第1章【何が起きたのか理解不能】
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【 5 】
訓練施設の中で、まだ幼さの残る若者達の礼の言葉で、今日の仕事の終わりに安堵の息を吐き出した。
了承の言葉を口にすれば、若者達はその表情を一変させる。
つい先程まで浮かべていた辛そうな真面目な顔は途端に年相応の笑顔となり、楽し気に声を上げては施設を後にしていく。
今日は気温が高いらしく、自分が普段身に纏っている服が煩わしく感じた。
昔よくしていたように片腕だけ抜いて、動いたことで乱れた髪が、汗をかいた額に張り付く不快さもそのままにさっさと部屋へ戻ることにした。
またこうしてここに身を置くことになろうとは、思いもしなかった。
異界に来てからラフテルがずっとやっていた仕事が、今終わった。
スピラ中を飛び回り、途方もない数の魔物を倒し、探していたもの。
俺が手を貸すと言ったにも関わらず、あいつはそれを断ってたった1人でやり通した。
『アーロンは10年間、ずっと見守ってやったんだろ?私にも、あの2人を見守るという約束があるんだ。
だから私にできることはしてやりたい』
そう言ってあいつは、笑った。
祈り子たちと話をして、全てが終わって晴れ晴れとした顔を俺に向けた。
酷く幼くすら見える、見慣れたその顔を見て、思わず迎えに行くように数歩彼女に歩み寄っていた。
笑顔のまま、俺の腕の中に大人しく収まったラフテルをしっかりと抱き締めて、俺は安堵したのかもしれない。
しばらくそのままの体制で佇んで、違和感に気付いた。
「…ラフテル?」
声をかけても返事なはく、身動きひとつしない。
まさか疲れて眠ってしまったのかと、僅かに力を緩めて彼女の顔を覗き込んだ。
案の定瞼を落としてしまった彼女の無防備な顔に小さく苦笑を浮かべた。
「ラフテル、家に帰るまでもう少し辛抱しろ」
軽く肩を揺すりながら声を掛けるも返事どころか反応すらない。
この一瞬でそんなに深い眠りに落ちるとは考えられない。
狸寝入りでもしているなら……と、肩を先程よりも強く揺さぶった瞬間だった。
「!! お、おいっ!!」
俺の体に凭れていた彼女を引き剥がした途端、俺という支えを失ったラフテルは膝から崩れ落ちた。
間一髪でその体を再び腕の中へ抱き締めるが、ピクリとも反応を示さぬ彼女の身体は、酷く冷たかった。
祈り子たちと一旦別れ、すぐにブラスカと共に住み慣れた部屋へ戻ることにした。
薄い呼吸を辛うじて繰り返しているだけのラフテルは、一見ただ眠っているだけのように見える。
だがその顔は血の気が引いて青白い。
まるで、もう目覚めないのではないか、このまま消えてしまうのではないかと思えてくる。
「…ラフテル」
女々しい、と己の呟きを耳にして自嘲する。
祈り子たちに問いただせば、何かわかるかもしれないだろうが、今はまだ手を借りることはできないだろう。
彼女のこれまでの仕事の成果がやっと形になる大事なときなのだ。
それを邪魔するわけにはいかない。
なぜこんなことになったのか、これからどうなってしまうのか、何をすべきなのか、
様々な考えが浮かんでは消えていき、思い描いては振り払っていく。
出るのは重い溜め息ばかりだ。
どれだけ、彼女に心を奪われてしまったのかと、今更ながらラフテルの存在の大きさに驚かされた。
→
7,jun,2015
訓練施設の中で、まだ幼さの残る若者達の礼の言葉で、今日の仕事の終わりに安堵の息を吐き出した。
了承の言葉を口にすれば、若者達はその表情を一変させる。
つい先程まで浮かべていた辛そうな真面目な顔は途端に年相応の笑顔となり、楽し気に声を上げては施設を後にしていく。
今日は気温が高いらしく、自分が普段身に纏っている服が煩わしく感じた。
昔よくしていたように片腕だけ抜いて、動いたことで乱れた髪が、汗をかいた額に張り付く不快さもそのままにさっさと部屋へ戻ることにした。
またこうしてここに身を置くことになろうとは、思いもしなかった。
異界に来てからラフテルがずっとやっていた仕事が、今終わった。
スピラ中を飛び回り、途方もない数の魔物を倒し、探していたもの。
俺が手を貸すと言ったにも関わらず、あいつはそれを断ってたった1人でやり通した。
『アーロンは10年間、ずっと見守ってやったんだろ?私にも、あの2人を見守るという約束があるんだ。
だから私にできることはしてやりたい』
そう言ってあいつは、笑った。
祈り子たちと話をして、全てが終わって晴れ晴れとした顔を俺に向けた。
酷く幼くすら見える、見慣れたその顔を見て、思わず迎えに行くように数歩彼女に歩み寄っていた。
笑顔のまま、俺の腕の中に大人しく収まったラフテルをしっかりと抱き締めて、俺は安堵したのかもしれない。
しばらくそのままの体制で佇んで、違和感に気付いた。
「…ラフテル?」
声をかけても返事なはく、身動きひとつしない。
まさか疲れて眠ってしまったのかと、僅かに力を緩めて彼女の顔を覗き込んだ。
案の定瞼を落としてしまった彼女の無防備な顔に小さく苦笑を浮かべた。
「ラフテル、家に帰るまでもう少し辛抱しろ」
軽く肩を揺すりながら声を掛けるも返事どころか反応すらない。
この一瞬でそんなに深い眠りに落ちるとは考えられない。
狸寝入りでもしているなら……と、肩を先程よりも強く揺さぶった瞬間だった。
「!! お、おいっ!!」
俺の体に凭れていた彼女を引き剥がした途端、俺という支えを失ったラフテルは膝から崩れ落ちた。
間一髪でその体を再び腕の中へ抱き締めるが、ピクリとも反応を示さぬ彼女の身体は、酷く冷たかった。
祈り子たちと一旦別れ、すぐにブラスカと共に住み慣れた部屋へ戻ることにした。
薄い呼吸を辛うじて繰り返しているだけのラフテルは、一見ただ眠っているだけのように見える。
だがその顔は血の気が引いて青白い。
まるで、もう目覚めないのではないか、このまま消えてしまうのではないかと思えてくる。
「…ラフテル」
女々しい、と己の呟きを耳にして自嘲する。
祈り子たちに問いただせば、何かわかるかもしれないだろうが、今はまだ手を借りることはできないだろう。
彼女のこれまでの仕事の成果がやっと形になる大事なときなのだ。
それを邪魔するわけにはいかない。
なぜこんなことになったのか、これからどうなってしまうのか、何をすべきなのか、
様々な考えが浮かんでは消えていき、思い描いては振り払っていく。
出るのは重い溜め息ばかりだ。
どれだけ、彼女に心を奪われてしまったのかと、今更ながらラフテルの存在の大きさに驚かされた。
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7,jun,2015