第3章【見つけ出してやる】
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『19』~どこにも行けない~
空腹感が訪れない。
眠ると言う行為を必要としない。
少し身体を休めれば体力は回復するし、魔力はほとんど失われない。
死人であるはずの自分の体のことはよくわかっているつもりだった。
異界で、スピラで、死人と言う存在がどんなものなのか嫌でも理解する。
だが、この世界での自分の身体は、死人のそれとは少々異なるようだ。
この世界で私が最初に覚醒したあの部屋は、今も私が使っている。
といっても、たまに身体を休めるくらいにしか使っていないのだが。
何度も何度もコロシアムに行った。
倒せと言われた、あの人物の戦闘を見るために。
そして、薄暗い洞窟の中を歩き回っては私と同じ印の付いたこっちの世界の魔物?と戦った。
あの変態野郎は、私のことを—————だと言った。
ならば、同じ印のついたこいつらも、同じ—————ということになるのだろうか?
—————って一体、どういうものなんだろうか。
…自分がこの奇妙な魔物と同じものだなんて、考えたくなかった。
こちらの世界に来て、自分の身体を幻光虫に変えることは変わらずにできることはわかった。
だが、この世界には幻光虫というものそのものが存在していないのか、あるいは違うものに置き換えられているのかわからないが、新たに幻光虫を取り込むということが全くできないことがわかった。
こちらの魔物との戦闘で傷ついた身体は光に変わることも無く、スピラで命を有していた時と同じように傷ついて血を流す。
ただ、その傷も死人であったとき以上にあっという間に消えて無くなってしまう。
その仕組みは理解できないが、幻光虫を取り込むことができない以上、勝手に回復してくれるこの身体は有難かった。
この不思議な身体を持つことが、—————たる証拠なのだろうか。
ふいに、空間に浮かび上がった黒い闇の扉。
歪んだ空気の塊が作り出す、異世界への入り口。
その中に感じる、独特の気配の持ち主に、私は思わず溜息が零れる。
「へ~へっへっへっへっ…。お元気?ラフテル ~」
「……気安く名を呼ぶな、変態め」
「あらら、相変わらず連れない」
私をこの世界に連れ込んだ張本人が、不気味な笑い声と共に部屋に入ってくる。
いつ見ても不気味でおぞましい。
というか、なんでこいつの頭って燃えてるんだろう…
「最近、あんまり遠くまで散歩に行かなくなったみたいだけど、なんかあった?」
「…すぐに連れ戻すくせに、よくそんなことを言うな」
この暗い洞窟の中だけでなく、この世界そのものがどういうものなのか、自分の目で確かめてみたいと思った。
だから、明るい空が見えるコロシアムから幻光虫となって宙に舞い上がった。
結構な高さまで来たときに、コロシアムがある闘技場の施設の大まかな形や周囲の地形、大きな街があるのが見えた。
同時に暗い瘴気の渦が取り囲む黒い森のような場所があることもわかった。
この大地がどこまで続いているのかはよくわからなかったが、そう大きな大陸というわけではなさそうだ。
もう少し上空まで行ってみようかと思ったが、すぐに身体に違和感を感じて、次の瞬間には変態野郎の部屋に戻された。
そんなことが数回続いて、結局私はこいつから逃げるどころか距離を置くことさえできないと悟った。
コロシアムに何度か足を運んでいるうちに、奴が倒せと言ったあの人物の戦いを見ることができた。
白銀に光り輝く剣を振りかざして、その彫刻のような肉体は伊達ではないと言わんばかりの力強さ。
洞窟の中に出てくる魔物とは比べ物にならないほどの巨体を誇る、あれも魔物の一種なのだろうか、そんな奴らと戦っていた。
私が幼い頃にベベルで習った物語の中に登場するような、不思議で強い生物たち。
そいつらの目は一様に血走って、狂気を孕んでいた。
この—————という男、特別な技を持っているわけはなさそうだ。
時折、私には耐えられないような眩しい神々しい光を放ち、その肉体からは想像できないほどの動きで見事に魔物を倒していく。
私が知る限り、こんな戦闘のタイプの人間に出会ったのは初めてだった。
「ふふ~ん、実は面白い噂が流れてきた」
「…噂?」
「とんでもなく強い—————がいる…」
「………」
「そいつはヒトの姿をしている。—————なのに。…そいつに会うことは、つまり消されるということ。1体だろうが数体だろうが関係な~い。
それに、見たことも無い技を使うらしい。 …あいつなら、—————を倒せるだろう、と」
「随分と他力本願な噂だな」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる変態野郎は、私がその噂の人物なのだと確信している。
私にそのつもりは毛頭無いが、奴は私を自分の僕(しもべ)だと思っている。
自分が作り出した—————が、この闇の世界でその力を示していることが嬉しいのだろうか。
「ん~、ふふん。…で?」
「……?」
「—————と、戦ってみる?」
「………」
そうだ。
その人物を倒すことが、こいつとの契約なのだ。
この洞窟内の同じような魔物とだけの戦闘に飽きてきていた私にとっても、はっきり言って楽しみでもある。
その人物をさっさと倒して、私は早く元の世界に戻りたいのだ。
相変わらず不気味にニヤニヤと笑うこいつに、返事の代わりに雷の魔法を落としてやった。
→
21,jun,2015
空腹感が訪れない。
眠ると言う行為を必要としない。
少し身体を休めれば体力は回復するし、魔力はほとんど失われない。
死人であるはずの自分の体のことはよくわかっているつもりだった。
異界で、スピラで、死人と言う存在がどんなものなのか嫌でも理解する。
だが、この世界での自分の身体は、死人のそれとは少々異なるようだ。
この世界で私が最初に覚醒したあの部屋は、今も私が使っている。
といっても、たまに身体を休めるくらいにしか使っていないのだが。
何度も何度もコロシアムに行った。
倒せと言われた、あの人物の戦闘を見るために。
そして、薄暗い洞窟の中を歩き回っては私と同じ印の付いたこっちの世界の魔物?と戦った。
あの変態野郎は、私のことを—————だと言った。
ならば、同じ印のついたこいつらも、同じ—————ということになるのだろうか?
—————って一体、どういうものなんだろうか。
…自分がこの奇妙な魔物と同じものだなんて、考えたくなかった。
こちらの世界に来て、自分の身体を幻光虫に変えることは変わらずにできることはわかった。
だが、この世界には幻光虫というものそのものが存在していないのか、あるいは違うものに置き換えられているのかわからないが、新たに幻光虫を取り込むということが全くできないことがわかった。
こちらの魔物との戦闘で傷ついた身体は光に変わることも無く、スピラで命を有していた時と同じように傷ついて血を流す。
ただ、その傷も死人であったとき以上にあっという間に消えて無くなってしまう。
その仕組みは理解できないが、幻光虫を取り込むことができない以上、勝手に回復してくれるこの身体は有難かった。
この不思議な身体を持つことが、—————たる証拠なのだろうか。
ふいに、空間に浮かび上がった黒い闇の扉。
歪んだ空気の塊が作り出す、異世界への入り口。
その中に感じる、独特の気配の持ち主に、私は思わず溜息が零れる。
「へ~へっへっへっへっ…。お元気?ラフテル ~」
「……気安く名を呼ぶな、変態め」
「あらら、相変わらず連れない」
私をこの世界に連れ込んだ張本人が、不気味な笑い声と共に部屋に入ってくる。
いつ見ても不気味でおぞましい。
というか、なんでこいつの頭って燃えてるんだろう…
「最近、あんまり遠くまで散歩に行かなくなったみたいだけど、なんかあった?」
「…すぐに連れ戻すくせに、よくそんなことを言うな」
この暗い洞窟の中だけでなく、この世界そのものがどういうものなのか、自分の目で確かめてみたいと思った。
だから、明るい空が見えるコロシアムから幻光虫となって宙に舞い上がった。
結構な高さまで来たときに、コロシアムがある闘技場の施設の大まかな形や周囲の地形、大きな街があるのが見えた。
同時に暗い瘴気の渦が取り囲む黒い森のような場所があることもわかった。
この大地がどこまで続いているのかはよくわからなかったが、そう大きな大陸というわけではなさそうだ。
もう少し上空まで行ってみようかと思ったが、すぐに身体に違和感を感じて、次の瞬間には変態野郎の部屋に戻された。
そんなことが数回続いて、結局私はこいつから逃げるどころか距離を置くことさえできないと悟った。
コロシアムに何度か足を運んでいるうちに、奴が倒せと言ったあの人物の戦いを見ることができた。
白銀に光り輝く剣を振りかざして、その彫刻のような肉体は伊達ではないと言わんばかりの力強さ。
洞窟の中に出てくる魔物とは比べ物にならないほどの巨体を誇る、あれも魔物の一種なのだろうか、そんな奴らと戦っていた。
私が幼い頃にベベルで習った物語の中に登場するような、不思議で強い生物たち。
そいつらの目は一様に血走って、狂気を孕んでいた。
この—————という男、特別な技を持っているわけはなさそうだ。
時折、私には耐えられないような眩しい神々しい光を放ち、その肉体からは想像できないほどの動きで見事に魔物を倒していく。
私が知る限り、こんな戦闘のタイプの人間に出会ったのは初めてだった。
「ふふ~ん、実は面白い噂が流れてきた」
「…噂?」
「とんでもなく強い—————がいる…」
「………」
「そいつはヒトの姿をしている。—————なのに。…そいつに会うことは、つまり消されるということ。1体だろうが数体だろうが関係な~い。
それに、見たことも無い技を使うらしい。 …あいつなら、—————を倒せるだろう、と」
「随分と他力本願な噂だな」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる変態野郎は、私がその噂の人物なのだと確信している。
私にそのつもりは毛頭無いが、奴は私を自分の僕(しもべ)だと思っている。
自分が作り出した—————が、この闇の世界でその力を示していることが嬉しいのだろうか。
「ん~、ふふん。…で?」
「……?」
「—————と、戦ってみる?」
「………」
そうだ。
その人物を倒すことが、こいつとの契約なのだ。
この洞窟内の同じような魔物とだけの戦闘に飽きてきていた私にとっても、はっきり言って楽しみでもある。
その人物をさっさと倒して、私は早く元の世界に戻りたいのだ。
相変わらず不気味にニヤニヤと笑うこいつに、返事の代わりに雷の魔法を落としてやった。
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21,jun,2015