第3章【見つけ出してやる】
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【 29 】
2年前の時のとは違う、真っ赤な機体。
形や大きさが違えど、これは確かに空を飛ぶ船。
初めて乗ったときは、それが船だとは知らずにいたが、今回は違う。
目の前に停泊した、轟音を上げる、鉄の塊。
その派手な外装から、ユウナ達、旅の仲間の趣味を窺い知ることができる。
…やれやれだ。
乗組員に紹介するからと、艦橋に案内されたが、そんな挨拶も会話も煩わしいとしか思えない。
艦橋への扉の外の壁に背を預けて腕を組んだ。
あの頃、こうして立っていると、足元に蹲る存在があったものだが、今は何もない。
酷く気分が悪そうにしておかしな声を上げていたものだと、独り過去を思い出しては苦笑を浮かべてしまう。
『ベベルまであっという間ですよ』
ユウナの言葉が蘇る。
その言葉には嘘はないようだ。
窓の外の景色が物凄い速さで流れていく。
ユウナは、彼女達はこの船でこのスピラを飛び回っているのか。
旅の行程も鍛錬の1つだと思える俺の考えは、もう古いのかもしれん。
程なく、ベベル寺院が眼下に見えてきた。
本当にあっという間だったな。
ベベルに到着して、ユウナ達をラフテルの部屋に案内する。
ユウナ達はラフテルに会えることが余程嬉しいのだろう、始終楽しそうにはしゃいでいる。
部屋の前で足を止め、扉に手をかけた。
「………」
「アーロンさん?」
「ここから先はお前たちだけで行け」
「え…、アーロンさん、は?」
「…他にやることがある」
「で、でも、ラフテルさんには…」
「会わん。顔を見せればまた…」
「また…?」
「ちょっと、おっちゃん、ラフテルに何かしたわけ~?」
俺は何も言わずに踵を返した。
これ以上この娘達と問答を繰り返しても時間の無駄だ。
それに、やるべきことがあることも事実だ。
ベベルに到着し、この部屋に来るまでに例の知らせが届いたからだ。
背後から上がった女どもの甲高い声を耳にして、ラフテルの、彼女の嬉しそうな顔を思い浮かべる。
いつもは少々キツイ目つきの彼女の顔が、笑うとずっと幼く見える。
その顔を、もう俺に向けることは無い。
…もう見ることは、俺に向けられることはないのだろうか?
窓の隙間から幻光虫となってフワリと浮かび上がる。
女一人のために、たった一人の女の為に俺は何をやっているのだ。
彼女がここに存在する理由は何なのだろうか?
俺という魂が無ければ、この想いが無ければ、幻光虫となって霧散してしまうであろう彼女を、こうしてまでそこに繋ぎ止めておかねばならない理由など、俺だけの勝手なエゴだ。
俺の子供じみた我侭に、彼女はつき合わされているだけだ。
俺を忘れ、俺を恐怖の対象としか見ることのできない彼女には、ひどく苦痛でしかないのだろう。
それでも俺は、俺は…。
忘れられて、拒絶されて、一層彼女への想いは大きくなる。
これほどまでに俺は彼女に心惹かれていたというのか。
…あいつの時間は俺のものだ。
これはただの独占欲なのだろうか。
→
1,jul,2015
2年前の時のとは違う、真っ赤な機体。
形や大きさが違えど、これは確かに空を飛ぶ船。
初めて乗ったときは、それが船だとは知らずにいたが、今回は違う。
目の前に停泊した、轟音を上げる、鉄の塊。
その派手な外装から、ユウナ達、旅の仲間の趣味を窺い知ることができる。
…やれやれだ。
乗組員に紹介するからと、艦橋に案内されたが、そんな挨拶も会話も煩わしいとしか思えない。
艦橋への扉の外の壁に背を預けて腕を組んだ。
あの頃、こうして立っていると、足元に蹲る存在があったものだが、今は何もない。
酷く気分が悪そうにしておかしな声を上げていたものだと、独り過去を思い出しては苦笑を浮かべてしまう。
『ベベルまであっという間ですよ』
ユウナの言葉が蘇る。
その言葉には嘘はないようだ。
窓の外の景色が物凄い速さで流れていく。
ユウナは、彼女達はこの船でこのスピラを飛び回っているのか。
旅の行程も鍛錬の1つだと思える俺の考えは、もう古いのかもしれん。
程なく、ベベル寺院が眼下に見えてきた。
本当にあっという間だったな。
ベベルに到着して、ユウナ達をラフテルの部屋に案内する。
ユウナ達はラフテルに会えることが余程嬉しいのだろう、始終楽しそうにはしゃいでいる。
部屋の前で足を止め、扉に手をかけた。
「………」
「アーロンさん?」
「ここから先はお前たちだけで行け」
「え…、アーロンさん、は?」
「…他にやることがある」
「で、でも、ラフテルさんには…」
「会わん。顔を見せればまた…」
「また…?」
「ちょっと、おっちゃん、ラフテルに何かしたわけ~?」
俺は何も言わずに踵を返した。
これ以上この娘達と問答を繰り返しても時間の無駄だ。
それに、やるべきことがあることも事実だ。
ベベルに到着し、この部屋に来るまでに例の知らせが届いたからだ。
背後から上がった女どもの甲高い声を耳にして、ラフテルの、彼女の嬉しそうな顔を思い浮かべる。
いつもは少々キツイ目つきの彼女の顔が、笑うとずっと幼く見える。
その顔を、もう俺に向けることは無い。
…もう見ることは、俺に向けられることはないのだろうか?
窓の隙間から幻光虫となってフワリと浮かび上がる。
女一人のために、たった一人の女の為に俺は何をやっているのだ。
彼女がここに存在する理由は何なのだろうか?
俺という魂が無ければ、この想いが無ければ、幻光虫となって霧散してしまうであろう彼女を、こうしてまでそこに繋ぎ止めておかねばならない理由など、俺だけの勝手なエゴだ。
俺の子供じみた我侭に、彼女はつき合わされているだけだ。
俺を忘れ、俺を恐怖の対象としか見ることのできない彼女には、ひどく苦痛でしかないのだろう。
それでも俺は、俺は…。
忘れられて、拒絶されて、一層彼女への想いは大きくなる。
これほどまでに俺は彼女に心惹かれていたというのか。
…あいつの時間は俺のものだ。
これはただの独占欲なのだろうか。
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1,jul,2015