第5章【その武器の名はキーブレード】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【 42 】
こんな場所を知っている。
だがそれがどこであったのか思い出せない。
薄暗く湿っていて、障気の混じった重い空気が肌に張り付くように感じられる。
辛うじて通れるだけの岩肌の小道は決して歩きやすいとは言えない。
足を滑らせれば、深い闇の底に飲み込まれてしまうだろう。
僅かな明かりは、渦巻く空気に揺れる小さな炎だけの灯火。
背後から迫り来るは闇の世界の住人達。
前に進むしかない。
己独りの身ならばいざ知らず、共に進むいくつかの人影は俺よりも遥かに小さくて。
この少年達も、戦いの中に身を置いてきたのだろう。
スピラの海のように美しく光る蒼き瞳は、力強く輝いて見える。
その少年と共に在る喋る獣?が一体何なのか理解できないが、それでもこんな幼い子供達だけでここへやって来たということは、何かしらの深い訳があるのだろう。
…俺で彼らの力になれることがあるのならば、先程のこともある。
礼の代わりに借りは返さねば。
「はあ、はあ…」
「もう、大丈夫かな?」
軽く曲げた膝に己の両手で支えた上半身が、呼吸を繰り返す度に大きく揺れる。
この小さい体では、やはりあの数の魔物と戦うのはかなりの負担なのだろう。
「どうかな」
少年の呟きに賛同はできない。
異界とも違う、不気味な空気が充満しているこの空間では、魔物の気配は至るところから感じられる。
ふいにその気配が急激に高まったかと思うと、目の前にそいつが現れた。
「うん、甘い甘い」
「!!」
反射的に太刀を振り下ろす。
霞でも割いたような、全く無い手応えに思わず舌打ちしてしまう。
気味の悪い笑い声だけを残し、空気に溶けるように消えていった。
目の前にあるのは、岩肌に空けられた穴。
あの男が姿を表したことで奮起したのか、少年は迷わずそこに向かっていく。
あの部屋に呼び出された俺にはこの世界、この空間がどんなものなのか全くわからない。
部屋の扉を開けて入ってきたのならば、この道を知っていて当然か。
穴の中を走り抜け、少々開けた場所に出た。
少年がその場にぺたりと腰を落とした。
共にいる獣達も肩で息を弾ませている。
俺も、僅かに上がった呼吸を整えるように深く息を吸って吐き出した。
「おじさん強いね。 もしかして英雄?」
「(ひーろー…?)…そんなものではない。 俺は……」
「?」
「…ただの、アーロンだ」
「あー、ろん?」
「…俺の名だ」
少年がその顔に笑顔を浮かべ、ガバリと立ち上がった。
「俺はソラ!」
この身長に見合わぬ大きな手で俺の片手を握り締めた。
でかい目でじっと見上げる顔は本当に幼い。
その顔が突然視界から消え、代わりにぬいぐるみのような動物の顔が現れた。
「ドナルド!」
「グーフィーだよ」
「これも何かの縁だろう。 ここを出るまでガードになってやる」
「ガード? いらないよ、そんなの」
そのはっきりとした否定は決して嫌味を感じさせない。
むしろ少年の、いやソラの気持ちの強さが前面に出た、心地よい返事に聞こえた。
→
14,jul,2015
こんな場所を知っている。
だがそれがどこであったのか思い出せない。
薄暗く湿っていて、障気の混じった重い空気が肌に張り付くように感じられる。
辛うじて通れるだけの岩肌の小道は決して歩きやすいとは言えない。
足を滑らせれば、深い闇の底に飲み込まれてしまうだろう。
僅かな明かりは、渦巻く空気に揺れる小さな炎だけの灯火。
背後から迫り来るは闇の世界の住人達。
前に進むしかない。
己独りの身ならばいざ知らず、共に進むいくつかの人影は俺よりも遥かに小さくて。
この少年達も、戦いの中に身を置いてきたのだろう。
スピラの海のように美しく光る蒼き瞳は、力強く輝いて見える。
その少年と共に在る喋る獣?が一体何なのか理解できないが、それでもこんな幼い子供達だけでここへやって来たということは、何かしらの深い訳があるのだろう。
…俺で彼らの力になれることがあるのならば、先程のこともある。
礼の代わりに借りは返さねば。
「はあ、はあ…」
「もう、大丈夫かな?」
軽く曲げた膝に己の両手で支えた上半身が、呼吸を繰り返す度に大きく揺れる。
この小さい体では、やはりあの数の魔物と戦うのはかなりの負担なのだろう。
「どうかな」
少年の呟きに賛同はできない。
異界とも違う、不気味な空気が充満しているこの空間では、魔物の気配は至るところから感じられる。
ふいにその気配が急激に高まったかと思うと、目の前にそいつが現れた。
「うん、甘い甘い」
「!!」
反射的に太刀を振り下ろす。
霞でも割いたような、全く無い手応えに思わず舌打ちしてしまう。
気味の悪い笑い声だけを残し、空気に溶けるように消えていった。
目の前にあるのは、岩肌に空けられた穴。
あの男が姿を表したことで奮起したのか、少年は迷わずそこに向かっていく。
あの部屋に呼び出された俺にはこの世界、この空間がどんなものなのか全くわからない。
部屋の扉を開けて入ってきたのならば、この道を知っていて当然か。
穴の中を走り抜け、少々開けた場所に出た。
少年がその場にぺたりと腰を落とした。
共にいる獣達も肩で息を弾ませている。
俺も、僅かに上がった呼吸を整えるように深く息を吸って吐き出した。
「おじさん強いね。 もしかして英雄?」
「(ひーろー…?)…そんなものではない。 俺は……」
「?」
「…ただの、アーロンだ」
「あー、ろん?」
「…俺の名だ」
少年がその顔に笑顔を浮かべ、ガバリと立ち上がった。
「俺はソラ!」
この身長に見合わぬ大きな手で俺の片手を握り締めた。
でかい目でじっと見上げる顔は本当に幼い。
その顔が突然視界から消え、代わりにぬいぐるみのような動物の顔が現れた。
「ドナルド!」
「グーフィーだよ」
「これも何かの縁だろう。 ここを出るまでガードになってやる」
「ガード? いらないよ、そんなの」
そのはっきりとした否定は決して嫌味を感じさせない。
むしろ少年の、いやソラの気持ちの強さが前面に出た、心地よい返事に聞こえた。
→
14,jul,2015