第3章【見つけ出してやる】
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【 28 】
さほど長い時間待たされることも無く、近くのドアが僅かに開かれ、そこからガキが顔だけを出して辺りの様子を伺っている。
無言のまま、俺に入るように手で合図してきた。
静かにドアをくぐり、音も無く閉めると、そこは先程入ったのとは違う、別の控え室のようだった。
「アーロンさん! お久しぶりです」
頭にタオルは載せているが、まだ髪からは水を滴らせたままのユウナが小走りで近づいてきた。
一目でユウナだとはわかったが、何か、こう…
随分印象が変わったようだ。
あの時、異界の底のあの暗い世界で彼女を目にしている。
あの時は感じなかったが、2年前からは想像もできないほどに明るく活発になったようだ。
この娘も、まだ戦っているのだ。
異界で起こったあの忌わしい事件のときもそうだった。
もうシンはいないと言うのに。
それでも未だ、過去に囚われたままの悲しい運命を辿る存在がある。
彼女は召喚士だった。
命を失った者達の魂を異界へと送る、大切な役目を持った存在。
過去の記憶や想いを留めたままの幻光虫が、未だ異界へ行くこともできずに彷徨っているのならば、彼女のような存在はまだまだ必要なのだろう。
「ラフテルさんはお元気ですか?」
お前も、彼女の名を出すのか。
……愚問だな。
ユウナの後ろのほうで、ギャーギャーと騒いでいる声が聞こえてくる。
2年前の旅でにぎやか担当だったアルベド族の娘、リュック。
そして昔のラフテルを思い出させる黒服の短髪の娘。
この2人も、異界で姿を見かけていたな。
静かにするように手振りを交えながら宥めているガキに視線を向けた。
「…先程、あいつにも少し話したのだが」
「……ティーダ、に?」
ユウナもガキのほうを振り返って、少しばかり怪訝そうな表情を見せた。
「お前はまだ試合中だったからな」
「はい。カモメ団、よろしく!です! …それで、どんなお話を?」
「(…カモメ団…?)あぁ、……あー…」
「?」
「時間はあるか? 一緒に来てくれ。直接会ったほうが早い」
「わあっ!!会えるんですか! 行きます行きます!」
「ちょっとユウナ、どこ行こうっての! すぐオーラカの試合始まっちゃうんだよ」
「そースよ、ユウナ。応援してくれるって…」
「リュック、リュックも行こう!パインも! ラフテルさんに会いに!!」
「ええぇっ!! ラフテルに!? 行く行く! ね、パインも行くよね」
「どうせ行かないって言っても、連れて行くんだろ」
「「あったり~~!!」」
子供のようにはしゃぐ2人の娘と、呆れたように視線を向けるもう一人の娘。
そしてあからさまに落ち込むガキ。
こんな滑稽な様子は本当に久しぶりだ。
「…アーロン、何笑ってるっスか…」
「…ふっ」
「ごめんね~。でもちゃんと応援してるから頑張ってね。 …あ、通信スフィア持って行くから結果、教えてね」
「うっス。 ユウナもラフテルのこと、教えてくれよな」
「うん!」
「もう、ラブラブ~~」
「見ていられないな」
「リュック! 冷やかさないでよ、もう!」
「んで、おっちゃんもラフテルとラブラブ~、なんでしょ?」
「………」
「「?」」
俺にまで冷やかしの声が掛けられるとは思ってもいなかったが、それでも何をどう応えていいものか、何も返すことはできなかった。
→
30,jun,2015
さほど長い時間待たされることも無く、近くのドアが僅かに開かれ、そこからガキが顔だけを出して辺りの様子を伺っている。
無言のまま、俺に入るように手で合図してきた。
静かにドアをくぐり、音も無く閉めると、そこは先程入ったのとは違う、別の控え室のようだった。
「アーロンさん! お久しぶりです」
頭にタオルは載せているが、まだ髪からは水を滴らせたままのユウナが小走りで近づいてきた。
一目でユウナだとはわかったが、何か、こう…
随分印象が変わったようだ。
あの時、異界の底のあの暗い世界で彼女を目にしている。
あの時は感じなかったが、2年前からは想像もできないほどに明るく活発になったようだ。
この娘も、まだ戦っているのだ。
異界で起こったあの忌わしい事件のときもそうだった。
もうシンはいないと言うのに。
それでも未だ、過去に囚われたままの悲しい運命を辿る存在がある。
彼女は召喚士だった。
命を失った者達の魂を異界へと送る、大切な役目を持った存在。
過去の記憶や想いを留めたままの幻光虫が、未だ異界へ行くこともできずに彷徨っているのならば、彼女のような存在はまだまだ必要なのだろう。
「ラフテルさんはお元気ですか?」
お前も、彼女の名を出すのか。
……愚問だな。
ユウナの後ろのほうで、ギャーギャーと騒いでいる声が聞こえてくる。
2年前の旅でにぎやか担当だったアルベド族の娘、リュック。
そして昔のラフテルを思い出させる黒服の短髪の娘。
この2人も、異界で姿を見かけていたな。
静かにするように手振りを交えながら宥めているガキに視線を向けた。
「…先程、あいつにも少し話したのだが」
「……ティーダ、に?」
ユウナもガキのほうを振り返って、少しばかり怪訝そうな表情を見せた。
「お前はまだ試合中だったからな」
「はい。カモメ団、よろしく!です! …それで、どんなお話を?」
「(…カモメ団…?)あぁ、……あー…」
「?」
「時間はあるか? 一緒に来てくれ。直接会ったほうが早い」
「わあっ!!会えるんですか! 行きます行きます!」
「ちょっとユウナ、どこ行こうっての! すぐオーラカの試合始まっちゃうんだよ」
「そースよ、ユウナ。応援してくれるって…」
「リュック、リュックも行こう!パインも! ラフテルさんに会いに!!」
「ええぇっ!! ラフテルに!? 行く行く! ね、パインも行くよね」
「どうせ行かないって言っても、連れて行くんだろ」
「「あったり~~!!」」
子供のようにはしゃぐ2人の娘と、呆れたように視線を向けるもう一人の娘。
そしてあからさまに落ち込むガキ。
こんな滑稽な様子は本当に久しぶりだ。
「…アーロン、何笑ってるっスか…」
「…ふっ」
「ごめんね~。でもちゃんと応援してるから頑張ってね。 …あ、通信スフィア持って行くから結果、教えてね」
「うっス。 ユウナもラフテルのこと、教えてくれよな」
「うん!」
「もう、ラブラブ~~」
「見ていられないな」
「リュック! 冷やかさないでよ、もう!」
「んで、おっちゃんもラフテルとラブラブ~、なんでしょ?」
「………」
「「?」」
俺にまで冷やかしの声が掛けられるとは思ってもいなかったが、それでも何をどう応えていいものか、何も返すことはできなかった。
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30,jun,2015