第7章【闇の私とは真逆の存在】
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『58』~私は、…道具?~
体を、意識を、何か強い力で引き寄せられる感覚にはっとする。
これまでも何度も体感してきたそれは、私の意志とは関係なく私に現れる。
「アーロ…」
「ラフテル!?」
彼の声を遠くに聞いたと思った瞬間、私の目の前には変態野郎の姿。
奴の部屋に設置されたテーブルについていた。
上座に置かれた椅子には変態野郎。
その反対側には、あの猫。
「お楽しみのところだった?」
気味の悪い笑みを浮かべた表情で、厭らしい目をこちらに向けてくる。
本当にこいつの態度や言動にはいちいち苛つく。
隠すこともなく大っぴらに舌打ちをして見せる。
「で? あいつはどう?」
「…生きてる」
「へ~へっへっへっへっへ、やっぱり殺せなかったか」
「………」
こいつとの契約は何一つ果たせないでいる。
正直、契約に従うのは癪に障る。
だから契約を果たせない結果がこいつを逆上させると思っていたのに、愉快そうに笑うこいつにしてやられたようで、自分が情けない。
「さて、契約のことはひとまず置いといて、お前に頼みたいことがある」
「契約外のことはやらない」
「まあまあ、そう言わずに。…ラフテル、お前を女と見込んでして貰いたいことがある」
「女の拉致などしない」
「!!」
「読まれてるじゃねえか、ハデス」
「やかましいっ!」
「……やはりか」
以前から、変態野郎はことあるごとに—————の恋人だという女性の存在を認識していて、何かに利用しようと企んでいたようだった。
私は、ベベルに存命していた頃の旅の中で、そうやって私を利用しようとする愚か者たちを何人も見てきた。
“女”というキーワードが出た瞬間、すぐにその考えは結びつく。
—————を倒せという私との契約は、いつの間にかその内容をキーブレードを持つ者とその仲間に対象が変わっていた。
キーブレードという単語がこの世界での優先権を持つ存在であり、それを脅威とする輩にとっては何よりもまずそれを排除すべきと考えているようだ。
新たに契約を結ぼうと呼び出したアーロンはあの通りだ。
ここで他の手を考えないわけはないのだ。
となれば、—————に一番近い存在である恋人を拉致して利用するという手段を取ることになる。
「ラフテル~~」
「呼ぶな」
「泣いたの?」
「!!」
思わず目元に指先を触れる。
すでに涙などないが、その痕跡はまだ残っていたかもしれない。
「ふふ~ん」
「………」
「どうして泣いたのか、自分でわかってる~? 悲しかった?嬉しかった?痛かった?」
「…そんなこと…」
「彼に会えて嬉しかった~?死にそうで悲しかった~?」
「うるさい」
「この先も、嬉しくても悲しくても、そう感じることができなくてもいい? 辛いことがあっても悲しいとは感じな~い。
幸せなことがあっても楽しくな~い。笑えない愛せない、心がない—————」
「…!」
「所詮—————なんて道具にしか過ぎん」
最後の猫の言葉が胸に突き刺さる。
…道具、…そうか。
人間ですらない私には、所詮選択肢などないのだ。
「さて、どうするラフテル~?」
そう言って、奴はまたボフンと煙と共に掌の上に私の人形を取り出して見せた。
私から奪った、私の半身。
私の心。
先程のアーロンとの接触や会話も、心があったならばもっと……
「わかった」
「オウケエ~イ! 封印の間は知ってるよね? そこに連れてこい」
「…あぁ」
こんな岩をくり抜いただけの部屋には不釣り合いな豪華な椅子から腰を上げ、2人に背中を向けた。
「もう、これっきりだ」
「?」
「二度と、契約以外で私を使うな」
捨て台詞をはいて、部屋を後にした。
→
7,aug,2015
体を、意識を、何か強い力で引き寄せられる感覚にはっとする。
これまでも何度も体感してきたそれは、私の意志とは関係なく私に現れる。
「アーロ…」
「ラフテル!?」
彼の声を遠くに聞いたと思った瞬間、私の目の前には変態野郎の姿。
奴の部屋に設置されたテーブルについていた。
上座に置かれた椅子には変態野郎。
その反対側には、あの猫。
「お楽しみのところだった?」
気味の悪い笑みを浮かべた表情で、厭らしい目をこちらに向けてくる。
本当にこいつの態度や言動にはいちいち苛つく。
隠すこともなく大っぴらに舌打ちをして見せる。
「で? あいつはどう?」
「…生きてる」
「へ~へっへっへっへっへ、やっぱり殺せなかったか」
「………」
こいつとの契約は何一つ果たせないでいる。
正直、契約に従うのは癪に障る。
だから契約を果たせない結果がこいつを逆上させると思っていたのに、愉快そうに笑うこいつにしてやられたようで、自分が情けない。
「さて、契約のことはひとまず置いといて、お前に頼みたいことがある」
「契約外のことはやらない」
「まあまあ、そう言わずに。…ラフテル、お前を女と見込んでして貰いたいことがある」
「女の拉致などしない」
「!!」
「読まれてるじゃねえか、ハデス」
「やかましいっ!」
「……やはりか」
以前から、変態野郎はことあるごとに—————の恋人だという女性の存在を認識していて、何かに利用しようと企んでいたようだった。
私は、ベベルに存命していた頃の旅の中で、そうやって私を利用しようとする愚か者たちを何人も見てきた。
“女”というキーワードが出た瞬間、すぐにその考えは結びつく。
—————を倒せという私との契約は、いつの間にかその内容をキーブレードを持つ者とその仲間に対象が変わっていた。
キーブレードという単語がこの世界での優先権を持つ存在であり、それを脅威とする輩にとっては何よりもまずそれを排除すべきと考えているようだ。
新たに契約を結ぼうと呼び出したアーロンはあの通りだ。
ここで他の手を考えないわけはないのだ。
となれば、—————に一番近い存在である恋人を拉致して利用するという手段を取ることになる。
「ラフテル~~」
「呼ぶな」
「泣いたの?」
「!!」
思わず目元に指先を触れる。
すでに涙などないが、その痕跡はまだ残っていたかもしれない。
「ふふ~ん」
「………」
「どうして泣いたのか、自分でわかってる~? 悲しかった?嬉しかった?痛かった?」
「…そんなこと…」
「彼に会えて嬉しかった~?死にそうで悲しかった~?」
「うるさい」
「この先も、嬉しくても悲しくても、そう感じることができなくてもいい? 辛いことがあっても悲しいとは感じな~い。
幸せなことがあっても楽しくな~い。笑えない愛せない、心がない—————」
「…!」
「所詮—————なんて道具にしか過ぎん」
最後の猫の言葉が胸に突き刺さる。
…道具、…そうか。
人間ですらない私には、所詮選択肢などないのだ。
「さて、どうするラフテル~?」
そう言って、奴はまたボフンと煙と共に掌の上に私の人形を取り出して見せた。
私から奪った、私の半身。
私の心。
先程のアーロンとの接触や会話も、心があったならばもっと……
「わかった」
「オウケエ~イ! 封印の間は知ってるよね? そこに連れてこい」
「…あぁ」
こんな岩をくり抜いただけの部屋には不釣り合いな豪華な椅子から腰を上げ、2人に背中を向けた。
「もう、これっきりだ」
「?」
「二度と、契約以外で私を使うな」
捨て台詞をはいて、部屋を後にした。
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7,aug,2015