第2章【別世界へトリップ】
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『13』~コロシアムにて~
—————とかいう奴を倒す。
私がここから解放されるために。
そいつがどんなやつでどれだけ強いのかなど知ったことではない。
だが、ただあの変態男に言いように使われるというのも面白くは無い。
私は私だし、何よりこれは私の物語なのだから。
私がいつどうやってここに来て、何の為にここにいるのか、まずはそれを知りたい。
あの変態男と話しても埒が明かない。
というか、私が聞いたところで何も答える気などないのだろう。
ならば、己で確かめるしかない。
戦う、ということを決めたに当たって、まずは自分のこの姿をどうにかして欲しいと訴えたところ、意外なほどに素直に私の要求には応えてくれた。
あの鏡を取り出した時のような不思議な力(魔法とは少々違うようだ)で、私の服を変えてくれた。
私がいつも好んで着ているような、黒い服。
どこかで見覚えがあるような気がしたが、そんな曖昧な記憶はどうでもいい。
黒いパンツに、足首まである黒いロングジャケット。
信じられないことに、私が愛用していた小太刀まで出してくれた。
私が絶対にこいつを裏切らないとでも思っているのか、それともこんなものでは倒されないという自信でもあるのか。
…あるいは、本当に間抜けなだけか…
ただ、1つ解せないのは…
なぜに髪を纏める紐だけがこれほどまでに鮮やかな赤だったのか…
まぁ、ここは変態男の趣味に甘んじてやろう。
なにせ、いい歳をして人形遊びに興じる変態野郎なのだ。
どちらにせよ、使い慣れたものが不便なく使えるというのはありがたい。
「その—————とかいうやつ、どんな奴なのかを見ておきたい」
そう申し出ると、奴はニヤリと嬉しそうな不気味な笑みを見せて、私の肩を抱き寄せた。
寒気が走るその手は、本当に生気などまるで感じない死人の手のようだった。
目の前に現れた黒い靄の塊のようなもの。
それはすぐにヒトよりも大きく膨らみ、黒い瘴気の渦が何かを誘っているかのように蠢いているのが見えた。
変態男は私の肩を抱いたまま、その中に私を誘って行く。
闇に飲み込まれるような感覚に包まれて、この闇の力が私の中の何かに反応しているのか、私はなぜか高揚した気分になる。
真っ暗な時間はあっという間に終了し、今度は光の渦がそこに現れた。
先程までいた部屋も、闇の渦の中も、暗い世界だった。
ここも室内だということはわかったが、それもあの岩肌の部屋よりは遥かに明るくて眩しいと思った。
「ここは…?」
ルカにあるブリッツスタジアムを思い出させる。
差し詰め、控え室といったところだろう。
だが、見たことも無い装飾や部屋の構造に目を奪われる。
「このコロシアムで行われるトーナメントに、奴が出ている」
「…トーナメント? 何かの試合なのか?」
「へーっへっへっへっへっ、あぁ、試合だ。 ……命を懸けた、な!」
「……!!」
「ここに出るのは、俺が選りすぐった怪物たちだ。あいつを倒すことが目標でな」
「…あんたが出ればいいじゃないか」
「ノンノンノン!」
人差し指を左右に振りながら、奴はころころと表情を変えて話をする。
「それじゃゲームはつまらない」
「……ゲーム、だと…」
「ラフテル~~」
「…気安く名を呼ぶな。虫唾が走る」
「うっわ、傷つく言い方! お前も戦士の一人だ。なら、戦うことの面白さを知っているはずだ」
「………」
変態男がまたあの小さな人形を取り出した。
いつの間にか、人形の服装が変わっている。今の私を模したような、真っ黒な服に赤い髪紐。
「お前の記憶の中は見せてもらったよ~! 一体何体の魔物と戦ってきたのか、数えてみようか~? ん~フフン」
「……!」
「そうそう、その顔!」
殺気をこめて奴の顔を睨み付けてやったというのに、動じるどころか喜んでいやがる。
…どこまで変態なんだ。
だが、私の殺気を受けて平然としていられるこいつの肝っ玉も捨てたものじゃないんだろう。
「その闇に染まった顔、たまらんね。ん~フフン」
「闇……?」
「闇より生れしもの、心を無くしたもの、それが、—————。 お前は、純粋な—————で俺の僕」
「…誰が僕だ。契約はあくまでも—————とかいう奴を倒すことだろう」
急に、変態男の表情がそれまでのものと丸っきり違うものになった。
どこか人を小馬鹿にしたような、全ての遣り取りを楽しんでいるような、そんな飄々としたものだったというのに、最後の言葉を発したときの奴の顔は酷く恐ろしいものだった。
自分のことを——————と称したこいつの言葉を思い出した。
——の名は伊達じゃないというところか。
「…ただ倒しても、お前は俺から逃れられない」
「!?」
少々怯んでしまった私の態度を見透かしたように、その言葉だけを残して奴は背後に現れた黒い靄の中に溶け込むように入っていった。
「お、おいっ!」
私の呼び掛けに答えることも無く、そのまま黒い靄の塊は空間の中に溶けて消えた。
→
15,jun,2015
—————とかいう奴を倒す。
私がここから解放されるために。
そいつがどんなやつでどれだけ強いのかなど知ったことではない。
だが、ただあの変態男に言いように使われるというのも面白くは無い。
私は私だし、何よりこれは私の物語なのだから。
私がいつどうやってここに来て、何の為にここにいるのか、まずはそれを知りたい。
あの変態男と話しても埒が明かない。
というか、私が聞いたところで何も答える気などないのだろう。
ならば、己で確かめるしかない。
戦う、ということを決めたに当たって、まずは自分のこの姿をどうにかして欲しいと訴えたところ、意外なほどに素直に私の要求には応えてくれた。
あの鏡を取り出した時のような不思議な力(魔法とは少々違うようだ)で、私の服を変えてくれた。
私がいつも好んで着ているような、黒い服。
どこかで見覚えがあるような気がしたが、そんな曖昧な記憶はどうでもいい。
黒いパンツに、足首まである黒いロングジャケット。
信じられないことに、私が愛用していた小太刀まで出してくれた。
私が絶対にこいつを裏切らないとでも思っているのか、それともこんなものでは倒されないという自信でもあるのか。
…あるいは、本当に間抜けなだけか…
ただ、1つ解せないのは…
なぜに髪を纏める紐だけがこれほどまでに鮮やかな赤だったのか…
まぁ、ここは変態男の趣味に甘んじてやろう。
なにせ、いい歳をして人形遊びに興じる変態野郎なのだ。
どちらにせよ、使い慣れたものが不便なく使えるというのはありがたい。
「その—————とかいうやつ、どんな奴なのかを見ておきたい」
そう申し出ると、奴はニヤリと嬉しそうな不気味な笑みを見せて、私の肩を抱き寄せた。
寒気が走るその手は、本当に生気などまるで感じない死人の手のようだった。
目の前に現れた黒い靄の塊のようなもの。
それはすぐにヒトよりも大きく膨らみ、黒い瘴気の渦が何かを誘っているかのように蠢いているのが見えた。
変態男は私の肩を抱いたまま、その中に私を誘って行く。
闇に飲み込まれるような感覚に包まれて、この闇の力が私の中の何かに反応しているのか、私はなぜか高揚した気分になる。
真っ暗な時間はあっという間に終了し、今度は光の渦がそこに現れた。
先程までいた部屋も、闇の渦の中も、暗い世界だった。
ここも室内だということはわかったが、それもあの岩肌の部屋よりは遥かに明るくて眩しいと思った。
「ここは…?」
ルカにあるブリッツスタジアムを思い出させる。
差し詰め、控え室といったところだろう。
だが、見たことも無い装飾や部屋の構造に目を奪われる。
「このコロシアムで行われるトーナメントに、奴が出ている」
「…トーナメント? 何かの試合なのか?」
「へーっへっへっへっへっ、あぁ、試合だ。 ……命を懸けた、な!」
「……!!」
「ここに出るのは、俺が選りすぐった怪物たちだ。あいつを倒すことが目標でな」
「…あんたが出ればいいじゃないか」
「ノンノンノン!」
人差し指を左右に振りながら、奴はころころと表情を変えて話をする。
「それじゃゲームはつまらない」
「……ゲーム、だと…」
「ラフテル~~」
「…気安く名を呼ぶな。虫唾が走る」
「うっわ、傷つく言い方! お前も戦士の一人だ。なら、戦うことの面白さを知っているはずだ」
「………」
変態男がまたあの小さな人形を取り出した。
いつの間にか、人形の服装が変わっている。今の私を模したような、真っ黒な服に赤い髪紐。
「お前の記憶の中は見せてもらったよ~! 一体何体の魔物と戦ってきたのか、数えてみようか~? ん~フフン」
「……!」
「そうそう、その顔!」
殺気をこめて奴の顔を睨み付けてやったというのに、動じるどころか喜んでいやがる。
…どこまで変態なんだ。
だが、私の殺気を受けて平然としていられるこいつの肝っ玉も捨てたものじゃないんだろう。
「その闇に染まった顔、たまらんね。ん~フフン」
「闇……?」
「闇より生れしもの、心を無くしたもの、それが、—————。 お前は、純粋な—————で俺の僕」
「…誰が僕だ。契約はあくまでも—————とかいう奴を倒すことだろう」
急に、変態男の表情がそれまでのものと丸っきり違うものになった。
どこか人を小馬鹿にしたような、全ての遣り取りを楽しんでいるような、そんな飄々としたものだったというのに、最後の言葉を発したときの奴の顔は酷く恐ろしいものだった。
自分のことを——————と称したこいつの言葉を思い出した。
——の名は伊達じゃないというところか。
「…ただ倒しても、お前は俺から逃れられない」
「!?」
少々怯んでしまった私の態度を見透かしたように、その言葉だけを残して奴は背後に現れた黒い靄の中に溶け込むように入っていった。
「お、おいっ!」
私の呼び掛けに答えることも無く、そのまま黒い靄の塊は空間の中に溶けて消えた。
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15,jun,2015