第4章【再会、だけど…】
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『37』~なぜ戦う~
「はあああっ!!」
気迫を入れ直して、両腕に力を入れる。
私を小馬鹿にしたことで、僅かに奴の剣に乗せられた力が緩んだ隙に撥ね退ける。
後方に飛んで両手に魔力を溜めていく。
弾かれた太刀を構え直しているアーロン目がけて、剣技ではなく魔法をぶつけた。
「『サンダガ!』」
「!!」
「『ヘイスト』」
すぐに自分自身にも魔法をかける。
少しでも素早さをあげて奴の攻撃の隙をつかなくてはならない。
私の魔法をまともに受けたらしいアーロンは、体に残る青白い火花のようなスパークを振り払っていた。
「『ファイガ!』」
「…くっ!」
立て続けにもう1発。
大きな炎の柱がアーロン目掛けて立ち上る。
間一髪横に逸れてかわしたようだが、炎は避けられても炎を生み出している魔法の障壁の影響は多少受けたようだ。
防具を嵌めていない素手から僅かに煙が上がる。
…ふと気付いた。
防具を、嵌めていない…?
いつも懐に隠すように入れている左腕はともかく、右腕は遊びの大きい奴の服の袖を纏めている防具があったはずだ。
だが、今は奴はそれをしていない。
それに、妙な違和感があった奴の顔も、サングラスがない。
だからなのか、普段見慣れたはずの顔なのに、いつもより若く感じるのは…。
そうか、だからだ。
だから余計にこのアーロンを、あの時のアーロンと重ねて見てしまうのだ。
「うわあっ! ラフテル、どこ狙ってる!? あちちちっ!!」
アーロンに向けて放ったつもりの炎が、彼が避けてしまった為に変態野郎のほうへ向かっていったようだ。
声は耳に届いたが、そんなこと気にしている場合ではない。
私の魔法をかわしたからといって気を抜くような男ではない。
下段に構えたままの姿勢で、アーロンがこちらに向かってくる。
またあの重い一撃を受けるのは正直厳しい。
ただでさえ太刀の重量が半端無いというのに、それをこの速さで振り回すことができるこの男が化け物なのだ。
力押しに力で対抗するのは得策ではない。
相手の剣捌きを別方向に流してやるだけ。
私の細い小太刀ではそれが精一杯。
金属同士が擦れ合う耳障りな音が、岩肌剥き出しの小さな部屋に響き渡る。
ぶつかった瞬間に小さな火花が互いの顔を一瞬だけ照らし出す。
アーロンが、私を見ている。
“敵”と認識した瞳で。
ゾクリと寒気が走りそうな目で見つめられることが、こんなにも苦痛だったなんて。
普段何気ない表情の、それでもいつでも怒っているような目でも、今の恐ろしい眼差しよりも何倍もマシだ。
…私は、私も、こんな目で相手を、アーロンを見ているのだろうか。
刃物がぶつかり、擦れ合い、空を斬る音が幾度も幾度も響く。
その音が増えるたびに、私は辛さが募っていく。
なぜ、私はこいつと戦っているのだろうか。
彼が彼だと信じられないから?
彼が私に向かってくるから?
変態野郎の命令だから?
ここから逃げ出したいと、いつでも思っていたはずなのに…
→
9,jul,2015
「はあああっ!!」
気迫を入れ直して、両腕に力を入れる。
私を小馬鹿にしたことで、僅かに奴の剣に乗せられた力が緩んだ隙に撥ね退ける。
後方に飛んで両手に魔力を溜めていく。
弾かれた太刀を構え直しているアーロン目がけて、剣技ではなく魔法をぶつけた。
「『サンダガ!』」
「!!」
「『ヘイスト』」
すぐに自分自身にも魔法をかける。
少しでも素早さをあげて奴の攻撃の隙をつかなくてはならない。
私の魔法をまともに受けたらしいアーロンは、体に残る青白い火花のようなスパークを振り払っていた。
「『ファイガ!』」
「…くっ!」
立て続けにもう1発。
大きな炎の柱がアーロン目掛けて立ち上る。
間一髪横に逸れてかわしたようだが、炎は避けられても炎を生み出している魔法の障壁の影響は多少受けたようだ。
防具を嵌めていない素手から僅かに煙が上がる。
…ふと気付いた。
防具を、嵌めていない…?
いつも懐に隠すように入れている左腕はともかく、右腕は遊びの大きい奴の服の袖を纏めている防具があったはずだ。
だが、今は奴はそれをしていない。
それに、妙な違和感があった奴の顔も、サングラスがない。
だからなのか、普段見慣れたはずの顔なのに、いつもより若く感じるのは…。
そうか、だからだ。
だから余計にこのアーロンを、あの時のアーロンと重ねて見てしまうのだ。
「うわあっ! ラフテル、どこ狙ってる!? あちちちっ!!」
アーロンに向けて放ったつもりの炎が、彼が避けてしまった為に変態野郎のほうへ向かっていったようだ。
声は耳に届いたが、そんなこと気にしている場合ではない。
私の魔法をかわしたからといって気を抜くような男ではない。
下段に構えたままの姿勢で、アーロンがこちらに向かってくる。
またあの重い一撃を受けるのは正直厳しい。
ただでさえ太刀の重量が半端無いというのに、それをこの速さで振り回すことができるこの男が化け物なのだ。
力押しに力で対抗するのは得策ではない。
相手の剣捌きを別方向に流してやるだけ。
私の細い小太刀ではそれが精一杯。
金属同士が擦れ合う耳障りな音が、岩肌剥き出しの小さな部屋に響き渡る。
ぶつかった瞬間に小さな火花が互いの顔を一瞬だけ照らし出す。
アーロンが、私を見ている。
“敵”と認識した瞳で。
ゾクリと寒気が走りそうな目で見つめられることが、こんなにも苦痛だったなんて。
普段何気ない表情の、それでもいつでも怒っているような目でも、今の恐ろしい眼差しよりも何倍もマシだ。
…私は、私も、こんな目で相手を、アーロンを見ているのだろうか。
刃物がぶつかり、擦れ合い、空を斬る音が幾度も幾度も響く。
その音が増えるたびに、私は辛さが募っていく。
なぜ、私はこいつと戦っているのだろうか。
彼が彼だと信じられないから?
彼が私に向かってくるから?
変態野郎の命令だから?
ここから逃げ出したいと、いつでも思っていたはずなのに…
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9,jul,2015