第3章【見つけ出してやる】
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『20』~試合開始直前~
コロシアムの観客席の背後には、高く細長い塔が2本立っている。
その間に建てられた1枚の大きな石版。
私には読めない、見たことも無い変わった文字が刻み込まれている。
たぶんこれがこの世界の文字なのだろう。
文字を書く、という風習がないのか、そのような道具がないのかはわからないが、直接石版に文字を刻み込んでいる。
いつも、あの変態野郎の側をちょろちょろと走り回って小間使いをさせられている、小さな鼠のような生き物。
風変わりな尖った口と耳、そして背中には小さな羽根が生えていて、自由に宙を飛ぶこともできるようだ。
取り外しのできるであろう、その石版に文字を刻み込んでいくのは、その小さな生き物たち。
一体何体いるのだろう。
よく見るとあちらこちらで走り回っていたり、煩く宙を飛んでは何かを運んでいたりしている。
この文字が何を表しているものなのかなんて、私にはわからない。
このコロシアムのことか、それとも今までの戦いの結果なのか、それとも今日の予定でも書き込んでいるのだろうか?
それにしても、と、観客席を埋め尽くすたくさんの人間やそうでもない者たちを見渡してみる。
こいつらは普段、何をしている者たちなのだろうか?
その服装が身分を表しているのかどうかはわからない。
この世界の通貨も知らないし、流通がどんなものなのかもわからない。
もちろん流行りも知らないし、特産も名産も知らない。
だけど今はそんなことはどうでもいいことだ。
今の私にははっきり言って全く関係ないことなのだ。
私にとっては、今から戦うことになる人物のほうが遥かに興味が大きい。
塔の先端に施されたこの世界特有の彫刻の装飾台の上から、コロシアム全体を見つめていた。
ざわざわと、風とも水の流れとも取れるような人ごみの騒音が耳に届く。
ふいにその音が突然音量を増した。
会場がビリビリと震えているような歓声はまさに割れんばかりの人々の出す歓喜の声。
自分が今立っている塔の下の石版には、先程から見えていた小さな鼠のような生物。
大慌てで石版に何やら刻み込んでいる姿があった。
歓声はしばらく会場を包み、闘技スペースの奥の扉が開かれた。
声援はさらに大きさを増して、ここに集う者たちの興奮を表している。
そして開かれた扉の更に奥から、何かが会場に向かって近づいてくる。
コロシアムはかなりの広さだ。
私がいる位置からは、その姿を確認することができない。
だが、こちらに近づいてくる気配を感じ取ることはできる。
人々の視線はその一点に集中していた。
もちろん、私も。
両脇を高い壁に囲まれた細い通路。
日の光の届かないそこを通り抜けると、戦いが行われる闘技場だ。
一気に日の光を浴びて、登場した人物が照らし出される。
会場の歓声は一気に最高潮に高まった。
………
………?
そこに現れたのは、—————ではなかった。
「…なんだ、あれ…? …サテュロス…?」
半身半獣の小さな生き物がトコトコと闘技場に入ってきた。
ベベルの寺院で幼少の頃に読んだ絵本に登場した、不思議な生き物。
だがその姿は、絵本の中に描かれた挿絵とは似ても似つかないもの。
確かに下半身は獣のそれだが、上半身はどう見ても中年のオヤジ。
ここからではその大きさはよくわからないが、周囲の壁や観客から比べるに、自分の半分もなさそうだ。
特徴的な尻尾を振りながら、辺りをキョロキョロと見回している姿はどこか幼く、滑稽だ。
なんだ、このコロシアムにはこんな生物も出場するのかと思って、思わず口元が緩んでしまう。
下の石版の文字が読めたら、どんな奴が登場するのかなんてことも書いてあったのかもしれない。
人々の歓声は笑い声とブーイングに変わっていた。
彼らも、—————が登場するものだと思っていたのだろう。
期待を裏切られた感があるのは、私も同じだった。
私の対戦相手は、この半山羊親父ということになるのだろうか。
半山羊親父が人々の反応を静めるかのように何かのジェスチャーをあちこちの方向に向けている。
流石に声までは届かない。
この人々の多さでは尚更だ。
それでも暫くすると人々は落ち着いてきたのか、会場は少し静かになる。
どこからともなく、馬の嘶く声が響き渡ったかと思うと……
奴が現れた。
→
22,jun,2015
コロシアムの観客席の背後には、高く細長い塔が2本立っている。
その間に建てられた1枚の大きな石版。
私には読めない、見たことも無い変わった文字が刻み込まれている。
たぶんこれがこの世界の文字なのだろう。
文字を書く、という風習がないのか、そのような道具がないのかはわからないが、直接石版に文字を刻み込んでいる。
いつも、あの変態野郎の側をちょろちょろと走り回って小間使いをさせられている、小さな鼠のような生き物。
風変わりな尖った口と耳、そして背中には小さな羽根が生えていて、自由に宙を飛ぶこともできるようだ。
取り外しのできるであろう、その石版に文字を刻み込んでいくのは、その小さな生き物たち。
一体何体いるのだろう。
よく見るとあちらこちらで走り回っていたり、煩く宙を飛んでは何かを運んでいたりしている。
この文字が何を表しているものなのかなんて、私にはわからない。
このコロシアムのことか、それとも今までの戦いの結果なのか、それとも今日の予定でも書き込んでいるのだろうか?
それにしても、と、観客席を埋め尽くすたくさんの人間やそうでもない者たちを見渡してみる。
こいつらは普段、何をしている者たちなのだろうか?
その服装が身分を表しているのかどうかはわからない。
この世界の通貨も知らないし、流通がどんなものなのかもわからない。
もちろん流行りも知らないし、特産も名産も知らない。
だけど今はそんなことはどうでもいいことだ。
今の私にははっきり言って全く関係ないことなのだ。
私にとっては、今から戦うことになる人物のほうが遥かに興味が大きい。
塔の先端に施されたこの世界特有の彫刻の装飾台の上から、コロシアム全体を見つめていた。
ざわざわと、風とも水の流れとも取れるような人ごみの騒音が耳に届く。
ふいにその音が突然音量を増した。
会場がビリビリと震えているような歓声はまさに割れんばかりの人々の出す歓喜の声。
自分が今立っている塔の下の石版には、先程から見えていた小さな鼠のような生物。
大慌てで石版に何やら刻み込んでいる姿があった。
歓声はしばらく会場を包み、闘技スペースの奥の扉が開かれた。
声援はさらに大きさを増して、ここに集う者たちの興奮を表している。
そして開かれた扉の更に奥から、何かが会場に向かって近づいてくる。
コロシアムはかなりの広さだ。
私がいる位置からは、その姿を確認することができない。
だが、こちらに近づいてくる気配を感じ取ることはできる。
人々の視線はその一点に集中していた。
もちろん、私も。
両脇を高い壁に囲まれた細い通路。
日の光の届かないそこを通り抜けると、戦いが行われる闘技場だ。
一気に日の光を浴びて、登場した人物が照らし出される。
会場の歓声は一気に最高潮に高まった。
………
………?
そこに現れたのは、—————ではなかった。
「…なんだ、あれ…? …サテュロス…?」
半身半獣の小さな生き物がトコトコと闘技場に入ってきた。
ベベルの寺院で幼少の頃に読んだ絵本に登場した、不思議な生き物。
だがその姿は、絵本の中に描かれた挿絵とは似ても似つかないもの。
確かに下半身は獣のそれだが、上半身はどう見ても中年のオヤジ。
ここからではその大きさはよくわからないが、周囲の壁や観客から比べるに、自分の半分もなさそうだ。
特徴的な尻尾を振りながら、辺りをキョロキョロと見回している姿はどこか幼く、滑稽だ。
なんだ、このコロシアムにはこんな生物も出場するのかと思って、思わず口元が緩んでしまう。
下の石版の文字が読めたら、どんな奴が登場するのかなんてことも書いてあったのかもしれない。
人々の歓声は笑い声とブーイングに変わっていた。
彼らも、—————が登場するものだと思っていたのだろう。
期待を裏切られた感があるのは、私も同じだった。
私の対戦相手は、この半山羊親父ということになるのだろうか。
半山羊親父が人々の反応を静めるかのように何かのジェスチャーをあちこちの方向に向けている。
流石に声までは届かない。
この人々の多さでは尚更だ。
それでも暫くすると人々は落ち着いてきたのか、会場は少し静かになる。
どこからともなく、馬の嘶く声が響き渡ったかと思うと……
奴が現れた。
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22,jun,2015