第6章【心を失うということ】
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【 54 】
ふと目が覚めた時、腕の中で眠るラフテルの存在を感じた。
随分と久しく思えるが仕方がないだろう。
酷い夢を見た。
……、………いや、これが夢、か?
こいつに斬られて、…それからどうなった?
なぜ俺はこんなところで寝ている?
そもそもここはどこだ…?
薄暗くて少々湿っているし、気分の悪くなるような匂いが充満している。
目が慣れるまでにざっと見渡した限りでは、それほど広くはない岩をくり抜いた洞穴の奥、のようだ。
自分の着ていた服を敷いた上に、裸で横たわっていた。
腕の中には、同じように一糸纏わぬラフテルが小さな寝息を立てている。
あるかないのか意味のない、形ばかりの薄い掛け布が呼吸と共に上下を繰り返していた。
最近、おかしなことが立て続けに起こる。
こちらは振り回されてばかりだ。
一体どうなっているのだ。
何が起こってもおかしくない、そんな世界に連れてこられて、俺もそれに慣れてきてしまったのだろうか。
だから、目覚めた瞬間の異様さを過去の記憶と重ね合わせた?
「……ん」
鼻から空気を抜くかのように大きな溜め息を溢した。
すると腕の中で俺にピタリと寄り添って寝息を立てていたラフテルが覚醒したのか、小さく声を漏らして身動ぎした。
その仕草や、彼女がここにいるということ自体が、俺の欲を大きくしていく。
ラフテルが完全に目覚める前に、彼女が逃げられぬようにその体を腕に包み込んだ。
彼女の長く柔らかい髪が手に、そして鼻先に触れる。
その嗅ぎ慣れたいつもの匂いに安心感を覚える。
ラフテルの背中に回した手をゆっくりと動かして、彼女の後頭部を撫でる。
その仕草でまた覚醒が進んだようで、俺の腕の中でもぞもぞと動こうとする。
重力に逆らわずに流れた髪の隙間から覗く額に、口を寄せた。
無意識なのか、まだ完全に目が覚めていないのか、その行動から逃れようとするかのように頭を深く沈ませる。
だがその動きは、俺の体に頭を擦りつけているようにしか見えない。
誘っているのか、こいつは…。
「…起きた、のか」
寝起きの掠れた声が小さく彼女の口から零れた。
独り言にも聞こえるし、俺への質問ともとれる。
返事を返すかわりに、寝返りを打つように身を反してラフテルを下に敷く。
目覚めたばかりで動きの鈍いこいつを押さえつけるにはこれで十分だ。
ほとんど抵抗もないのをいいことに、目が覚めて僅かに血色が良くなってきた唇に己のそれを重ねた。
俺よりも体温が低いのは知っていた。
いつでもその体に触れると、暖かいと感じることはない。
だが、この口付けは、 ……温かい。
これまでに、もう何度も何度もやってきたこの行為で、こんなに相手の熱を心地良く感じたことなどなかった。
こいつにこうして触れること自体が久しいからなのか、俺の体は素直に喜びに反応する。
もっと、もっと味わいたい。
この心地良さをもっと感じたいと、更に奥まで深く求めてしまう。
「……っ、 …ん、…っ!」
俺の下で小さく漏らすこいつの声も呼吸さえも飲み込んでしまいたくなる。
抵抗を示すように俺の体を押し返そうとする腕を払いのけて、小さな体を押しつぶす。
これまでに感じたこともないような温もりと、これまで通りの柔らかさを体全体で感じる。
欲は益々大きくなり、抑えが利かなくなってくる。
理性の足りないガキのようだ。
「…ア、アー、ロン…」
口から頬、顎のラインをなぞって首筋に吸いついた頃、掠れる声で名を紡がれる。
そんな声を出されると益々抑えが利かなくなるというのに。
「…それだけ、元気があれば、もう、大丈夫、か?」
俺が払いのけた腕を、俺の首筋に伸ばして、そこに触れた。
こいつの唇や体に感じた熱はなく、冷たい指が首筋をなぞる。
→
27,jul,2015
ふと目が覚めた時、腕の中で眠るラフテルの存在を感じた。
随分と久しく思えるが仕方がないだろう。
酷い夢を見た。
……、………いや、これが夢、か?
こいつに斬られて、…それからどうなった?
なぜ俺はこんなところで寝ている?
そもそもここはどこだ…?
薄暗くて少々湿っているし、気分の悪くなるような匂いが充満している。
目が慣れるまでにざっと見渡した限りでは、それほど広くはない岩をくり抜いた洞穴の奥、のようだ。
自分の着ていた服を敷いた上に、裸で横たわっていた。
腕の中には、同じように一糸纏わぬラフテルが小さな寝息を立てている。
あるかないのか意味のない、形ばかりの薄い掛け布が呼吸と共に上下を繰り返していた。
最近、おかしなことが立て続けに起こる。
こちらは振り回されてばかりだ。
一体どうなっているのだ。
何が起こってもおかしくない、そんな世界に連れてこられて、俺もそれに慣れてきてしまったのだろうか。
だから、目覚めた瞬間の異様さを過去の記憶と重ね合わせた?
「……ん」
鼻から空気を抜くかのように大きな溜め息を溢した。
すると腕の中で俺にピタリと寄り添って寝息を立てていたラフテルが覚醒したのか、小さく声を漏らして身動ぎした。
その仕草や、彼女がここにいるということ自体が、俺の欲を大きくしていく。
ラフテルが完全に目覚める前に、彼女が逃げられぬようにその体を腕に包み込んだ。
彼女の長く柔らかい髪が手に、そして鼻先に触れる。
その嗅ぎ慣れたいつもの匂いに安心感を覚える。
ラフテルの背中に回した手をゆっくりと動かして、彼女の後頭部を撫でる。
その仕草でまた覚醒が進んだようで、俺の腕の中でもぞもぞと動こうとする。
重力に逆らわずに流れた髪の隙間から覗く額に、口を寄せた。
無意識なのか、まだ完全に目が覚めていないのか、その行動から逃れようとするかのように頭を深く沈ませる。
だがその動きは、俺の体に頭を擦りつけているようにしか見えない。
誘っているのか、こいつは…。
「…起きた、のか」
寝起きの掠れた声が小さく彼女の口から零れた。
独り言にも聞こえるし、俺への質問ともとれる。
返事を返すかわりに、寝返りを打つように身を反してラフテルを下に敷く。
目覚めたばかりで動きの鈍いこいつを押さえつけるにはこれで十分だ。
ほとんど抵抗もないのをいいことに、目が覚めて僅かに血色が良くなってきた唇に己のそれを重ねた。
俺よりも体温が低いのは知っていた。
いつでもその体に触れると、暖かいと感じることはない。
だが、この口付けは、 ……温かい。
これまでに、もう何度も何度もやってきたこの行為で、こんなに相手の熱を心地良く感じたことなどなかった。
こいつにこうして触れること自体が久しいからなのか、俺の体は素直に喜びに反応する。
もっと、もっと味わいたい。
この心地良さをもっと感じたいと、更に奥まで深く求めてしまう。
「……っ、 …ん、…っ!」
俺の下で小さく漏らすこいつの声も呼吸さえも飲み込んでしまいたくなる。
抵抗を示すように俺の体を押し返そうとする腕を払いのけて、小さな体を押しつぶす。
これまでに感じたこともないような温もりと、これまで通りの柔らかさを体全体で感じる。
欲は益々大きくなり、抑えが利かなくなってくる。
理性の足りないガキのようだ。
「…ア、アー、ロン…」
口から頬、顎のラインをなぞって首筋に吸いついた頃、掠れる声で名を紡がれる。
そんな声を出されると益々抑えが利かなくなるというのに。
「…それだけ、元気があれば、もう、大丈夫、か?」
俺が払いのけた腕を、俺の首筋に伸ばして、そこに触れた。
こいつの唇や体に感じた熱はなく、冷たい指が首筋をなぞる。
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27,jul,2015