第6章【心を失うということ】
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【 50 】
少年が扉を潜り抜け、その先に出たところで扉は閉じてしまった。
扉の向こうから射していた光は遮られ、ここは更に闇に近づく。
この空間のあちらこちらに無造作に立てられた小さな蜀台の明かりと、幻光虫とはまた違うもののようだが、発光する丸い物体のおかげで完全な闇ではない。
その丸い発光しながら飛行する物体がふわふわと舞う度に、部屋の中央辺りが微かに光る。
好奇心を覚え、ゆっくりとそこに近づいた。
そこは、つい今しがたまで少年と共に闘っていた場所。
「…これは」
そこにあったのは、見覚えのない武器だった。
だが柄のところに、よく見知った紋章が入っている。
間違いない。
これは、あいつの、ラフテルの小太刀だ。
そして思い出す。
先程の戦いの最中、少年がとどめを刺そうとしていたあの瞬間、あの時に感じた違和感を。
少年は言った。
“俺が2つの首を仕留めた”と。
俺は確かに攻撃した。
だが、たった1つだけだ。
だが、少年が止めを刺す瞬間、確かに首は1つだけになっていた。
…まさか、彼女が…?
「姿を現したらどうだ」
姿を見せろ。
そして教えてくれ。
お前に何が起こったのか。
俺達が通ってきた洞窟の道の奥から、隠してもいない気配が近づいてくる。
間違いなく、ラフテルだ。
足音がこちらに向かって聞こえてきた。
やがてその姿はこの空間に入ったことで、目視できるようになった。
先程、あのおかしな男の傍にいた時と同じ、真黒な服に身を包んでいる。
入り口付近で足を止めてしまった彼女の顔は、ここからでは確認できない。
ラフテルが片手を持ち上げる。
それは、何かを欲しているように手のひらを上に向けていた。
…これか。
俺が握っている、彼女の武器である小太刀の一本。
それに目を落としてから、再びラフテルに視線を戻す。
「…あれは、お前か」
そう言って、手にしていた小太刀を彼女のほうへと放り投げた。
それは僅かに回転しながら大きく弧を描いてラフテルの頭上へと到達した。
言葉を発することもなく、持ち上げていた手を今度は頭上に翳して、向かってきた小太刀の柄を上手く掴んで見せた。
「何のことだ」
受け取った小太刀を鞘に収めながら惚けて言う。
「ラフテル」
「……!!」
「ここにいる意味はないはずだ。…帰るぞ」
「…できない」
俺の呼びかけにビクリと肩を震わせて見せる。
お前がここにいる理由は何だ?
なぜ俺を拒絶する?
俯いた顔のまま、小さく首を振って否定した。
→
23,jul,2015
少年が扉を潜り抜け、その先に出たところで扉は閉じてしまった。
扉の向こうから射していた光は遮られ、ここは更に闇に近づく。
この空間のあちらこちらに無造作に立てられた小さな蜀台の明かりと、幻光虫とはまた違うもののようだが、発光する丸い物体のおかげで完全な闇ではない。
その丸い発光しながら飛行する物体がふわふわと舞う度に、部屋の中央辺りが微かに光る。
好奇心を覚え、ゆっくりとそこに近づいた。
そこは、つい今しがたまで少年と共に闘っていた場所。
「…これは」
そこにあったのは、見覚えのない武器だった。
だが柄のところに、よく見知った紋章が入っている。
間違いない。
これは、あいつの、ラフテルの小太刀だ。
そして思い出す。
先程の戦いの最中、少年がとどめを刺そうとしていたあの瞬間、あの時に感じた違和感を。
少年は言った。
“俺が2つの首を仕留めた”と。
俺は確かに攻撃した。
だが、たった1つだけだ。
だが、少年が止めを刺す瞬間、確かに首は1つだけになっていた。
…まさか、彼女が…?
「姿を現したらどうだ」
姿を見せろ。
そして教えてくれ。
お前に何が起こったのか。
俺達が通ってきた洞窟の道の奥から、隠してもいない気配が近づいてくる。
間違いなく、ラフテルだ。
足音がこちらに向かって聞こえてきた。
やがてその姿はこの空間に入ったことで、目視できるようになった。
先程、あのおかしな男の傍にいた時と同じ、真黒な服に身を包んでいる。
入り口付近で足を止めてしまった彼女の顔は、ここからでは確認できない。
ラフテルが片手を持ち上げる。
それは、何かを欲しているように手のひらを上に向けていた。
…これか。
俺が握っている、彼女の武器である小太刀の一本。
それに目を落としてから、再びラフテルに視線を戻す。
「…あれは、お前か」
そう言って、手にしていた小太刀を彼女のほうへと放り投げた。
それは僅かに回転しながら大きく弧を描いてラフテルの頭上へと到達した。
言葉を発することもなく、持ち上げていた手を今度は頭上に翳して、向かってきた小太刀の柄を上手く掴んで見せた。
「何のことだ」
受け取った小太刀を鞘に収めながら惚けて言う。
「ラフテル」
「……!!」
「ここにいる意味はないはずだ。…帰るぞ」
「…できない」
俺の呼びかけにビクリと肩を震わせて見せる。
お前がここにいる理由は何だ?
なぜ俺を拒絶する?
俯いた顔のまま、小さく首を振って否定した。
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23,jul,2015