第12章【全ての物語の結末】
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【 109 】
以前、俺の記憶を利用して俺になりすまし、ラフテルに近付いた奴がいた。
ラフテルも同じことをされたと考えてもおかしくはない、か。
この男は、自分の機関の秘密を知られたラフテル…、いや彼女の記憶を持ったファ…なんとかいう者を殺し、そして本体であるラフテルをも消そうとしている。
…だが、目覚めるのを待っているような節も見受けられるようだ。
それよりも、こいつの攻撃が鬱陶しくて敵わん。
ゆっくり考えてる余裕はない。
俺に向かって発射された弾丸が、消える。
はっと気が付くと、俺の回りの何もない空間から弾丸だけが飛んでくる。
例の闇を利用しての攻撃。
先程は奴自身が移動していたため、気配を感じられたが、弾丸のみでは気配を探ることはできない。
しかも、いくつもの弾丸を発射後にも関わらず闇に隠しておけるようで、一気に無数の弾が俺に向かってくる。
いくつかは叩き落とせるが、全てを避けることは不可能だ。
肉に突き刺さるいやな感覚と激しい痛み。
突き刺さった針のような弾丸はすぐに闇に溶け、傷だけを残していく。
このままでは少しずつ削られていくだけだ。
すばやく避けようとしても、避けたところに攻撃してくる。
これは戦闘を重ねてきた奴の能力の高さを証明している。
何度も同じ攻撃がいつまでも通用すると思うなよ。
はたき落とした弾丸の向こう側に、こちらに銃口を向けてニヤついている奴の姿を捉えた。
その一瞬を見逃す手はない。
太刀の柄を握り直し、攻撃に転じる。
だが、踏み込む足に力が入らない。
かわしきれなかった奴の弾丸は俺に無数の傷をつけ、大量の血を吸った服が動きを鈍らせる。
体が、重い…。
それでも剣先を真っ直ぐ奴に向けて突進する。
そのニヤついた顔に刃を突き刺す勢いで。
見切れると余裕を浮かべた顔でひょいと頭を横に倒し、俺の剣は空を斬る。
だが…。
「がはっ!!」
奴は体をくの字に折り曲げて後方へ吹き飛んだ。
突きの勢いのまま、膝蹴りを食らわせた。
休む間はない。
勢いを殺すことなく、起き上がろうとしている奴目掛けて右からの袈裟斬り、そのまま横薙ぎ、立て続けに真上から振り下ろす。
奴も一筋縄ではない。俺の斬撃を食らいながらも致命傷は避けている。
大きくなった距離を取り、口元の血を拭ってこちらを睨む。
俺は肩で大きく呼吸を繰り返し、奴の動向を探る。
「へへへ、やるね。 …だが、伊達にNo.2を背負ってるわけじゃない」
両手を横に広げた途端、あいつが姿を表した時のような黒い靄が次々と立ち上った。
それはあっという間に俺を取り囲み、靄は幾人もの奴の姿に変わった。
闇を利用した幻影か。
「こ、これは!?」
「俺の武器の特性は、わかってるよな?」
俺をぐるりと取り囲む同じ男達の手にはあの銃。
それが全て俺に向けられている。
これでは逃げ場がない。
空中に飛んで逃れても狙い撃ちにされるだけだろう。
ゆっくり考えている暇はなかった。
合図も掛け声もなく、次々に弾が発射され、俺の傷は増えていく。
が、数が増えたことで弾丸そのものの威力が落ちている。
こんな“お遊び”にいつまでも付き合ってられん。
剣先を地面に当て、両手で柄を力強く握った。
俺の中の制御値が限界を超える。
握った拳を通して太刀に気力を注ぐ。
呼吸を整え、掛け声と共に気合いを高めていく。
「まとめて吹き飛ばす!『牙龍!!!』」
足に力を入れ、一度上に飛び上がってから渾身の一撃を地面に突き刺した。
青白い稲妻が龍の牙のごとき広がり、周りの奴等は黒い煙となって霧散した。
剣を突き立てた姿勢のまま、その奥にいる本体の男に視線を向ける。
そこにニヤついた顔はもうなかった。
しかしまたこちらに銃口を向ける男に、俺は剣を振りかぶった。
両手に持った2丁の武器を使い、俺の太刀を受け止める。
俺自身の力があまり入らないというのもあるが、この細腕でよく耐えたものだと少なからず感じた。
俺が斬りつけた傷が、やつの体に見えないのは、とうに回復している証しか。
こちらは血を流しすぎて今にも意識を失いそうだというのに。
それを奴はわかっているのだろう。
俺の攻撃など効かぬとでも言いたげな顔で俺を睨む。
ふと一瞬、その目が逸らされた。
すぐに視線は戻されたが、俺ははっとして回転するように後方へ剣を振るった。
音もなく近付いていた奴の影が闇に溶けていく。
闇を利用した多才な攻撃に俺は翻弄されているのか。
奴の顔を見た瞬間、頭がクラリと揺れた感覚に軽い目眩を覚えた。
視界が狭まり、酷く気分が悪い。
足に力が入らずに、思わず片膝を落としてしまった。
…そうだ、今の俺は生身の肉体なのだ。
攻撃され、傷つけられれば血を流すし痛みは蓄積される。
血を、流しすぎたのだ。
回復の魔法をかけても、傷は治っても流した血は戻らない。
体が急激に冷たくなっていくのを感じる。
まるで雪山にいるように寒くて、眠気が襲ってくる。
俺は、…俺はまた、 こんな形で倒れるのか。
また、お前を守ることも、できないのか…。
→
7,oct,2015
以前、俺の記憶を利用して俺になりすまし、ラフテルに近付いた奴がいた。
ラフテルも同じことをされたと考えてもおかしくはない、か。
この男は、自分の機関の秘密を知られたラフテル…、いや彼女の記憶を持ったファ…なんとかいう者を殺し、そして本体であるラフテルをも消そうとしている。
…だが、目覚めるのを待っているような節も見受けられるようだ。
それよりも、こいつの攻撃が鬱陶しくて敵わん。
ゆっくり考えてる余裕はない。
俺に向かって発射された弾丸が、消える。
はっと気が付くと、俺の回りの何もない空間から弾丸だけが飛んでくる。
例の闇を利用しての攻撃。
先程は奴自身が移動していたため、気配を感じられたが、弾丸のみでは気配を探ることはできない。
しかも、いくつもの弾丸を発射後にも関わらず闇に隠しておけるようで、一気に無数の弾が俺に向かってくる。
いくつかは叩き落とせるが、全てを避けることは不可能だ。
肉に突き刺さるいやな感覚と激しい痛み。
突き刺さった針のような弾丸はすぐに闇に溶け、傷だけを残していく。
このままでは少しずつ削られていくだけだ。
すばやく避けようとしても、避けたところに攻撃してくる。
これは戦闘を重ねてきた奴の能力の高さを証明している。
何度も同じ攻撃がいつまでも通用すると思うなよ。
はたき落とした弾丸の向こう側に、こちらに銃口を向けてニヤついている奴の姿を捉えた。
その一瞬を見逃す手はない。
太刀の柄を握り直し、攻撃に転じる。
だが、踏み込む足に力が入らない。
かわしきれなかった奴の弾丸は俺に無数の傷をつけ、大量の血を吸った服が動きを鈍らせる。
体が、重い…。
それでも剣先を真っ直ぐ奴に向けて突進する。
そのニヤついた顔に刃を突き刺す勢いで。
見切れると余裕を浮かべた顔でひょいと頭を横に倒し、俺の剣は空を斬る。
だが…。
「がはっ!!」
奴は体をくの字に折り曲げて後方へ吹き飛んだ。
突きの勢いのまま、膝蹴りを食らわせた。
休む間はない。
勢いを殺すことなく、起き上がろうとしている奴目掛けて右からの袈裟斬り、そのまま横薙ぎ、立て続けに真上から振り下ろす。
奴も一筋縄ではない。俺の斬撃を食らいながらも致命傷は避けている。
大きくなった距離を取り、口元の血を拭ってこちらを睨む。
俺は肩で大きく呼吸を繰り返し、奴の動向を探る。
「へへへ、やるね。 …だが、伊達にNo.2を背負ってるわけじゃない」
両手を横に広げた途端、あいつが姿を表した時のような黒い靄が次々と立ち上った。
それはあっという間に俺を取り囲み、靄は幾人もの奴の姿に変わった。
闇を利用した幻影か。
「こ、これは!?」
「俺の武器の特性は、わかってるよな?」
俺をぐるりと取り囲む同じ男達の手にはあの銃。
それが全て俺に向けられている。
これでは逃げ場がない。
空中に飛んで逃れても狙い撃ちにされるだけだろう。
ゆっくり考えている暇はなかった。
合図も掛け声もなく、次々に弾が発射され、俺の傷は増えていく。
が、数が増えたことで弾丸そのものの威力が落ちている。
こんな“お遊び”にいつまでも付き合ってられん。
剣先を地面に当て、両手で柄を力強く握った。
俺の中の制御値が限界を超える。
握った拳を通して太刀に気力を注ぐ。
呼吸を整え、掛け声と共に気合いを高めていく。
「まとめて吹き飛ばす!『牙龍!!!』」
足に力を入れ、一度上に飛び上がってから渾身の一撃を地面に突き刺した。
青白い稲妻が龍の牙のごとき広がり、周りの奴等は黒い煙となって霧散した。
剣を突き立てた姿勢のまま、その奥にいる本体の男に視線を向ける。
そこにニヤついた顔はもうなかった。
しかしまたこちらに銃口を向ける男に、俺は剣を振りかぶった。
両手に持った2丁の武器を使い、俺の太刀を受け止める。
俺自身の力があまり入らないというのもあるが、この細腕でよく耐えたものだと少なからず感じた。
俺が斬りつけた傷が、やつの体に見えないのは、とうに回復している証しか。
こちらは血を流しすぎて今にも意識を失いそうだというのに。
それを奴はわかっているのだろう。
俺の攻撃など効かぬとでも言いたげな顔で俺を睨む。
ふと一瞬、その目が逸らされた。
すぐに視線は戻されたが、俺ははっとして回転するように後方へ剣を振るった。
音もなく近付いていた奴の影が闇に溶けていく。
闇を利用した多才な攻撃に俺は翻弄されているのか。
奴の顔を見た瞬間、頭がクラリと揺れた感覚に軽い目眩を覚えた。
視界が狭まり、酷く気分が悪い。
足に力が入らずに、思わず片膝を落としてしまった。
…そうだ、今の俺は生身の肉体なのだ。
攻撃され、傷つけられれば血を流すし痛みは蓄積される。
血を、流しすぎたのだ。
回復の魔法をかけても、傷は治っても流した血は戻らない。
体が急激に冷たくなっていくのを感じる。
まるで雪山にいるように寒くて、眠気が襲ってくる。
俺は、…俺はまた、 こんな形で倒れるのか。
また、お前を守ることも、できないのか…。
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7,oct,2015