩の柱の陰になるように少しだけ身を前に出した。
これまでにもう何度も戦った英雄と呼ばれる男と、そして例の半人半獣。
フィルという名前だと、メグから聞いた。
そして嫌でも目に飛び込んでくる、3つの小さな影。
「あれが、卵…」
「ふふふ、英雄を目指しているんですって」
そこにいたのは、あの時、あの部屋に飛び込んできた子供と動物。
一心不乱に手にした武器を振り回している。
あの子供が手にしているのが、伝説の武器キーブレード。
この世のあらゆる扉の解放と封印ができるもの。
「ほら、彼もあそこにいるわよ」
「あ、いや、いいんだ」
「あら、そうなの?」
「私が用があるのは、…あなただ」
「えっ…」
訓練場にいる男達の目から逃れるように、岩陰に身を潜めてメグを見る。
不思議そうな顔をしたメグは、両腕を豊かな胸の下で組んで顔を傾けた。
「…あなた、何者?」
「私のことなど、どうでもいいことだ。 それよりも…」
「あたしに何をするつもりなの?」
「少し協力してほしい。 別に何もする必要はない。 そこにいてくれさえすればいい」
「…囮にするのね」
「わかっているなら話が早い。 大人しくしてくれれば傷つけずに済む」
「…あなたって、おかしな人ね」
「そう?」
「普通は有無を言わさず無理矢理連れていくものじゃないの?」
「…そうして欲しかったのか?」
「いいえ。 でも、こんな卑怯な手を使うのって、ハデスしか考えられない。 つまりあなたはハデスの仲間なんでしょ?
ハデスの仲間なのに、こんなに正面から連れて行こうとするなんて、信じられないわ」
「…あんな変態野郎と一緒にしないでくれ」
「…変態…野郎…。 …ぷっ、ふふふふふ」
この女性は、あいつのことをよく知っている。
性格も言動も。
彼女も、もしかしたらあの変態野郎と何か関わりがあったことがあるのだろうか?
初めてこうして面と向かって会話を交わしたのに、この女性とはどこか親近感を覚える。
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8,aug,2015