第3章【見つけ出してやる】
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『21』~初めての対峙~
闘技場の向こうから、真っ白な翼をはためかせて、そいつは現れた。
その姿を見た瞬間の人々の歓声はもはや悲鳴に近いものとなって聞こえてくる。
真っ白な、…あれは、翼を持った、馬!?
ペガサス!!
………。
驚くことなんてない。
こんな不思議な生き物はもういくつも目にしてきたはずだ。
先程のサテュロス然り。
そうだ。
観客席にだって、昔絵本で見たことがあるような不思議な姿をした者がいたりする。
ここはそういう世界なのだと捉えていたはず。
スピラや異界にだっておかしな生物はたくさんいる。
彼らから見れば、私たち人間だってそんな生物の1つに過ぎないのだ。
真っ白なペガサスが闘技場の真ん中にフワリと降り立った。
その背に1人の若者を乗せて。
若者がヒラリと優雅にペガサスの背から舞い降り、そこへ短い足を懸命に動かしてサテュロスが走り寄る。
本当にその姿は滑稽で可愛いらしくすら見える。
会場のアナウンスらしき声が響き渡っているが、その言語はわからない。
何を言っているのか全く理解できないが、恐らくこの若者のことを盛大に紹介しているのだろう。
若者が観客席に向かって声援に応える様に大きく両手を振っている。
笑顔が眩しい、爽やかな好青年のようだ。
観客もまた、彼の登場に盛大に盛り上がっている。
そんな姿をしばらく見つめていると、若者とサテュロスは辺りをキョロキョロと見回しては互いに首を傾げている。
対戦相手の姿でも探しているのだろうか。
などと暢気に考えている場合ではない。
その対戦相手は、私なのだ。
観客席からは、この若者の名を繰り返しコールする声援が鳴り響いている。
観客たちももう待ちきれないのか、はやし立てる様に席を立つ者の姿も見えた。
「……そろそろかな」
塔の先端の装飾から手を離して、私はそこから1歩足を踏み出した。
突然訪れる落下の感覚。
近づく地面との距離を測る時間はそれほど長くはない。
空中浮遊の魔法の応用で、地面との接点に小さな空気の塊を生み出して衝撃を和らげる。
傍から見れば重力を感じさせない、ゆっくりとした着地。
空気によって舞い上げられた私の服や髪が、魔法の効力が失われるのと同時にフワリと元に戻る。
両足をしっかりと地につけて、己自身の体重とのバランスを確認して、私は目を開いた。
私が降り立ったところは、大きな石版でできた掲示板の前。
そこから闘技場の中央までは少々距離がある。
私の姿に気付いた対戦相手が、こちらに警戒剥き出しの気配をぶつけているのがわかった。
観客たちの声が次第に会場全体を包み込んでいく。
私は中央に立つ若者から目を離さなかった。
若者も、私をじっと見つめ続けていた。
距離が大分近づいたところで、若者はサテュロスに何か言葉を掛け、小さな生物はペガサスと共に会場を離れた。
戦いが、始まる。
警戒
警戒
警戒
ピリピリとした緊張感が私まで伝わってくるようだ。
私を睨みつけるわけでもなく、ただ、正体のわからない見たこともない女に、どう反応していいのか考えているように見える。
「…君は、誰だい?」
見た目に反することなく、爽やかに声を掛けてきた若者。
今日の対戦相手が誰かを知らないのか。
ある程度の距離まで歩み寄ったところで、私は足を止めた。
「私はラフテル。 …あなたが—————?」
「ああ。それで、ここで何を? 僕はこれから……」
「私はあなたを倒しに来た」
→
23,jun,2015
闘技場の向こうから、真っ白な翼をはためかせて、そいつは現れた。
その姿を見た瞬間の人々の歓声はもはや悲鳴に近いものとなって聞こえてくる。
真っ白な、…あれは、翼を持った、馬!?
ペガサス!!
………。
驚くことなんてない。
こんな不思議な生き物はもういくつも目にしてきたはずだ。
先程のサテュロス然り。
そうだ。
観客席にだって、昔絵本で見たことがあるような不思議な姿をした者がいたりする。
ここはそういう世界なのだと捉えていたはず。
スピラや異界にだっておかしな生物はたくさんいる。
彼らから見れば、私たち人間だってそんな生物の1つに過ぎないのだ。
真っ白なペガサスが闘技場の真ん中にフワリと降り立った。
その背に1人の若者を乗せて。
若者がヒラリと優雅にペガサスの背から舞い降り、そこへ短い足を懸命に動かしてサテュロスが走り寄る。
本当にその姿は滑稽で可愛いらしくすら見える。
会場のアナウンスらしき声が響き渡っているが、その言語はわからない。
何を言っているのか全く理解できないが、恐らくこの若者のことを盛大に紹介しているのだろう。
若者が観客席に向かって声援に応える様に大きく両手を振っている。
笑顔が眩しい、爽やかな好青年のようだ。
観客もまた、彼の登場に盛大に盛り上がっている。
そんな姿をしばらく見つめていると、若者とサテュロスは辺りをキョロキョロと見回しては互いに首を傾げている。
対戦相手の姿でも探しているのだろうか。
などと暢気に考えている場合ではない。
その対戦相手は、私なのだ。
観客席からは、この若者の名を繰り返しコールする声援が鳴り響いている。
観客たちももう待ちきれないのか、はやし立てる様に席を立つ者の姿も見えた。
「……そろそろかな」
塔の先端の装飾から手を離して、私はそこから1歩足を踏み出した。
突然訪れる落下の感覚。
近づく地面との距離を測る時間はそれほど長くはない。
空中浮遊の魔法の応用で、地面との接点に小さな空気の塊を生み出して衝撃を和らげる。
傍から見れば重力を感じさせない、ゆっくりとした着地。
空気によって舞い上げられた私の服や髪が、魔法の効力が失われるのと同時にフワリと元に戻る。
両足をしっかりと地につけて、己自身の体重とのバランスを確認して、私は目を開いた。
私が降り立ったところは、大きな石版でできた掲示板の前。
そこから闘技場の中央までは少々距離がある。
私の姿に気付いた対戦相手が、こちらに警戒剥き出しの気配をぶつけているのがわかった。
観客たちの声が次第に会場全体を包み込んでいく。
私は中央に立つ若者から目を離さなかった。
若者も、私をじっと見つめ続けていた。
距離が大分近づいたところで、若者はサテュロスに何か言葉を掛け、小さな生物はペガサスと共に会場を離れた。
戦いが、始まる。
警戒
警戒
警戒
ピリピリとした緊張感が私まで伝わってくるようだ。
私を睨みつけるわけでもなく、ただ、正体のわからない見たこともない女に、どう反応していいのか考えているように見える。
「…君は、誰だい?」
見た目に反することなく、爽やかに声を掛けてきた若者。
今日の対戦相手が誰かを知らないのか。
ある程度の距離まで歩み寄ったところで、私は足を止めた。
「私はラフテル。 …あなたが—————?」
「ああ。それで、ここで何を? 僕はこれから……」
「私はあなたを倒しに来た」
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23,jun,2015