第2章【別世界へトリップ】
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『14』~標的の姿~
一際大きな歓声が耳に届く。
何気なく、自分が今いる控え室のような小さな部屋の外の様子を伺ってみた。
細い渡り廊下の先は屋外になっているのか、ここよりももっと明るい光が向こう側から照らしているのが分かる。
高さだけはあるが、両脇を壁に囲まれた狭い通路。
その先の眩しい光に目を細めながら、更にその先に意識を持っていく。
広い、丸く形どられた闘技場。
そして観客席を埋め尽くすほどの人…
いや、人とは呼べない姿をしたものも見受けられる。
…ここは大きな街なんだろうか?
闘技場の真ん中で、片手に握った剣を高々と持上げて、観客の声援に応えるかのように勝利のポーズを取る、一人の若者。
特徴的なクセのある髪は明るい日の光の色。
高い身長に彫刻のような隆々の筋肉を惜しげもなく晒し、笑顔で手を振っている。
観客からは声援とブーイングが入り混じって聞こえている。
そして、彼の名前も。
「(…こいつが、—————、か…)」
あの変態野郎が倒せと言っていた人物が、彼。
…どう見ても、悪役には見えない。
それどころか、どこからどう見ても魔の手から人々を救う正義の使者。
そう、————だ。
闇色に染まった自分の身を見て嘲笑を一つ。
悪は、自分か……。
彼がどれほどの強さなのか、知りたい。
彼はどんな力を持っている、どんな技を使う?
…どれだけ楽しめる?
あの変態野郎の言葉が頭を過ぎる。
あぁ、やっぱり自分は戦うことが楽しいのだろうか?
沸々と、どこか懐かしいような感覚が湧き上がってくるのを感じた。
こんな気分は本当に久しぶりだ。
命を無くして、それまでとは違う世界に生きて、しばらくこんな気分を味わったことは無くなっていた。
戦いを、続けていた。
それは、生きるため、権利と約束を守るため。
必死になって命を守った。大切な思い出を守りたかった。
それがあの日から、仕事になった。
仕事になってからというもの、自分自身の力が上がったのは当然だが、半ば義務のように淡々とこなしてきたように思える。
これも、ある人物との夢や約束を守るためにという行動の一環だったはずなのに…
たった一人で戦いを続けていた頃に感じていたものとは、丸で違う感情に支配されていたように思える。
その感情の名は、何と言っただろうか…?
この明るい世界は、きっと私の居場所ではない。
あの変態男が彼の存在を忌み嫌うのは、変態男も私と同じようにこの明るい世界で生きることができないからなのだろう。
彼が天高く掲げる剣がキラキラと日の光を反射して、その世界を象徴している。
その眩しい光を凝視していることができなくて、私は彼とこの広場から目をそむけた。
早く闇の世界に戻りたくなって、変態男がしていたように手を翳す。
空間に生まれた黒い歪はやがて黒い靄の塊となり、そこには先程自分が通ってきたであろう闇への扉がぽっかりと口を開けた。
迷うことなくその中に足を踏み入れ、眩しいものが無くなった事に密かに安堵してしまった。
闇の回廊を抜けた先にあったのは、私が目覚めた部屋ではなかった。
「ん~、フフン、どうだった? —————は?」
気色悪い声がして、ここが奴の部屋なのだと理解する。
あの部屋とは違って、ここはもう少し内装が凝っているようだ。
変な模様の柱はただの飾りなのか?
大仰なでかい椅子は威厳を出したいが為か?
おかしな形のオブジェ?や置物?は、こいつの趣味なのか?
蜀台に灯る炎は、いつも燃えているこいつの頭の炎の色と同じだった。
「………」
「…で、どう? 倒せそう?」
「……部屋を間違えたようだ」
「おやおや」
見ているだけでムカついてくるこいつの顔をぶん殴ってやりたくなる。
話をする気にもなれない。
先程言われた言葉の真相を聞き出したいと思ったが、どうせまた上手くはぐらかされるに決まっているし、まともな会話にはならないだろう。
そう予測をつけて、早々にこんな悪趣味満載の人形趣味変態男の前から姿を消したかった。
その場でクルリと踵を返して、再び闇の扉を開く。
どこでもいいから、さっさとこいつの前から消えたかった。
→
16,jun,2015
一際大きな歓声が耳に届く。
何気なく、自分が今いる控え室のような小さな部屋の外の様子を伺ってみた。
細い渡り廊下の先は屋外になっているのか、ここよりももっと明るい光が向こう側から照らしているのが分かる。
高さだけはあるが、両脇を壁に囲まれた狭い通路。
その先の眩しい光に目を細めながら、更にその先に意識を持っていく。
広い、丸く形どられた闘技場。
そして観客席を埋め尽くすほどの人…
いや、人とは呼べない姿をしたものも見受けられる。
…ここは大きな街なんだろうか?
闘技場の真ん中で、片手に握った剣を高々と持上げて、観客の声援に応えるかのように勝利のポーズを取る、一人の若者。
特徴的なクセのある髪は明るい日の光の色。
高い身長に彫刻のような隆々の筋肉を惜しげもなく晒し、笑顔で手を振っている。
観客からは声援とブーイングが入り混じって聞こえている。
そして、彼の名前も。
「(…こいつが、—————、か…)」
あの変態野郎が倒せと言っていた人物が、彼。
…どう見ても、悪役には見えない。
それどころか、どこからどう見ても魔の手から人々を救う正義の使者。
そう、————だ。
闇色に染まった自分の身を見て嘲笑を一つ。
悪は、自分か……。
彼がどれほどの強さなのか、知りたい。
彼はどんな力を持っている、どんな技を使う?
…どれだけ楽しめる?
あの変態野郎の言葉が頭を過ぎる。
あぁ、やっぱり自分は戦うことが楽しいのだろうか?
沸々と、どこか懐かしいような感覚が湧き上がってくるのを感じた。
こんな気分は本当に久しぶりだ。
命を無くして、それまでとは違う世界に生きて、しばらくこんな気分を味わったことは無くなっていた。
戦いを、続けていた。
それは、生きるため、権利と約束を守るため。
必死になって命を守った。大切な思い出を守りたかった。
それがあの日から、仕事になった。
仕事になってからというもの、自分自身の力が上がったのは当然だが、半ば義務のように淡々とこなしてきたように思える。
これも、ある人物との夢や約束を守るためにという行動の一環だったはずなのに…
たった一人で戦いを続けていた頃に感じていたものとは、丸で違う感情に支配されていたように思える。
その感情の名は、何と言っただろうか…?
この明るい世界は、きっと私の居場所ではない。
あの変態男が彼の存在を忌み嫌うのは、変態男も私と同じようにこの明るい世界で生きることができないからなのだろう。
彼が天高く掲げる剣がキラキラと日の光を反射して、その世界を象徴している。
その眩しい光を凝視していることができなくて、私は彼とこの広場から目をそむけた。
早く闇の世界に戻りたくなって、変態男がしていたように手を翳す。
空間に生まれた黒い歪はやがて黒い靄の塊となり、そこには先程自分が通ってきたであろう闇への扉がぽっかりと口を開けた。
迷うことなくその中に足を踏み入れ、眩しいものが無くなった事に密かに安堵してしまった。
闇の回廊を抜けた先にあったのは、私が目覚めた部屋ではなかった。
「ん~、フフン、どうだった? —————は?」
気色悪い声がして、ここが奴の部屋なのだと理解する。
あの部屋とは違って、ここはもう少し内装が凝っているようだ。
変な模様の柱はただの飾りなのか?
大仰なでかい椅子は威厳を出したいが為か?
おかしな形のオブジェ?や置物?は、こいつの趣味なのか?
蜀台に灯る炎は、いつも燃えているこいつの頭の炎の色と同じだった。
「………」
「…で、どう? 倒せそう?」
「……部屋を間違えたようだ」
「おやおや」
見ているだけでムカついてくるこいつの顔をぶん殴ってやりたくなる。
話をする気にもなれない。
先程言われた言葉の真相を聞き出したいと思ったが、どうせまた上手くはぐらかされるに決まっているし、まともな会話にはならないだろう。
そう予測をつけて、早々にこんな悪趣味満載の人形趣味変態男の前から姿を消したかった。
その場でクルリと踵を返して、再び闇の扉を開く。
どこでもいいから、さっさとこいつの前から消えたかった。
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16,jun,2015