第12章【全ての物語の結末】
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ベベルの街でやっとアーロンさんを探し出して、会えた時は正直心からホッとしました。
これでラフテルさんも助かると思ったんです。
アーロンさんとはベベルの寺院へ向かう途中の橋で出会いました。
私達と同じ考えだったようです。
あの日、アーロンさんが私達をラフテルさんに会わせてくれた日。
あれも、このベベルの寺院でした。
あの後、アーロンさんは姿を消してしまって、いくら探しても見つからなかった。
異界にまで行って探してもらったけど、まるでこの世界から消えてしまったみたいに消息は分かりませんでした。
ラフテルさんはアーロンさんの存在そのものを拒絶するような態度を取るだけで、聞いてもまともな返答は返ってきませんでした。
朝から具合が悪いと言っていたあの日、倒れたラフテルさんを医務室に運んだ直後です。
ラフテルさんが小さなうわ言を零したんです。
一言、アーロンさんの名前を。
きっとラフテルさんがこうなった原因や理由があるんだと思います。
アーロンさんはラフテルさんを元に戻す方法を探しに行って、そして何かを掴んだんじゃないかと思いました。
きっと本当のラフテルさんはアーロンさんの助けを待ってる。
私はそう確信しています。
医務室に入ったアーロンさんの後について行って、ダメだって言ってるのにリュックは覗く気満々で。
まあ、確かに私も興味が無くはなかったんですけど。
そうっと扉に耳を近付けた瞬間、中から凄い大きな音がしました。
壁に何かぶつかったみたいな音にかなり驚かされました。
すぐに扉が開いて、中から出てきたアーロンさんはとても怖い顔をしていました。
かなり機嫌が悪かったようです。
ラフテルさんのこと、アーロンさんでもどうしようもなかったんでしょうか。
すぐに元気になって、また優しく私の名を呼んでくれると思っていたのに、とても残念です。
ラフテルさんの顔を見たかったけど、中に入るなって言われて、そのままアーロンさんはまたどこかへ行ってしまいました。
アーロンさんにとってはもちろんですが、私にとってもラフテルさんはとても大切な存在です。
初めて直接お会いしたのは、ビサイド、ですよね。
キマリに連れてこられて、ずっと寂しさを紛らわせようと寺院にこもってた私に、たくさん父さんのことを話してくれて、嬉しかった。
すぐに、兄さんや姉さんのように接してくれたルールーとワッカさんチャップさん兄弟がいてくれたから、寂しさを忘れることもありました。
父さんと一緒に旅をしたというラフテルさんがとても大人に見えて、頼りにしてたんですよ。
私が召喚士になると伝えたとき、少し寂しそうな顔をしたことを今でも覚えています。
ラフテルさんは反対しなかったけど、本当は反対したかったってことですよね。
ずっと自分を隠すようにして、私には父のことしか話してくれなくて。
でも、少しずつ自分のことを話してくれるようになって、少しは心を開いてくれたのかなって、その少しずつの小さな変化が凄く嬉しくて。
いつも冷たそう、と言うか、壁を作ってるように感じる態度は照れ隠しだってわかってます。
笑うととてもいい笑顔になるのに、素直に感情を表に出すことがへたくそなんですよね。
…でも、私もリュックもパインも、他のたくさんの人達も、そんなラフテルさんに会いたいんです。
昔のまんまの、あのラフテルさんに。
だから、アーロンさん、お願いです。
いつもの、今までのラフテルさんを取り戻して下さい。
私達では無力すぎて何もできない。何の力にもなってあげられない。
ラフテルさんを助けられるのはアーロンさんしかいないんです。
「何やってるんだ、行くぞ」
「ほらユウナ、早く!」
「えっ!?」
2人の声に顔を上げると、廊下の先で手招きをしていました。
とても真剣な顔をして。
思わず喉まで出かかった言葉を飲み込んで、私も2人の元へ足を進めました。
先導するリュックは船の構造をよく知ってます。
普段は絶対に通らない壁の裏みたいな通路を、辺りを見回しながら進んでいます。
音を立てないようにそっと金網を外すと、少し広い部屋に出ました。
「…ここ、…甲板用の倉庫?」
「へえ、こんな裏道があったのか」
「しぃ~! ほら2人ともこっちこっち」
小さな取っ手を下に引き下げると、丁度目の高さに小さな窓が現れました。
甲板が丸見えです。
そこに、アーロンさんがいました。こちらに背を向けていますが、どうやら誰かと話をしているようです。
この位置からでは、丁度アーロンさんの陰になってしまって、相手の顔が見えません。
この倉庫の窓はこれしかないようで、リュックは何とかして相手の顔を見ようと体を動かしてみますが、無駄のようです。
倉庫は気密性が高いせいか、外の音は全く聞こえません。
アーロンさんと、相手の誰かの話声は全然分かりません。
「何、話してるのかな?」
「さあ? …だけど、彼女に関することなのは間違いないだろう」
「それよっかさ、なんとかして顔見たいよね~。 相手、誰だろ?」
まだ諦めきれないのか、リュックは窓を独り占めして顔をあちこちに動かし続けてます。
その後ろからただ、アーロンさんの後ろ姿がチラリと見えるだけで、私とパインは顔を見合わせました。
「ああっ!!」
突然リュックがおかしな声を上げたかと思うと、私達のほうを振り向いて窓の外を指さしました。
咄嗟に窓を覗き込みましたが、もうそこには誰もいませんでした。
→
3,oct,2015
ベベルの街でやっとアーロンさんを探し出して、会えた時は正直心からホッとしました。
これでラフテルさんも助かると思ったんです。
アーロンさんとはベベルの寺院へ向かう途中の橋で出会いました。
私達と同じ考えだったようです。
あの日、アーロンさんが私達をラフテルさんに会わせてくれた日。
あれも、このベベルの寺院でした。
あの後、アーロンさんは姿を消してしまって、いくら探しても見つからなかった。
異界にまで行って探してもらったけど、まるでこの世界から消えてしまったみたいに消息は分かりませんでした。
ラフテルさんはアーロンさんの存在そのものを拒絶するような態度を取るだけで、聞いてもまともな返答は返ってきませんでした。
朝から具合が悪いと言っていたあの日、倒れたラフテルさんを医務室に運んだ直後です。
ラフテルさんが小さなうわ言を零したんです。
一言、アーロンさんの名前を。
きっとラフテルさんがこうなった原因や理由があるんだと思います。
アーロンさんはラフテルさんを元に戻す方法を探しに行って、そして何かを掴んだんじゃないかと思いました。
きっと本当のラフテルさんはアーロンさんの助けを待ってる。
私はそう確信しています。
医務室に入ったアーロンさんの後について行って、ダメだって言ってるのにリュックは覗く気満々で。
まあ、確かに私も興味が無くはなかったんですけど。
そうっと扉に耳を近付けた瞬間、中から凄い大きな音がしました。
壁に何かぶつかったみたいな音にかなり驚かされました。
すぐに扉が開いて、中から出てきたアーロンさんはとても怖い顔をしていました。
かなり機嫌が悪かったようです。
ラフテルさんのこと、アーロンさんでもどうしようもなかったんでしょうか。
すぐに元気になって、また優しく私の名を呼んでくれると思っていたのに、とても残念です。
ラフテルさんの顔を見たかったけど、中に入るなって言われて、そのままアーロンさんはまたどこかへ行ってしまいました。
アーロンさんにとってはもちろんですが、私にとってもラフテルさんはとても大切な存在です。
初めて直接お会いしたのは、ビサイド、ですよね。
キマリに連れてこられて、ずっと寂しさを紛らわせようと寺院にこもってた私に、たくさん父さんのことを話してくれて、嬉しかった。
すぐに、兄さんや姉さんのように接してくれたルールーとワッカさんチャップさん兄弟がいてくれたから、寂しさを忘れることもありました。
父さんと一緒に旅をしたというラフテルさんがとても大人に見えて、頼りにしてたんですよ。
私が召喚士になると伝えたとき、少し寂しそうな顔をしたことを今でも覚えています。
ラフテルさんは反対しなかったけど、本当は反対したかったってことですよね。
ずっと自分を隠すようにして、私には父のことしか話してくれなくて。
でも、少しずつ自分のことを話してくれるようになって、少しは心を開いてくれたのかなって、その少しずつの小さな変化が凄く嬉しくて。
いつも冷たそう、と言うか、壁を作ってるように感じる態度は照れ隠しだってわかってます。
笑うととてもいい笑顔になるのに、素直に感情を表に出すことがへたくそなんですよね。
…でも、私もリュックもパインも、他のたくさんの人達も、そんなラフテルさんに会いたいんです。
昔のまんまの、あのラフテルさんに。
だから、アーロンさん、お願いです。
いつもの、今までのラフテルさんを取り戻して下さい。
私達では無力すぎて何もできない。何の力にもなってあげられない。
ラフテルさんを助けられるのはアーロンさんしかいないんです。
「何やってるんだ、行くぞ」
「ほらユウナ、早く!」
「えっ!?」
2人の声に顔を上げると、廊下の先で手招きをしていました。
とても真剣な顔をして。
思わず喉まで出かかった言葉を飲み込んで、私も2人の元へ足を進めました。
先導するリュックは船の構造をよく知ってます。
普段は絶対に通らない壁の裏みたいな通路を、辺りを見回しながら進んでいます。
音を立てないようにそっと金網を外すと、少し広い部屋に出ました。
「…ここ、…甲板用の倉庫?」
「へえ、こんな裏道があったのか」
「しぃ~! ほら2人ともこっちこっち」
小さな取っ手を下に引き下げると、丁度目の高さに小さな窓が現れました。
甲板が丸見えです。
そこに、アーロンさんがいました。こちらに背を向けていますが、どうやら誰かと話をしているようです。
この位置からでは、丁度アーロンさんの陰になってしまって、相手の顔が見えません。
この倉庫の窓はこれしかないようで、リュックは何とかして相手の顔を見ようと体を動かしてみますが、無駄のようです。
倉庫は気密性が高いせいか、外の音は全く聞こえません。
アーロンさんと、相手の誰かの話声は全然分かりません。
「何、話してるのかな?」
「さあ? …だけど、彼女に関することなのは間違いないだろう」
「それよっかさ、なんとかして顔見たいよね~。 相手、誰だろ?」
まだ諦めきれないのか、リュックは窓を独り占めして顔をあちこちに動かし続けてます。
その後ろからただ、アーロンさんの後ろ姿がチラリと見えるだけで、私とパインは顔を見合わせました。
「ああっ!!」
突然リュックがおかしな声を上げたかと思うと、私達のほうを振り向いて窓の外を指さしました。
咄嗟に窓を覗き込みましたが、もうそこには誰もいませんでした。
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3,oct,2015